07-05 何か思ってたのと違う
再び訪れた夜の“コズメズ密林”
「うぅ〜、お願いですからお化けさん出ないで下さいー」
隊列のド真ん中を陣取るシルバーソードさん。
両脇をちびっ子たちに、前後を俺とティンクに守られて、それでも半ベソをかきながらトボトボと歩く。
あれだけ怖がっていたので、正直連れてくるのはかなり戸惑ったけれど……それでは彼女のためにならないからと、ロングソードさんのたっての願いで再びパーティーに加えた次第だ。
「大丈夫だよ! いざとなったら私と木の盾ちゃんでどうにかするから!」
「そうですよ、元気出してください」
どうにか彼女を勇気づけようと、ちびっ子たちが代わる代わるに声をかける。
自分より怖がりな人が居ると何故か勇気が湧いてくるから不思議だ。
「うぅ〜。お二人ともありがとうございます。……そうですよね、小さなお二人がこんなにも頑張ってるんですもん。私もしっかりしないといけませんね!」
二人の勇気に感化されたのか、少し元気を取り戻すシルバーソードさん。
おっ! やるじゃないかちびっ子達!
――そんなタイミングを見はからったかのように、タイミングよく地面からゾンビが湧き上がってくる。今回はいきなり三匹でのお出迎えだ!
「で、出たー!」
「や、やっぱり怖いですー!」
さっきまでの威勢は何処へやら。
泣きべそをかきながらそそくさとティンクの後ろに隠れる麻の服ちゃんと木の盾ちゃん。
「ち、ちょっと! 私だって怖いんだから! お、押さないでって!」
あ、やっぱり怖かったんだな。ティンクのやつビビって腰が引けてる。
ちなみに俺はというと、そもそも幽霊的なものは信じてないタイプだ。ゴーストもホロウも所詮は魔物。ゾンビだって慣れてしまえばグロいだけの魔物だ。
……まぁ、戦って勝てるかどうかは置いといて。
とにかく。さぁ、出番だぜシルバーソードさん! リベンジよろしく!!
しかし――
「……む、無理ですー! やっぱり無理! 私、あんなのと戦えないですってぇぇ!! ……え〜〜ん」
遂には大声をあげて泣きながらその場にへたり込んでしまった。
「分かった分かった、誰だって苦手な物とかあるもんな。ごめんな、怖い思いさせて」
子供をあやすように、その頭をヨシヨシと撫でてあげる。
ここまで来る途中、アンデッド以外の弱い魔物は何匹かやっつけてくれたし、怖いのを我慢してここまでついてきてくれたんだ。それだけでも感謝しよう。
「ごめんなさい、
涙目で俺を見つめるシルバーソードさん。
「大丈夫! 今回は他に助っ人も居るし! さ、ティンク達と一緒に下がって見てな!」
シルバーソードさんをティンク達に託すと、俺一人でゾンビの前に躍り出る。
「さーて、いつまでもやられっぱなしと思うなよ! “色欲の錬金術師”の力、思い知らせてやる! ――出でよ、“退魔の聖水さん”!」
大きく振り、ゾンビ達の目の前目掛けてポーションを投げる!
綺麗な音を立てて割れるポーション。
暗い森の闇を払うように鮮やかな閃光を放ち、光の中から人影が現れた。
“シスター”の名に相応しく、青と白の修道服に身を包んだ女性。
こちらに背を向けたまま、ゾンビの群れの前に祈るようにそっと手を組む。
――そして一言。
「――おぉ、久々のシャバだな!!」
「へ?」
今何か、すげー“ドス”の効いた声が聞こえたけど。
「アンタがマクスウェルの孫かい!? へぇ、中々可愛い顔してるじゃないかい! 気に入ったよ!」
地の底から響くようなダミ声が何処から聞こえてきてるのか分からず、ただ茫然と立ち尽くす俺。
そんな俺を見てニンマリと笑う"シスター"
よく見ると、その肢体は
手足の節々は筋肉でコブのように盛り上がり、胸から二の腕にかけてなんて今にもはちきれんばかり。
コメカミに血管を浮かせたその顔は……目鼻立ちがスッキリと整っており確かに美人ではある。
けど。だけど。何というか――色々とゴリゴリだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【聖水】
浄らかな祈りが込められた純水。
振りまいて場を清める、アンデット系の魔物を退ける、呪いを解く、など込められた祈りによりその効果も性能も様々。
市販されている物の中では、ちゃんと効果を明示してる物は良心的な部類。『少しだけ魔物に襲われにくくなります』など曖昧な効果を主張する怪しい製品も多く、見た目では正規品か見分けがつき難い事もあるので、なるべくなら教会か信用できる道具屋で買うことをお勧めする。
※退魔の聖水さん(シスター)
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