夜毎行われるは絵の中で

梅福三鶯

第1話 永遠の悪夢

「さあ診察を始めましょう」


 そう言って看護師たちは俺の体を弄ぶ。俺はベッドに縛り付けられ、なすがままにされる。


「ああもう止めてくれ」


 くすくすけらけら笑う看護師たち。


 その目は皆空洞で、口は耳まで裂けている。


「ふふふ ふふふ 可愛い」


 俺の顔を撫で回し口づけて、異様に長い舌を絡めてくる。漏れる息は生臭く、息苦しい。


「痛いけど我慢しましょうね」


 腕に何本も打たれる注射。いたずらに入れられるメス。あまりの痛さに俺は叫ぶ。


「大丈夫。今から気持ちよくしてあげる」


 そう言い俺の体に跨がって腰を揺らす看護師。その気持ちよさに気がいきそうになるが、他の看護師たちが俺の首を絞めたり、爪を剥がしたりして、苦痛を与える。


「ああああ────っ」


 苦痛と快楽の中、俺は気を失った。



 どんなに、どんなに願っても解放してはもらえない。この夜のように、ずっと終わる事はない。


 何度も逃げようとした。けれど窓もドアも開かない。


「無駄な事よ。枠の外には出られない」


 看護師の一人が言う。


「枠? どういう意味だ」


「ふふふ、教えてあげない。貴方はここでずっと、私たちといるの。ふふふふ……」



 目が覚めれば看護師たちが言う。


「さあ診察を始めましょう」


 そしてまた俺が気を失うまで続く苦痛と快楽。それの繰り返し。


 一体ここはどこなんだ。誰かここから出してくれ。それが無理ならどうかもう殺してくれ。


 その願いは看護師たちの笑い声でかき消され、俺はまた意識を手放す。


 次はもう、目覚めない事を祈って……。





 完


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜毎行われるは絵の中で 梅福三鶯 @kumokuro358

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ