第42回配信(紫友目線)別に私怒ってないよ?
「あー!!」
私は、冷蔵庫を開けて絶望する。
昨日やっと届き、楽しみにしていたプリンがなくなっている。
そのプリンはお取り寄せ専用で、やっと手に入った限定もの。
私は、すぐさま洗い場を見る。
そこには洗われきれいに水切りされている、プリンのカップが一つある。
あぁ、そうふーん。
私の声を聞いて、お兄ちゃんがやってくる。
私が冷蔵庫を開けているのを見ると、またかと言う顔をしながら、
「どうしたの?」
と話しかけてくる。
なるほどね、そういうスタンス?
まぁ、でも一応確かめるだけはした方がいっか。
私は、エンジンを入れる。喧嘩するならもちろんいるでしょ?
さてと、行こっか。
「私のプリン食べたでしょ?」
私はお兄ちゃんに仕掛ける。
さぁ、どう反応してくる?
それ次第じゃ、これからの喧嘩大きく変わるけど?
たが、お兄ちゃんのスタンスは変わらない。
気だるそうな感じで、私に言い返してくる。
なるほどね、そうくるなら私にだって作戦がある。
私は、お兄ちゃんに対して責め立てる言葉を並べる。
だが、お兄ちゃんはと言うと、しらばっくれながら失礼なことばっかり言う。
私は、プリンのことなど忘れ、お兄ちゃんに対する怒りが湧いてくる。
なんなの?私、今日はイライラしたくないんだけど?今日は別に、怒ることはメインじゃないんだから。
だけど、お兄ちゃんはもちろん、私のそんな様子に気づくことはなく私を理詰めしてくる。
そもそも、口ではお兄ちゃんに勝てたことはない。私は、怒りが沸々と湧いてくるのを感じる。
本当に腹が立ってきた。私は、そばにあるコップに手を伸ばす。
なんなの本当に。
「どうしたの?」
聞き覚えのある声が。声の主を見ると、そこには龍ちゃんがいた。
え?嘘、今の見てた?いつ入ってきたの?
私がコップ投げたところ見た?私がお兄ちゃんに言い返したところ見た?
見てないよね?
私は焦る。だが、すぐに冷静さを取り戻し、怒りを思い出す。
そうよ、私は何のために怒ったふりしてたの?
全てはここからの展開のためでしょう?
私は、怒った理由を話す。
すると、龍ちゃんは少しバツの悪そうな顔をしている。
なるほどね。おっけー。
私は、龍ちゃんの前で一通りお兄ちゃんと喧嘩をすると、わざと音を立てて自分の部屋へと入った。
さてと、ここからが大変。
私は、部屋をきれいにしながら龍ちゃんがくるのを待つ。
今回は、ぬいぐるみ持っての登場にしよっと。
私は、龍ちゃんを待つ。
龍ちゃんいつくるかな?
楽しみで、私は時計をかぶりつくように見ている。
あぁ、しかも今回はだって龍ちゃんの珍しい反応が見られるに違いないのだ。
だって、今回は、喧嘩の発端は龍ちゃんだもんね?
え?なんで龍ちゃんが食べたってわかったかって?
わかるよそれぐらい。
何年龍ちゃんといると思ってるの?
お兄ちゃんなら、食べた後プリンの入れ物洗わないしそのまま。
しかも、私が怒っている理由を言った時の顔。
あの顔を見たらわかる。しまったって顔してたもんね。
まぁ、一応龍ちゃんかどうかを確かめるため、お兄ちゃんと喧嘩してみたけど龍ちゃんなのは明白。
あぁ、早く来ないかなぁ?
「コンコンコン」
部屋に入ってから、23分25秒後ノック音がする。
いつもよりも、5分48秒遅い。あと1分遅かったら、私は待ちきれず部屋から出てしまっていたかもしれない。
私は、わざと不機嫌そうに返事をする。
だって、不機嫌だったら機嫌良くなるまでずっと龍ちゃんいてくれるからね?
龍ちゃんは、ゆっくりと部屋へ入ってくる。
やった!来た来た。
私は、思わずほころびそうになる頬を何とか抑え、龍ちゃんの話を聞く。
優しいその声と、私にだけ向けたその言葉に私は嬉しい気持ちを噛み殺す。
あぁ、別にそんな申し訳なさそうな声なんてしなくていいのに。
龍ちゃんが私と2人っきりで話してくれるんなら、プリンなんてどうだっていいもんね。
配信の前の日に喧嘩すると、絶対に龍ちゃんは私とたくさん話をしてくれる。
それは、明日の配信に響くことを恐れているからだ。
そういうところが、好きで利用されやすいんだよ?気をつけてね?
私は、怒っているふりを続けながら、この時を噛み締める。
だって、この時だけは私だけの龍ちゃん。
お兄ちゃんにも邪魔されないひと時。
いっつも、龍ちゃんと話してたら入ってきてさ。
自分が構ってもらえなくて寂しいのか知らないけど、本当かまってちゃんなんだから。
そんなかまってちゃんのいない、このひとときを満喫しないなんて、あり得ない。
だけど、そろそろ1時間が経つ。
あぁ、そろそろ終わらさないと龍ちゃんも困っちゃう。
あぁ、終わってほしくないよ。
でも、これ以上やったら怒ってないことがバレちゃうかもしれないし、何より嫌われちゃうかもしれない。
それは無理、絶対に耐えられない。
今日はここまでね。
次の日、冷蔵庫を覗くとそこにはプリンがある。
あ、さっすが龍ちゃん、私にプリン買ってきてくれてる。
私は早速開け、食べる。
うーん、美味しい。
龍ちゃんが食べちゃったのより、数倍美味しいよ。
だって、これは龍ちゃんの愛がこもってるからね?
次は、何で怒ろっかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます