兄のお供は妹のが最適ですが!?
活動終了時間になったため、仕事を切り上げ李津とアルは生徒会室に戻ってきた。ドアを開ければ、即座に反応したのが妹たちだ。
「おかえりなさい、兄♡」「おかえりぃおにーちゃん♡」
ほかのメンバーは一瞥するのみ。すぐに興味を失い、自分の仕事に手を戻す。
だが妹たちは、距離の近い二人に目ざとく気づく。
「き、今日は暑いですからねぇ〜。二人とも、もっと離れた方がいいかもぉ〜」
「佐蔵井先輩! どうしてウチの兄とアルさんをペアにするんですか? 兄のお供は妹のが最適ですが!?」
つむぎはソファ席からアルを威嚇し、デスク作業をしていた莉子は立ち上がって絹へと抗議する。
連携バッチリの妹ズだ。
上座でパソコンを叩いていた絹は、手を止めて眉をひそめた。
「まあ座ンな、ツインテールの妹。りの字もハウル嬢も地頭はいいんだが、二人とも学校を知らなさすぎる。外に出た方が学べると考えての采配だ」
「だったら! あたしも1年生です。この学校のことは知らないのも同然ですが!?」
「おまえのパソコン作業には光るものがある。悪いがデータ処理をまかせる方が、効率が良くてねぇ」
「こ、効率……くっ!」
打算的で合理厨の莉子、この一言で黙ってしまった。
それを見てまずいと青ざめるつむぎ。慌てて挙手。
「じ、じゃあ〜、わたしがぁ〜」
「黒い妹は、どうかできるだけ大人しくしといてくれ」
「うえぇ〜!? な、なんで……ひゃあっ!?」
声を上げた勢いで、机でまとめていた大量のプリントに手が触れ、床に散らばった。
何も言えなくなり、しょんぼりするつむぎ。李津は慣れた様子で、プリントを拾うつむぎを手伝いに向かった。
「会長! ネットで申し込みができるようにしたので、カラオケと有志のステージの枠がもう埋まりました」
入れ違いに、デスクワークをしていた生徒会執行部の男子が報告する。
例年よりも半月ほど早く埋まった枠に、執行部のメンバーたちはどよめいた。
「そうかい、ありがとう。今年はツインテールの妹が組んでくれたシステムのおかげで、去年よりも進行がスムーズだな。しかしおまえ、一体どこでこんなプログラムを覚えたんだい?」
「なんか触ってたらできました」
「
「し、承知しました」
騒ぎは落ち着き、再び室内にパソコンの打鍵音が重なった。
手持ち無沙汰になったアルは、パソコン陣の後ろで興味深そうにモニターを覗き込む。
「ふぅーん。ねえ、りっつんは有志のステージとかには出ないんだね?」
「俺? いや、そういうのは興味ないから」
(おい、おまえが出られるわけがないだろ!!)
それは、会話を聞いていた生徒会執行部のメンバー全員が強く思ったことである。
別名「リア充パーリー」と呼ばれているのが、この有志のステージ。
催し物の上手い下手など関係なく、カーストのトップらが、ワイガヤやるところである。
この中でいうなら、莉子みたいな生徒がその権利を持つ場所だ。李津なんかに出られてたまるかと、面々はイライラしていた。
「やば! 倉庫にペンポ忘れて来ちゃった! りっつんごめん、もっかい付き合ってちょ!」
パンっと手を叩いて、アルが声を上げる。
「はあああああ!? このアバズレまたですか!?」
「ふっ、二人きりはちょっとぉ〜〜〜」
有宮妹たちももれなくやかましい。
なんだこの妹たち、こんなにかわいいのに、よりによってこの兄にブラコンなのか?と、そろそろ気付き始めた執行部何人かの挙動がおかしくなってきている。
「んじゃ、俺が付き合えばいいだろ〜」
そう言ってゆっくりと立ち上がるのは
先ほどから床に這いつくばり、ひとりで段ボールに色を塗っていた彼。孤独な作業に飽きていた。
「
「あざざーす、つーくん!」
つむぎがばら撒いたプリントを拾い集め終わった李津は、
「ちょっと、兄も!? なんでそうなるんですかー!」
「ぴえぇ〜〜」
妹たちの声を無視し、仲良く出ていく御三方だった。
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