其の二十二:姑獲鳥[6/4?域怦?]
『許さない許さない許さない‼︎』
地下室を人面鳥が飛び回っている。さっきまで女だったモノだ。
「くっ……!」
体高は150cmほど。翼を広げるとかなりの大きさになる。
「羽ばたいてるだけでこれか。まるで近づけん」
「
「出来る、とは思う。ただ……」
守ノ神が壁に寄りかかる。
「打てて
「外したら?」
「
守ノ神も肩で息をしている。体力的には二人とも限界に近い。
「マジか。なら……」
「うちがやります」
鈴の鳴るような、
「
部屋着にしているワンピースの
「うちに、やらせてください」
唄羽は手に持った
「飛び回ってて近づけへんのやったら、うちの
(他の人らはよう動かれへん。うちしかあのヒトを止められへんのや……!)
「『
「『
光を
「……『唄羽なり』!」
赤い
「行こう、『
唄羽がフリスビー大のチャクラムを構える。
「『
チャクラムが姑獲鳥に向かって飛ぶ。白い持ち手、金色の刃。それが白く
『やめて‼︎』
しかし姑獲鳥はそれを
『そうやってみんな、寄ってたかって私をいじめて‼︎』
室内を
『私はやりたい事を自由にやりたいだけなのに‼︎ありのままで、自分を偽らず生きていきたいだけなのに‼︎』
「でも。あなたがそうする事で困る人が、傷つく人が、ぎょうさんおるんです」
唄羽が冷たい声で言い放つ。
『知らない知らない‼︎なんで私が世界に合わせなきゃならないの⁉︎』
一度目の攻撃が外れる。
『なんで私が世界に気を遣って擦り減らなきゃならないの⁉︎』
二度目の攻撃を躱す。
『世界が私に合わせてよ‼︎』
姑獲鳥が叫んだ。
「ほな、アンタは人間とちゃいます」
唄羽の手にチャクラムが戻る。
「自分の事しか考えられへんのなら人間やない。ただの
『うるせぇ〜〜ッ‼︎このクソガキが‼︎』
姑獲鳥の視線が助け出された女性たちの方を向く。
『クソ〜ッ死ね‼︎醜い享楽のために我が子を
身体を
「っ……!」
唄羽がとっさに周囲を見渡す。
(射ったら誰かを巻き込む、剣の間合いに入るのも間に合わん!)
「『
チャクラムが飛んでいくが、間に合わない。
(ああ。間に合わへん)
―た、だすげ……ゔゔーっ!― ―ぁ、がアー‼︎―
唄羽の頭に、『七人ミサキ』となった少女の姿がよぎる。
(うちは、また)
そう思った直後。
『い、ダあぁー‼︎‼︎』
姑獲鳥の悲鳴が聞こえた。
「はっ!」
唄羽は声のした方を向く。
「……ふざけんな!」
少年の
「ふふ。やったな、
武が小さく笑った。
少し前。
「早く上に!」
太樹と
「ここは危ない。地上に」
清森が女性を案内する。
「あ、ありがとうございます……!」
自力で歩ける人たちは、先を争うように細い階段を登っていく。
「いいんですか?上に敵がいるかも……」
「大丈夫。奴らの目的は、この人たちじゃない」
清森が声を振り絞って苦しそうに言った。
「それより、動けない人たちをなんとかしなきゃいけない」
清森が
「太樹くん、後ろ頼む」
「えっ⁉︎そんな、頼むって言われたって」
「なんかあったら“ヤバい!“って叫んでくれりゃ、あとは俺がなんとかする」
「でも、
明らかに声の出し方がおかしい。
「俺は……いいんだよ。こんくらいの傷、肉食って寝りゃ治る」
清森は
「
「はいっ」
太樹に背中を預けて、清森は治療を始める。
(ざっと見た感じ、20人くらいはいるな。……終わるまで保つかな)
「……いや、弱気になるな!『男やろ、強うなれ』!」
清森が顔を叩く。薙刀の師匠に言われてきた言葉が、自身を
「大丈夫、誰も死なせねえからな……!」
清森が治療をしている後ろで、太樹は唄羽の戦いを見ていた。
「すごい……」
自分より小柄な唄羽がモノノケと対等に渡り合っている。
(アニメとかマンガみたいだな……。住んでる世界が違うんだ)
あまりにも現実離れした光景をぼんやりと見つめる。
『クソ〜っ死ね‼︎』
そんな非現実が、自分に向かって猛スピードで突っ込んできた。
「うわーっ!」
(このスピード、当たったら、死……)
―だから、もう少し生きてみないか?それでもって、黒幕を一発ぶん殴ろうぜ―
不意に、
「そうだ。お前の、お前のせいで、みんな……」
強く拳を握りしめる。
「コイツ!」
太樹は震える声と足で、拳を前に突き出した。
そのパンチは大した
『い、ダあぁー‼︎‼︎』
柔らかいペットボトルだろうと高速で当たれば凶器になる。姑獲鳥の顔面にめり込んだ拳は、予想以上の反動とダメージを与えた。
「……ふざけんな!」
派手に後ろに吹っ飛んだ太樹は、『悪魔の胎児』の元凶である女に向かって吐き捨てた。
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