第45回配信 僕はどうしたらいいのか
僕はどうしたら良いのかわかなくなってしまった。
頭はぐちゃぐちゃ。いつもなら、冷静に対処することができるのに。
少し時間が経つと、誰かが何かしてくれたのか、
僕の個人情報を載せられた記事は消された。
そのため、もう見ることができない。
だが、消されたからと言って2人のSNSに載せられたもの。
2人のSNSの反応を見るに、僕が想像する以上の人がこの記事を見たことは推測できる。
一度ネットに晒された情報はもはや完全に消し去ることはできず、永遠にネットに残り続けるものであると言えるだろう。
それだけ2人は有名なのだ。
はっきり言って、こんな記事はVtuberをやっていれば上がるし、こんなのネットには山ほど溢れている。
レミーのだって見たことはある。
だから、記事を信じるか信じないかで言えば、信じない派が多いかもしれない。
こういった中の人の情報を解明しようとすることを、良しと思わないファン層も多いだろうし、そこまで心配することはないのかもしれない。
だが別に、僕の情報が世界に発信されてしまったことが問題なのではないのだ。
問題は別のところにある。
2人の正体がバレていないとはいえ、僕が2人に関わっていることがバレてしまったことが、問題なのだ。
真偽を問わず、Vtuberのプライベートが図らずも晒されてしまうことは決していいことではない。
これを機に、2人を応援しなくなる人だって出るかもしれないし、夢を壊してしまうことに繋がってしまう。
さらに、記事では、僕の顔が蒼なのでは?と描かれている。
僕なんかの顔では、幻滅するに違いない。
そして、それだけではない。
重要な点はもう一つ。
2人の居場所が、中学時代の人たちにバレてしまう可能性があることが問題なのだ。
2人の居場所は、家族と僕のみが知る秘密の場所。
そこで生活することで、やっと2人は元の生活に戻りつつあるのだ。
それなのに、こんな馬鹿げたことで、それが崩れ去るかもしれないなんて。
やっと、やっとここまで来たのに。
これが崩れてしまうことを考えると、僕は体がスッと冷えるのを感じる。
絶対にそんなことはさせない。
2人をふと見ると、すごい形相で携帯を見ていた。
「なにこれ、絶対に許さないんだから」
「本当だよ、ありえない。絶対に突き止めてやる」
と2人は息巻き、パソコンを開き始める。
2人にかかれば、数日で記事を書いた本人を捉えることはできるだろう。
伊達に、2人はリスナーを追いかけ回していない。
もはや、プロの域だ。
だが、僕は必死で止める。
当たり前だ。そんなことに、なんの意味もないのだから。
2人が犯人を見つけてどうなる?
糾弾するのか?それとも注意喚起でもするのか?
そんなことになんの意味があるのか。
過剰な反応をすれば、より信憑性は増すし、記事を見ていない人にも伝わってしまい、より広めることになってしまう。
そんなことをしてしまっては、あらない方向に議論が飛び、2人に対する非難が集まる可能性だってある。
そんな可能性がわずかでもあるのに、そんなことを2人にやらせる必要があるだろうか。
2人に関係ない知らない人、僕はその立ち位置である必要があるのだ。
だから、絶対に過剰に反応はしてはいけない。
この場合にするべき手は一つ。
「そういう中の人とか考えるのはやめてよ。今の僕たちだけを見て」
そう言うだけ。
それなら、2人のキャラは守れるし僕と関係があるのではないか、と言うことよりも2人のヤンデレに目が行く。
隠したいことがあるならば、それより注目がいくものに隠す。
隠しものの基本だ。
だが、僕の提案など2人は聞く耳など持たない。
当たり前だ、いつものこと。
どうすれば2人が冷静になれるか、いや冷静になれなくても2人への被害を少しでも減らすためにはどうすればいいか。
僕は1人ベッドに横になり、考えた。
早く思いつかなければ、2人は犯人を見つけてしまうだろう。
そして、2人のことだ。
きっと犯人を問い詰めて、大袈裟に反応するに違いない。
そうなれば、僕の想像した通りにことは運んでしまうかもしれない。
それは、なんとしても避けなければならないことだ。
僕は、1つの案を思いつく。
それは、いつもどこかで考えていたこと。
ただ先延ばしにしていた事実。
僕だっていつかは、2人から離れなくちゃいけないとは思っていた。
その時が早まっただけ。
2人をサポートするために、とぬるぬるいたがそれでは2人のためにはなっていないこともなんとなくわかっていた。
2人をサポートするつもりで、実際は2人に支えられていたのだ。
その事実に向き合うことが、僕にはできていなかった。
ただそれだけだ。
僕は2人を起こさないように、マンションを出た。
どうするべきかは自分が1番わかっているはずだから。
僕は一通の手紙を残し、マンションを後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます