第五章:変異型怪異『コインロッカーベイビー』調伏の記録
其の十八:夜廻徒然昔話[6/2(土)]
夜遅く、時計の針は天井を指そうという時間。
「なんで
「だって、ミーチューブじゃ魚まで変形させたらどうなるかわかんなかったんだもん」
「そんな興味本位で呪具を作るな!」
「作ったんじゃないよ、ウルカイで買ったんだよ」
「なお悪いわ!そんなもんフリマアプリで買うな!」
「とにかく、これは没収!払った分のお金は立て替えてやるから。あと
「はぁーい」
少年はしょぼくれた声で返事をした。
深夜の住宅街。清森は
「イマドキは呪具もネット通販か……。買う方も買う方だが、売る方も売る方だわな」
体育祭での騒ぎから2週間。
「しかしまあ、こんな
清森とスーツの男がすれ違う。お互いの肩が軽くぶつかった。
「あっ、すいません」
(こんな夜更けにスーツの男……?仕事帰りかな)
そう思ったが、清森は自分が調伏装束を着ている事を思い出した。
(いや、装束着てたら普通の人には見えないんだよ!)
「おい、アンタいったい……⁉︎」
男の姿はいつの間にか消えていた。
「何なんだよ、いったい」
清森の
「ん?なんだこりゃ」
短冊に
『
「5・7・5・7・7……。
短冊にはわずかに
「……リンか」
清森は短冊を
「よし、
火村屋敷に戻ってきた清森。
「
「ああ、
「了解」
山沿いの蔵には、ぎっしりと
「右手さーん。これ、言われてたやつ」
蔵の中央に奇妙なモノがいる。筆に
『ああ、ありがとうございます』
「ここに置いとくぜ」
右手さんが正二十面体の
『おおー、これが噂の「リンフォン」ですか』
右手さんが半紙にスラスラと文字を書く。
「これも元ネタは『
『はい。
「つっても本物じゃないんだろ?元々が作り話なんだし」
『しかし、ここ最近はその「作り話」が次々とモノノケになっているわけですから。全てのモノノケを
「ふーん。勉強熱心なんだな、右手さん」
右手さんを
『おや、お手紙ですか?』
「うん、リンから」
『リン。
「ん」
清森が短冊を握りしめると、
『
「サバイバーズ・ギルド」構成員の一人が都内の地下に
23区内、竹下通りの廃ビルに拠点があるようです。
然しながら、何かの
特殊な方法を
以上』
「うーん、なるほどな……」
清森が頭を掻く。
『いつもの定期報告ですか』
「うん。メンバーの
短冊がボロボロと崩れ、跡形もなく消えた。
『林君、ずいぶんと清森君に懐いていますよね。年が近いからですか?』
「うーん、それもあるんだけどさ……」
清森が言葉に詰まる。
『何かエピソードが?ぜひ聞かせて下さい』
「右手さん、めっちゃ前のめりだな。こういうゴシップとか好きなの?」
『いいえ。言霊師のエピソードを
「ハア……。少し長くなるし、グロい話だけど大丈夫?」
『構いませんよ。そもそも、言霊師のエピソードなんて
それを聞いた清森が、静かに話し始めた。
「俺は木戸家……中国・四国地方の言霊師をまとめる家の跡取りなんだけどさ。
そのせいで、俺と千秋のどっちが木戸家を継ぐかで揉めてたんだよ。それこそ、俺らが高校卒業するまでは毎年のように当主の座を賭けて二人で
そんな感じで、本家の人らが内輪もめしてたらさ。野心のある分家が
強い言霊師の血を引いてるってのもあるけど、リンはめちゃくちゃ強い力を持って生まれてきた。正直、俺なんかよりもずっと強い。……まあ、さすがに武には負けるけど。
リンは、物心ついた頃から猿山の爺さん婆さんにしごかれまくってたらしい。血を吐くまで
ごめんごめん、話が逸れた。……まあ、そんな強い孫息子が育てば、
その時のリンは、爺さん婆さんの操り人形みたいなもんだった。巻物持って
そこで俺は聞いたんだ。
『何しに来たの?』
アイツは答えた。
『木戸の
それで、リンがあんまりガリガリだったからさ。俺、リンを宴会の席に座らせたんだって。
『どうして私を
『そんなの関係ないよ。メシ食わないと死んじゃうんだぞ』
後でリンに聞いたら、あの時に俺に
『しかし、
右手さんが問いかける。
「俺が頭下げて頼み込んだんだよ。『リンは爺さん婆さんに洗脳されてただけだ。こいつは俺が責任持って
『何か、
「うん。
・
・今後一生木戸家に仕える事
・常に木戸家の監視のもとにいる事
・木戸家のためにその命全てを捧げる事
……だったっけ。
『なるほど。林君が
「うん。なんでも、助命の条件で爺さん婆さんを殺したのがきっかけで『サバイバーズ・ギルド』に招かれたって言ってたよ」
『「サバイバーズ・ギルド」の加入条件は親殺し、という事ですか?』
「らしいな」
清森が立ち上がる。
「そろそろ戻るよ。長話してたら腹減っちゃった」
『お疲れ様でございました。おかげで、言霊師エピソードが
庭に出て、道場を通って台所に向かう。
「おはようございます」
「お、
唄羽をバックハグするような体勢で、
「武……。もう唄羽は回復したんだし、
「唄羽は……唄羽は俺が
武の目の下のクマは、いつもより一段と濃くなっている。
「たけさん、落ち込んではるから。気ぃ済むまでやらしてやってください」
「年下に気ぃ遣わせるなって……。唄羽ももうすぐ期末テストだろうし、ちゃんとテスト勉強させてやれよ」
「うん……。良いんだよ、俺の
「えへへ……」
清森と唄羽は少し困ったように笑う。早朝の光が青年たちを照らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます