色欲の錬金術師 〜アイテムが全て美少女化して錬成されるんですけど！？ これじゃ商品にならないので、アイテムさんたちと街の便利屋始めます〜

08-05 祭りの夜が更ける

「……ここは、地獄か？」

　広場に戻って、その場の惨状を見たロングソードさんが頭を抱えながら呟きます。

　つい1時間程前まで楽しそうに飲んでいた人達が……ほぼ全滅。

　机に突っ伏している人、ベンチでノビている人、椅子を抱いて地面で寝ている人まで……。全員が泥酔しています。

「あの、大丈夫ですか？」

　その辺で転がっている男性に声を掛けますが、返事がありません。

　ただの屍のようだ。

　……いえ、生きてはいますが。

「もう……ダメだ」

　どうにか最後まで生き残ってテーブルにしがみついていた男性が、まだ半分以上麦酒が入ったままのジョッキを片手に今みさに力尽きました。

「あら、もうおしまい？　揃いも揃ってだらしない子ばかりねぇ。お仕置きしちゃおうかしら？」

　顔色の一つも変えずにまるで水のようにお酒を煽っているのは、惚れ薬さんです。

　卓上には収まらず、周辺の地面にまでうず高く積み上がっている空瓶の数を見るからに……相当に熾烈な宴だったのでしょう。

「あなた達、大丈夫？　ほら、お水飲んで」

　倒れた人達を優しく介抱して回る万能薬さん。少し赤い顔をしているので、おそらく万能薬さんもお酒を嗜んだのでしょう。

「いゃー、さすが姉さんがたハンパないっスねー！　さすがのアタイもだいぶ酔っ払ってきたっスよ」

　盗賊マントさんもお酒を片手に上機嫌に料理を平らげています。

「……な、何だか凄い事になってますねー」

　地面に転がる人々を踏まないように避けながら、恐る恐るとテーブルへと近づくシルバーソードさん。

　私達もその後に続きます。

「あら、お帰りなさい。楽しかった？」

「はい！　お祭りっていいですねー！」

　シルバーソードさんが巨大な人魚のぬいぐるみを両手で掲げてクルクルと周って見せるます。

　その隣で木の盾ちゃんも嬉しそうに戦利品を自慢してみせました。

「――あ、バ（・）ン（・）さ（・）ん（・）！　お久しぶりです！」

　万能薬さんに声をかけるカトレアお嬢様。

「あら、カトレアさん！　お久しぶりね。その後調子はどうかしら？」

「はい！　もうあれからはすっかり元気です！　これもバンさんに見て頂いたお陰です！」

　そう言って浴衣の裾を捲り力こぶのポーズをしてみせるお嬢様。

「ふふ、それは良かった。体力もだいぶ戻ってきたみたいだけど、まだ無理は禁物よ」

　そういえばお嬢様は前に万能薬さんの薬にお世話になったのでしたね。

　２人共楽しそうに話し込んでいます。

「おいおい、まだ酒は残ってんだろうな？」

　潰れている酔っ払いを机からどけてシューさんが席に着きました。

「大丈夫よ、お酒はまだまだあるって言ってたから」

　お酒の入ったジョッキを手渡す惚れ薬さん。小型の恒冷氷柱でキンキンに冷やされたジョッキが結露の水滴を垂らしています。

　それを受け取りロングソードさんさんも同じテーブルに着きました。

「おーい！　おチビさん達はこっちっス！　美味しいものいっぱいあるっスよー！」

　盗賊マントさんが私と木の盾ちゃんを手招きで隣のテーブルに呼んでくれました。

　木の盾ちゃん、シスターと一緒にテーブルに着きます。

「それじゃ改めて！　モリノの夏を祝って――」

　シューさんの宣言を合図に、一同同時にグラスを掲げ……

「「「乾杯ー！！」」」

　――まだまだ熱の冷めない祭の喧騒と共に、楽しい夜の時間が過ぎていきました。