其の伍
第三者視点になります。
後半は堅苦しいので読むの億劫な方へまとめ。
ヨシナリがお市と戦った。ヨシナリ圧勝した!
以上!
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屋敷内にある道場にてヨシナリは竹刀(カリバーン)を持ち相手と対峙していた。相手はただ1人薔薇属性のなかった女。一番の側近で血圧が高そうな彼女の名前はお市と言うらしい。彼女からの熱烈ラブコール(死語)でヨシナリの相手に抜擢されたのだとか。
「貴様!その粗末な得物はなんだ!!竹刀?ふざけるなああぁ!」
「竹刀じゃない。カリバーンだ(ヤケクソ)」
刃物を持たぬヨシナリに何度もふざけるなと頭ごなしな叱咤を飛ばしていた。
仕方がない事だ。武器など買う金があるのならば烏骨鶏など取ってここには来ていない事だろう。自分の命といっても過言ではない得物を他人に貸す事もできない外野達。そのまま時間だけが過ぎる。
ネネも一向に始まらないのでイライラしているのか貧乏ゆすりが起きていた。一応神棚に真剣は掛けてあったが、そのような刀は祭事に用いられる刀であり、そも女に刃物を構える気など毛頭ないのがヨシナリだ。
「…お市殿ちょっと」
「なんだ!?気が散るので後にしてくれんか!?」
「気が散るどころか怒りが天元突破して、最早有頂天になってますな」
「怒りが有頂天!言葉もわからんのか貴様は!!」
余計な事を言ってお市を煽るヨシナリ。ツッコまれて嬉しいとまで思っているヨシナリは、横を向いて笑いを堪えていた。
「先程こやつを呼びに行った時ですが、なにやら俺のカリがどうと叫んでおりまして(ポッ」
「俺の……か、か、か、カリィ!?貴様は何をしてたんだ!?」
「俺のカリバーンだ」
「もう訳がわからん!大体今言わんでもいいだろうがカエデ殿ぉ!!」
ここでヨシナリ堪え切れなく声を出して笑ってしまう。
お市に睨まれるも、ヨシナリはそろそろ始めようと立ち会い役の隠れ薔薇シタンことカエデに合図を促す。
「そろそろ始めなければ吉田様の怒髪天を喰らいますぞ?」
「しかしだな!!こんな男に舐められては吉田様のご威光が」
「…さっさと始めろ」
「はっ!始めぃ!」
とネネに促され、なんとも間抜けな始めがかかる。
始まった以上負けれないお市が剣先をヨシナリの喉元に向けてジリジリと近付いてきた。
だがその攻め方は1つの利点を自ら捨てているようなものである。即ちそれは距離感だ。
短刀だろうと超がつく長刀だろうと、その構えは範囲を相手に悟られる=どこまでが攻められる範囲かを相手に教えるという行為なのだ。もちろん剣先の高さや反射を利用する事によって同じ構えでも相手に看破されないようにする事もできる。
そこに動きの速さや振りの速さ、腕の長さなどといった対峙したことのある者しかわからない事もあるだろう。そのまま突きを繰り出せば素人ではまずかわせない。一概に駄目な攻め方とは言えないのだが…。
何故駄目だったかというと、その考えなしの構えは格上には通用しないのだ。
ネネは言った。動きが武道をしている者のそれだと。
ネネは言った。霊鳥を捕える事ができるのは並ではないのだと。
何故忘れてしまったのかというと、怒りが有頂天だったからだ。怒りが有頂天…言いたい事は分かる。
想像してほしい。あきらかに普通の女が、刀を持った殺る気まんまんな男に『私はこれでいいから』と竹刀を持って早く来なと言う姿を。
男は確実に逆上して切りかかるだろう。そして冷静さなどかけらもないだろう。
そのどこにでもいそうな女が剣道の全国大会優勝者と分かっていれば……いやそれでも男は逆上したのであろう。
この世界では男は非力で守られる存在であり、女は力があり守る事も奪う事も出来る存在なのだ。先に述べた現象の逆が起きても不思議はない。
そこまで考えてこれでいいと言っていたわけではないが、結果的にはそんな感じになったということに気付いたヨシナリ。
(すまんなお市さん。距離がわかって冷静さがない貴女など簡単すぎる相手だ。構え方が初心者組に毛が生えた程度だからな。いやまあ、万全の状態でも負ける気はしないが)
ヨシナリは自分の手を差し出し小手を囮に使い、冷静さを失っているお市は、入った!と迅速な太刀を振るう。
素人は相手との距離感を把握しようとなどしない、いや出来ないものだ。ズブの素人の相手が無警戒に自分の間合いに入ったと感じたお市は刀を振るったのである。
だがヨシナリは身体を動かさず、お市の刀が通る道に沿わすように竹刀を動かす。自身の手にむけて走って来る刀を上から巻き込むようにぐるりと廻した。
「はい、俺の勝ち」
驚愕に目を見開くお市の手が刀と共に巻き上げられた。するとお市の肘と手首の関節の可動域を超えさせようと加わる回る力に関節が音を上げ、その力を受ける元凶となる己の刀を無意識に手から離してしまう。
回りながらぶっ飛んでいく刀。それは意図せず吉田様ことネネの眼前に飛んでゆく。ネネはその刀の軌道の横に手を添える事で力の方向を変え、面前の床へとサクと落とした。
呆然と立ち尽くすお市の頭に竹刀の剣先を載せ、ヨシナリは口を開く。
「面。男でもなかなかやるもんだろ?お市さん」
その場にはヘナヘナと腰を落とすお市と、今だ何が起きたかわかっていない呆けた女達の姿があるのであった。
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