第40回配信 次は紫友の元へ
僕は蒼の部屋を出ると、足早に紫友の部屋へと向かった。
蒼が終われば、次は紫友。
蒼は比較的楽だが、紫友はめんどくさい。
今日はどの方法で慰めようかな。
僕はそんなことを考えながら、さっきと同じようにノックをする。
すると、
「なに!」
と不機嫌な声で返事をされる。
僕はビクッとする。はぁ、そんな怒らなくても。
僕だよ、と言い、僕はのそのそと部屋へ入る。
紫友はくまのぬいぐるみを握りしめて(締め殺して?)ベッドへと座っていた。
まぁまぁ機嫌が悪そう。
「何!龍ちゃん。私、いますごく怒ってるんだけど」
と、怒り心頭な様子。
そこまでプリンで怒らなくても、も思いつつも食べ物の恨みが恐ろしいのもわかる。
たかがプリン、されどプリンだ。
だが、いつまでもこのままでは困る。
困るのはもちろん僕。
だから、意を決して僕は言う。
「今度、プリン買ってくるからもう怒らないでよ。ね?」
僕の話に紫友はこちらを向くも、すぐにそっぽを向いてしまう。
あぁ、ダメかぁ。
今回は優しいバージョンで言ってみたけどなぁ。
プリン買ってきてあげるって言ってもダメか。
行けると思ったんだけどな。
今回は、気を紛らませる方法の方がいいのか。
僕は、いつもこんな感じで2人の部屋を別々に訪れて言い分を聞くようにしている。
どうせ、いつもケンカのパターンは決まっているのだ。
紫友が怒る→蒼が呆れる→言い合いになる→別々の部屋にこもる。
大体こんな感じ。
2人が言い合いになっているところに一度割って入ったこともあったけど、巻き込まれてもまれてそりゃあもう大変だった。
それから僕は、2人が別々になってから割り込むようにしている。
蒼がキレることは少ないが、稀に蒼もヒートアップしてくると蒼のネガティブ発言と紫友のキレ具合でもう手に負えない。
それに陥る前に手を打つことが、最善なのだ。
別々の部屋にいるときに一人一人と話せば、言い分はわかりやすいし巻き込まれることも少ない。
まぁ、今回は本当にどうでもいい喧嘩だけど。
それに、一人一人話して、嘘でも「僕は君の味方だよ」って言うことや、気を紛らわせることが重要なのだ。
これは、子供とかに有効とテレビでやっていた。
僕は、それを参考にしている。
2人は子供みたいなもんだからね。
まぁ、それは置いといてとりあえず今は目の前の紫友。
僕は紫友に語りかける。
「プリン買ってくるよ」
「ほら見て紫友のこと褒めてくれてるコメントあるよ」
「夕飯は紫友の好きなエビチリにしよう。」
関係ないことにも話を持っていって、できる限り話を逸らしながら、紫友の機嫌が直るのを待った。
どれほどの時間が経っただろうか。
僕は、自分の喉がカラカラになってくるのを感じた。
もう、もう話のネタが。
そう思っていると、
「まぁ、もういいや!今度プリン買ってきてよね龍ちゃん。あと今日はエビチリと麻婆豆腐ね」
と紫友は急に機嫌が良くなると、ルンルン気分で部屋を出て行った。
なんなんだ、僕はどっと力が抜ける。
さっきまでの怒りはどこに行ったのか、あんなに明るくなるならもうプリンは途中からはどうでもよかったのか?
僕がこの1時間どれだけの労力を使って、話しかけていたか。
そんなことも知らず、気分屋というか機嫌の上下が激しいというか。
僕は呆れるも、どこがほっとしている。
まぁ、怒っているといつ機嫌を直したらいいかわからなくなる時もある。
そうだと思おう、今日はそんなに時間かからず終わったし、いいだろう。
機嫌直してくれただけでよしとしよう。
今回は僕が悪いんだから。
なぜって?
あのプリンを食べたのは僕だったからだ。
いや、これについては弁解したいんだが、別にわざとじゃないし、嫌がらせでもない。
ただ、冷蔵庫に入っていたプリンを、自分が買ってきたものと勘違いして食べてしまったのだ。
プリンの話だって言われた時、ドキッとしてしまった。
だから、急いで冷蔵庫を見に行ったもんね。
そこにはあったよ、僕の買ってきたプリンが。
いや、いやに美味しすぎると思ったんだ。コンビニのって、もうこんなレベルなんだすごいなぁって。
すぐ謝ろうは思ったんだ。
だが、なにぶん言い合いがヒートアップしていた時。
言おう言おうと思っても、タイミングなんて全くなかった。
しかも、あの場で言うと、2人からの矛先が全て僕に向いて、さらにめんどくさいことになりそうだった。
僕にはとてもじゃないが言えなかったよ。
本当にごめんなさい、頃合いを見計らって謝ります。
ごめんね、紫友。
2人を仲直りさせたことで、相殺にしてほしい。
あと、プリンはとても美味しかった。
明日は、プリンを買って帰るとしよう。
あと、夕飯作らないと。
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