自分の尻は拭えるよな?^^(LINEトークあり)
「
ビクッと肩が跳ねるのは、2年の教室に正座させられている1年生の4名だ。
陰キャと舐めていた男は、特に
年上の余裕か。
それとも
翔也は見誤ったことを悔いていた。
しかし彼の考察はいずれも否。
同年代の友人がいなかった李津は上下関係など知らないし、面倒ごとを早期解決するためには手段を選ばないタイプである。
「うちの妹に散々嫌がらせをしてくれたらしいけど、説明してもらっていい?」
1年たちは一瞬の目配せで「何がなんでもシラを切り通すぞ」と気持ちをひとつにする。
「な、なにかの勘違いじゃないですかねーっ?w」
「ちょっと机にぶつかって怖がらせたことかなぁ? もちろんわざとじゃないっす! 偶然っすよ!」
ここぞとばかりの美しいコンビネーションを発動。
「偶然……。
面倒なやつに振るなよ陰キャ!と、心の中で叫びたい翔也たちだが、そんなことを言える立場ではない。
椅子を逆にしてまたがり、背もたれに肘をついていた
「ほーん。つむぎちゃんの教科書を隠したのも」
「!?」
「机をゴミ箱代わりにしたのも、ひどい言葉を投げかけたのも」
「!!?」
「ぜーんぶ、偶然だぁ?」
あ、ヤバい。殺される。
正座中の全員が悟った。思ってた以上に、ネタはあがっていたのである。
それもそのはず、
「すみませんでしたーっ!!」
「だろうが! シラ切ろうとしてんじゃねー!!」
「まぁ、落ち着こう
勢いよく椅子を倒して突進しようとするチンピラを、李津が片手で制した。まるでバーサーカー使いのようなムーブである。
だから何者なんだよこの陰キャ!と、翔也は泣きそうだった。
とかく。
「本当にすみませんでした!! もう金輪際、有宮には手ぇ出しませんっ!!」
翔也がガバッと土下座した。かわいくなったつむぎに手を出せないのは痛いが、それよりも自分のことである。
仮に今ここで顔を傷つけられたときの損失は膨大。どうせ同学年は見ていない。土下座したって、プライドはギリ守れるとの判断である。急ぎ、女にも困っていない。ここは
そんな彼を見て、翔也だけ一抜けされても困ると、ほか3名もそれに倣って額を床に擦り付ける。
これをニヤニヤと眺める
「約束を守らなかったら、どうなるかはわかるなァ?」
躑躅はわざとらしくネッチョリと責め立てる。大変楽しそうである。
「うす!! あ、でも……、俺らは手を引きますけど、女子を止めるのは無理っすよ?」
「あ?」
「正直、有宮に手出してるの俺らだけじゃないんすよ。女子は俺が言っても聞かないと思うんで」
「ダメだ」
「…………」
そんなこと言われてもと、1年男子たちは理不尽そうに顔を見合わせた。
「
そんなところで李津が割って入る。
「ったく。こっちは静かにやりたいのに、面倒ごとを持ち込んでくれたよなぁ。おまえらさ、今後は妹と接触せず、悪意だけ排除してもらえる?」
「それは、ど、ういう?」
「机が汚されていたら片付ける。教科書を取られていたら取り返す。妹と関わらずとも、自分がやったことの尻ぐらい拭えるよな?」
「……」
つむぎの好感度を上げるためにもとよりそうするつもりだったが、一切関わらないという制約がつけば、手柄は立てられない。
これでは好きになってもらうチャンスがなくなってしまう。がっくしと翔也は肩を落とした。
よくよく見れば、隣に並ぶ男子たちも同じように青ざめて放心している。さすがは仲良しグループ。彼らがここに来て正座に至った理由も、首を垂れた理由も。
そしてこれを見せられる2年1組の生徒たちは思う。
「自分のクラスでやれよ!」と。
◆
「ありがとな、
「よせよォ。いじめはよくねーからな。当たり前のことをしただけだ!」
放課後、2年2組の教室で頭を下げる李津に、
けどよぉ、と
「つむぎちゃんから直接話を聞かないのか? こんな裏からじゃなくて、俺が1年どもに一言ズバッと言えばよぉ。おさまるんじゃねーの?」
彼の言う通り、つむぎはまだなにも話してくれていなかった。
だからといって放ってもおけない。
つむぎの様子がおかしかった日、話を聞いた親友のアルが筋道を作ってくれた。ゲーム好きな彼いわく「トラブルなんてパズルと同じ」。戦略を考えるのは得意らしい。
まずは助言通り、信頼できる
情に熱い躑躅はすぐに動いた。おかげで、いじめの首謀者を即特定。
その中心人物のひとりである躑躅の後輩から無力化しようと見張っていれば、本日、なぜかノコノコと山川翔也とその取り巻きが2年の教室に現れたのだ。地引網のごとく全員捕獲できたのはラッキーだった。
「2年が出しゃばって、ほかの1年がビビってつむぎが距離を置かれるようになってもかわいそうだし」
そういうもんか?と、躑躅は不服げだ。
長いため息をつき、李津は眉間のしわを解く。
「……とりあえず、あとは俺がなんとかするよ」
「おう。
「サンキュー。ああ、渡邊さんもなにか気づいたら教えてね」
「えっ!?」
突然話をふられた隣の席の渡邊さんは大困惑である。今わたし、その話の中に入ってたの?と。
というか、李津が自分のことを友だちだと思って接している節があることが常々に不満だった。
ここはビシッと、その思い違いを正してやらねばならない。
机を両手で叩きつけ、彼女は勢いよく立ち上がる。
「へえ。よろしくなー、渡邊」
「えっ!? あっ、わ、わかった!」
思わず
【LINE】
>†りっつんのズッ友†(3)
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アル
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16:52
既読
Arkadia
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アルだお( ^ω^ )
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16:53
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とりあえず、第一ターゲッ
トを無効化した
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17:04
既読
Arkadia
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無効化ワロタ
FPSかよw
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17:04
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全員イケメンだった…
法が許すならボコしたかっ
たぜ
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17:06
既読
Arkadia
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イケメン○ったらブサメン
の嫉妬に見えるの、マジで
やめてほしい(素)
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17:06
Arkadia
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とりまざまぁwww
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17:06
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躑躅のおかげだよ!
アルもサンキュー!
相談してよかった
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17:08
既読
Arkadia
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へへん
いーってことよ!
つーくんもさすがッス!
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17:08
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ありがとうつーくん!
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17:10
既読
Arkadia
(スタンプ)
17:11
(スタンプ)
17:11
既読
ツツジ
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てか昼休みも思ったけど、
つーくんてなんなんだよ!?
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17:19
(画像はノートに掲載)
https://kakuyomu.jp/users/asamikanae/news/16817330655539145158
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