相談を聞いてくれねえか、りの字ィ
李津がソファに座ると、隣に
「さあて。先日イオンでうちの若ぇのが迷惑かけた件だが、詫びが遅くなって悪かったねえ。コイツが言わねえもんでさ」
「しやーせんっ!」
クラスでは偉そうな
「弟分の不始末は姉貴分が尻を拭わにゃならねえ! 有宮李津! てめぇの願い、この佐蔵井 絹がなんでも聞こうじゃねえか!」
どんっと腕を机に置いて絹は身を乗り出した。大変自信に満ちあふれた表情である。
「いらないです」
しかし李津はこともなげに断った。
身を乗り出してカッコつけた手前、バツが悪い絹はもう一度尋ねる。
「あ、あたしになにができるのか、先に話した方がいいか? そうだな」
「いらないです」
かぶせるように断った。なにかしてもらうことより、知らない人と関わることの方が面倒だ。今いちばんの願いは「帰りたい」である。
「会長、しやーせん!! こいつちょっと常識が通じなくて、俺も手こずってるんすよ!!」
「
「しかし吐いた唾は飲み込めねえな。いつでもいい、頼みてぇことができたら、この絹を訪ねるがいいさ」
「了解です。話が終わったなら俺はこれで」
「待ちなァッ!!」
やっと帰れると思った矢先に引き止められて、李津はわかりやすく眉をひそめた。
鬼気迫る、という言葉がピッタリな表情で絹は言葉を続けた。
「話はこれだけじゃねえんだ。ウチにも
「? でも悪いのは
「あ、ああ。そうだけど……」
「てめぇらはそうだとしても、ウチには関係ねえ!!」
「……
「組織っつか、生徒会で面倒になってるというか」
「??」
日本の生徒会って、そういう感じなのか? 首をかしげる李津に、絹の眼光が突き刺さる。
「ケジメと言っても形だけだ。ちょっとあたしの相談を聞いてくれねえか」
「断ります」
今度こそ立ち上がり、李津は生徒会長を見下ろした。
「なんなんだ、そっち都合で呼び出して、因縁つけて勝手なことばかり言って。さっきのなんでも願いを聞くってやつ、『俺に構うな』にするわ」
「ああ? 待ちなァ! てめぇコラァ、
ドスの効いた声が室内に響いた。生徒会室とは思えない異様に重い空気が、肌にピリピリと突き刺さる。
「1年の富永
もちろん、つむぎをいじめていた二人の名前を忘れるはずはない。李津の下ろしていた指がわずかに動いた。
その反応だけで確認は充分だとばかりに、うなずいて絹は続ける。
「お嬢さんらがしたことはあたしの耳にも入っている。かなり過ぎたことをしていたらしいじゃねえか。だけどな」
絹は再び体を前傾に倒し、指を組んで李津を見上げた。
「逆に、彼女たちが
李津の瞳が揺れた。
どこで情報が漏れたのか。セキュリティ対策は万全だったはずだった。
ひとつ思い当たるとすれば、ニコルのスマホのデータを抜いた瞬間だ。誰かが見ていたのか。李津の顔はこわばった。
バレた原因を探らないと、ここ以外にも李津がやったことがバレてしまう恐れがある。
カマをかけているとは思えないほど堂々としている目の前の女子生徒を、初めて李津は恐れた。
「ご、ごめん。俺がしゃべっちまった……」
「おまえかよ!!」
シンプルに
「
「…………」
ここまですべて出来レース。
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