閑話:言霊師について
グラスを手元に置いて、二人の真ん中に本を広げる。
「とりあえず、言霊師の章から読んでみる?」
「そうですね」
ページをパラパラとめくった。
『第四章:五行家―
元々は
四神家からの独立と手奈土家の成立と同時に、基幹となる考え方が四神相応から五行思想に変化した。五行思想とは、万物が『火・土・金・水・木』の5つの元素からなるという古代中国に由来する哲学思想だ。
[図1](近況ノート『挿絵「閑話:言霊師について」』を参照してください)
中世に日本に持ち込まれたこの考え方は儒学者たちの間で広まった。五行思想を元に5つの家を5つの元素に振り分け、さらに個人の霊力の傾向も5元素に基づいて振り分けられた。
江戸時代初頭、徳川幕府の成立―すなわち戦乱の時代の終息―をきっかけに彼らは全国に散らばって民を守るようになった。
水面家は東北地方。火村家は関東地方。手奈土家は近畿地方。木戸家は四国・中国地方。金崎家は九州地方。ただし、
[図2](近況ノート『挿絵「閑話:言霊師について」』を参照してください)
では、各家の特色を簡単に説明しよう。
水面家は仙台近郊を拠点としている。『
火村家は東京郊外を拠点としている。『
手奈土家は京都市街地を拠点としている。『
木戸家は高知県沿岸を拠点としている。『
金崎家は福岡市内を拠点としている。『
この他にも一般家庭出身の言霊師を保護・育成する組織などもあるが、ここでは割愛する。』
そこまで読んで、一度本を閉じた。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
注文した料理が届いたからだ。
「なんというか……ものすごい、ね」
恋天使がうなだれた。
「ものすごい?」
「だって。五行とか色々難しい事書いてあってさぁ」
「さいですか?言霊師の性質はともかく、五行思想は一般常識やないですか」
「いや一般常識じゃないし!これが一般常識とかハードル高すぎでしょ!」
「そ、そうなんですね……」
唄羽がしょんぼりとする。
「あっ……。そそそそうだ、ここに書いてある事って、どのくらい合ってるの?ぶっちゃけ」
恋天使が慌てて話題を変えた。
「うちが教わった事と、大体
「そっか。じゃあ、割と
恋天使はカップを口につける。気づけば飲み物は空になっていた。
「コーヒー
「ほな、うちも」
二人で席を立ちドリンクバーに向かう。
「レンはん」
「はいっ⁉︎」
「あの本、他にどこか気になる所はあらへんですか?」
「うーん。後半にあった『モノノケとは何か』って所が気になるかも」
「ほな、戻ったらそちらからですね」
恋天使はさっきと同じくコーヒー。唄羽は少し悩んでぶどうジュースをグラスに注いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます