第52回配信 逆凸って?

僕は、紫友から携帯を受け取ると、画面を見る。

するとそこには、


『お久しぶりです!レミーです!

私、今度誕生日逆凸するんですけど、よかったらしてもいいですか?

お返事待ってます!』


という内容のDMがきていた。

ふむ、なるほど。逆凸かぁ。


逆凸といえば、Vtuberあるあるとも言える。

逆凸というのは、凸待ちの逆だ。

まず、凸待ちというのは、自分が配信している間に、誰か他の人が配信に来るのを待つもの。

誰が来るのか、どんな話をしてくれるのかというワクワクドキドキが楽しめるコンテンツだ。


反対に、逆凸といえばこちらから相手の配信に入るもの。

電話に出てくれるか、配信が成り立つか、というところが見どころであるとも言える。

まぁ、でも実際は配信に入るというよりかは、相手に電話をかけて、その様子を流すと言ったほうが多いが。


なんにせよ、凸待ちだろうと、逆凸だろうと普段の配信者の交友関係や新たな関係性、普段見られない一面が見られるとあって人気のあるコンテンツではあるのだ。


さて、ではこのレミーのメッセージは何か。

僕はメッセージを見ながら考える。

逆凸する時に相手に連絡するか否かは、その人に任せられる部分も大きいかもしれない。

だが、レミーのこれまでの配信を見ていると事前に連絡する派よりは、本当に突然派。

事前の連絡はなしに、その場の空気で行っているようなイメージだ。

もちろん、その方が、視聴者もドキドキできるし、それこそ本来の逆凸と言えるかもしれない。


だが、それはある意味リスクだ。

誰も出てくれない可能性だってあるし、見どころがあまりないまま配信を終了することになるかもしれない。

だから、別に事前に連絡をするというのは変なことではないと思う。

まぁ、他のVtuberについては知らないけれど。


とりあえず、それは置いといて。

今考えるべきは、このメッセージが突然送られてきたということ。

あまり、仲がいいとはいえないし(まだコラボ配信は一回のみ)、こちらは個人Vtuber。

理もないけどなぁ。それだけ一回のコラボで仲良くなれたということなのか?


僕は悶々と考えてしまう。だって、いきなり逆凸とか連絡が来たら普通は驚くし、なんで僕たちに?と思うでしょう?

こちとら、細々とやっているんだから。

それに、事前に連絡をしてきたのも気になる。逆凸ならやっぱり、突然が肝。

なんで連絡を?


だが、僕が色々とと考えているうちにも、


「本当だ、レミーからのお誘いだね。逆凸とか、僕たち初めてじゃない?」


「ね!すごい楽しみ!なんかそういうの、Vtuberって感じするしね!」


と、ノリノリな2人。

2人にはもう、レミーとのコラボは予定として組み込まれたようだ。

いや、まだおっけーともなんとも言ってないんだけど。

と言いたい僕に、一つの考えが浮かぶ。


あ、なるほど。これが狙いか?

もしかして、2人が予定外のことに弱いと思い、事前に連絡してきてくれたのか?

2人は基本的に、情緒は安定していない。

それが、ふたりの良さでもあるかもしれないが、配信をするにあたってはある程度の情緒の安定は必要。


配信をするという心の準備があれば、2人の気持ちは安定するだけでなく、2人の良さは出やすい。

もしかして、そういうことなのか?

レミーはここまで読んで、先に連絡をしてくれたのか?


と、僕はここまで考え頭を振る。

あぁ、もう色々考えたって訳がわからない。

もうなんだっていいや。

僕は急いでメッセージを返す。

2人が笑顔になれるならそれでいい。

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