第12話:各駅停車地獄行き[5/3�域惠��]
目を覚ますと、俺は電車に乗っていた。
「あれ……?さっきまでお化け屋敷に並んでたよな。それなのにどうして電車に……?」
周りを見回す。大人から子供まで、男女問わず色々な人が席に座っている。
「
「
「どこかケガしてませんか?」
「うん。手奈土さんたちも無事?」
「うちは大丈夫ですけど、レンちゃんが」
横を見ると、真路さんが真っ白な顔で手すりに寄りかかっていた。
「真路さん、大丈夫?」
「まさか、『
「落ち着いて、大丈夫やから、ね?」
(『猿夢』……。どっかで聞いた事あるような)
そんなことを考えていると、ドアが開いて誰かが歩いてきた。
「サル?」
駅員さんの制服を着たサルが通路を歩いている。
[次は〜、串刺し〜、串刺し〜]
気の抜けたアナウンスが車内に流れる。
「うっ、ぐえっ」
車両の一番後ろに座っていた男の人が、杭に貫かれた。
「ひっ……!」
あちこちから悲鳴が上がっている。子供の泣き声が聞こえる。
「逃げよう!早く!」
俺は立ち上がった。
「逃げるって、どこに⁉︎」
「あ……」
窓の外は真っ暗だ。
[走行中の立ち上がりや〜席のご移動は〜、ご
パニックになった乗客たちがボロボロのフードを被った黒い影に取り押さえられる。
[次は〜、活けづくり〜、活けづくり〜]
今度は串刺しになった人の隣に座っていた若い女の人だ。
「えっ何、何、やめて!」
黒い影が大きな包丁を取り出す。
「いっ、ぎゃーっ!あぁー!」
女性が生きたまま包丁で解体されていく。イヤなにおいが車内にこもる。
(助けを、そうだ電話!)
ウェアラブル端末の電源ボタンを押す。
「えっ、あれっ?」
何回ボタンを押しても画面は真っ暗のままだ。
「そんな……」
「んー。
バッグの中から眠そうな声が聞こえる。
「カヴァス」
「なんだニンゲン。ますます
[次は〜、ひき肉〜、ひき肉〜]
黒い影が親子連れに近づく。
「やめろ!」
助けに行こうとして、別の黒い影に羽交締めにされた。
「ひっ……!」
お母さんの足元にミンチ用の機械が置かれる。
「痛い痛い痛い!」
「わぁーっ!おかーさーん!」
機械が動いて、小さな子どもの目の前で、生きたまま、ミンチに。
「ゔぇっ」
吐き気が込み上げてきてえずいた。何も出てこなかった。
[子どもは大人の半額で〜す]
肉の破片が付いた機械が子どもの足元に置かれる。
(助けに行かなきゃ、助けなきゃ)
そう思っているのに足が動かない。
「いたいよぉ……おかあさーん……」
腰から下がグチャグチャになっている。苦しそうな声が聞こえる。
(他のみんなは)
手奈土さんは手にリング状の
「おい貧弱ニンゲン!しっかりしろ!」
「うう……」
グロテスクな光景を見たからだろうか。顔から血の気が引いている。
「どんどん近づいてる……。このままじゃ……」
「何をブツブツぬかしておるのだ!」
「大丈夫だよ、なんとかなるって」
なんとか元気づけようと声をかけ続ける。周りの人もみんなパニックになっているのが伺える。
[次は〜、生き地獄〜、生き地獄〜]
黒い影が、今度は俺に近づいてきた。
「い、生き地獄……?」
黒い影に何かを埋め込まれる。
「待って、何を……。うっ⁉︎」
体が黒いもやに包まれる。全身がギシギシと痛み出した。
「っ、あぁーっ!」
痛い痛い痛い!体がグチャグチャになってそこからナニカに作りかえられていく!
『苦しいだろ痛いだろ辛いだろ?これが俺の受けた痛みだ!』
黒いもやが人の形になる。
「し、ん、じ……?」
天井から下がっている
『苦しめ苦しめ!俺が苦しんだ分お前も苦しめ!』
もやが晴れてナニカが見えてくる。足はミイラのようになって、異様な長さになっていた。
(これって、『リョウメンスクナ』)
あの夜のバケモノ。
『ツラいよな?ラクになりたいよな?』
俺はうなずいた。
『じゃあ死ねよ。死んで俺と一緒になれよ!バケモノになれ!』
「バケモノ、に、なれ、ば。ラク、に、なれ、る?」
いっそこのまま死んでしまえば全部楽になる?埋まらない胸のカラッポも埋まる?
(早くいつも通りに戻って欲しいんだ)(自分の人生をちゃんと生きてくれ)
そんな言葉をかけられ続けるくらいなら、いっそ、ニンゲンなんかやめちゃっても、いいよね?
『ああ。だからさっさと死んじまえよ。抵抗なんかやめて……⁉︎』
泰樹?の背中に手裏剣が刺さる。
「アンタの相手はうちや!早うかかって
「てなづちさん」
手裏剣が彼女の手元に戻る。
『ちっ。ジャマすんじゃねーよこのクソアマがぁ!』
泰樹?の手が黒いもやに変わり、手奈土さんに襲いかかる。
「くっ……!」
もやを手裏剣で逸らす。さばき切れなかった攻撃が彼女の肌に赤い線を作る。
『死ね死ね死ね死ねェ!』
手奈土さんは肩で息をしている。
「分が悪い。このままでは死ぬぞ、あのニンゲン」
いつの間にか、カヴァスが目の前にいた。
「命を
「それ、は」
見捨てたいわけじゃない。でも、どうやって助けたらいいかわからない。
「ふーん、そうかそうか。ならばこの
力強い声が頭に響く。
「し……『死にたくない』!」
カヴァスがニヤッと笑った。
「よかろう!貴様の願い、吾輩が叶えてやろう!」
カヴァスは黒いもやに飛びかかった。
『ガァーーッ⁉︎』
もやを吸い取ったカヴァスが床を踏む。ライオンくらいに大きくなっていた。
「夢の中で
名状しがたいソレが、高らかに遠吠えをあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます