第53回配信 (レミー目線)いちファンとして、そして同じ活動者とし
私はその日、とても気分がよかった。
朝はスッキリ目が覚め、卵は双子、占いは一位。なんだか、いいことが起こりそうな、そんな気がしていた。
だから、油断していた。
Vtuberの活動を続けていれば、発生する危険は身近に存在していることに。
私は、ふとつぶやきを開いた。
別になんてことない、いつもの同じ行動。
だけど、ふと見たつぶやきは、なんだかいつもと違っていた。
私の周りには、いつも前向きなコメントをくれる人が多い。
そりゃ、批判する人もいるけど、それはそれとして、大体はそんな感じ。
なのに、その日はなんだか私の周りはミラーツインズの話をする人が多かった。
あれ?なんだろう?
リスナーからのコメントで不思議に思った私は、何気なくミラーツインズのつぶやきを見る。
そこには、いつも通りのつぶやきが並んでいた。
だが、そのコメントを見るとどこかいつもの違う様子。
なんだかミラーツインズの近辺が少しザワザワしていた。
いつも、2人の周りには嫌な感じの人はいない印象。
大体みんな、ヤンデレが好きな人間。
ヤンデレ好きに悪い人はいないのだ。
なのに、なぜかその日は少しザワザワ。
でも、きっといい意味で話題になっているんだろう、そうたかを括っていた。
だが、詳しく見ることで、私は息が止まりそうになった。
なぜなら、そこにはVtuberのタブーに触れる話題があったとの情報が見て取れたからだ。
え?なにこれ?こんなことする必要ある?
私は、頭が混乱した。
そして、思い出した。
「なんでこんなこと言われないといけないの?」
「もう耐えられない」
「Vtuberなんてしなきゃよかったよ」
頭に響き渡る言葉。
全て、かつての仲間たちに言われてきた言葉だ。
ありもしないことで炎上してしまった子、誹謗中傷を浴びたりして心が疲れてしまった子。
もう2度と配信ができなくなった子もいたし、普通に生活することができなくなった子だっていた。
わかっていたはずなのに。
私は、頭がぐらつくのを感じる。
そうなりうる可能性なんて、たくさんあるものだって。今までなにを見てきたのか。
2人なら、大丈夫って、なにをたかを括っていたのか。
いつだって、様々な危険と隣り合わせで、私たちは活動をしているんだって、わかっていたはずなのに。
だが、ついつい忘れてしまうのだ。
いいところばかりを見ていると、悪いところはだんだん目を逸らしてしまうもの。
私はそっと画面を閉じる。
私は、今までなにも守れなかった。
仲間も、自分さえも。
それは、守れない立場だったし、守れるほど自分も強くなかったからだ。
でも、今の私は違う。
彼女たちを傷つけたつぶやきを見ることで、私は彼女たちは守らなければ。そんな思いが当たり前のように湧いてきた。
こんなことは許さない、それが当然のようにまかり通っている世の中を正さなければ、と。
仲間をここで潰させるわけにはいかない。
これからもっともっと、2人はVtuberとして活躍するんだから。
それに、なんて言ったって2人は国宝級のヤンデレ。
こんなことで傷つけられるなんて有り得ない。
覚悟して?ヤンデレを傷つけるってことは、自分が死んでも構わないっていう覚悟の上でしょう?
誰を敵にまわしたのか、思い知らせてあげる。
今の私ならできる。
伊達に活動を長くやってきていないのだから。
2人の配信が好きなものとして、2人の配信に笑顔をもらっているものとして、やれることがある。
これからも、2人には笑顔でいてほしいから。
2人がいなければ、今の私はいないから。
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