第34回配信 僕の周りの人たちも
コラボを終えて、僕はまたいつもの日常が戻ってきた。
僕はいつも通り大学に行き、授業を受ける。
だが、僕の周りでの変化も出てきたのだった。
これまで、僕の周りの友人たちは、特にVtuberに興味がある人はいなかった。
それは、僕がVtuberが好きそうな人と友達になっていないというのもあると思う。
だって、もしVtuberが好きな人と一緒にいたら、2人のサポートをしていることがバレてしまうかもしれない。
そうすれば、2人のサインくれ、とか会わせろ、とかになってしまったら大変だ。
そのため、僕はあまりVtuberに興味がなさそうな、話に出ない様な人たちと友人関係を築いてきた。
2人のサポートをしているとバレたくない僕にとっては、とても大事なことだった。
あくまでもVtuberはVtuberとして生きている。そこを僕の存在が邪魔をしないようにしなければならない。
だが、レミーとのコラボを機に少しそれが変わってきた。
まず、
「実はVtuber好きだったんだよね」
と1人の友人が言い出した。
え?僕はその言葉に目が点になった。
うそ、今までそんなこと言ってなくなかった?
この前まで、ゲームが好きとか漫画が好きとか言ってたじゃん。
そうすると、それに続いて、
「え?俺も」
みたいなやつも出てきた。
え?嘘でしょ?
みんな隠れオタクだったってわけ?
君は小説が好きと言っていたじゃないか。
なんてことだ!
僕の衝撃とは裏腹に、みんな「え?好きだったの?」と盛り上がり、余計に仲良くなっていった。
嬉しいけどね、Vtuberが仲を取り持つものになるのは。
まぁ、そんなことをきっかけに、僕の周りでVtuberがプチブームになった。
僕としては、不本意な部分もある。
だって、Vtuberが好きなんて今まで一度も言ってこなかったのに。
だから、みんなと仲良くなれてた部分もあったのに。それなのに、急に後出しで好きだって出してくるなんて。許せないね。
まぁ、急にハマるのがVtuberでもあるとは思うけど。
みんなの話を聞いていると、みんなの好きなVtuberについて語り合っているようだった。
やはり、人気だったのはレミーだったが、それ以外にもさまざまなVtuberに皆三者三様にはまっており、その中には2人も入っていた。
え?2人のファンもいるの?
僕は少し嬉しい気持ちを抑えながら、みんなの話に耳を傾ける。
そりゃ、自慢した気持ちが湧くのももちろんある。
すごいだろ?トークもいいし、ゲームもうまいだろ?って。
だけど、僕はあくまでもVtuberに興味のないふりを続ける。
もしも、ファンであることすらバレてしまうと、いつか繋がりがあると疑われた時にごまかしがきかない可能性がある。
だから、僕は興味がないふりをする。
でも、僕は耳はきちんとみんなの方に向いており、みんなの話を聞いていた。
まぁ、ここはプラスに考えよう。
リスナーの正直な意見を聞ける場として、これからの配信に生かしていこう。
さて、どんな意見かな?
僕は、不安とウキウキが入り混じった感情で聞いていた。
まず、Vtuber好きなんだよねと言い始めた1人が話し始める。
「僕はさ、レミーが好きなんだよね。やっぱり、キャラメイク可愛いし、声も可愛い」
いや、それはわかる。
やっぱりVtuberといえばキャラメイクは大事。
顔が見てないからこその、声とマッチングしたキャラメイクとキャラ付けは欠かせない重要事項。
それに、声も大事。
声は、顔以上にVtuberの特徴になりうる。
やはり、Vtuberといえばイケボでないと、と言われるほどにVtuberにとっては大切な能力。
でも、声を変えることは容易ではないから持って生まれた才能的な部分はある。
そう考えると、レミーはVtuberをやるべくして生まれた的なところはあるよな。
と僕は密かに納得する。
すると、
「いや、ガミちゃんも結構いい声してるよ。可愛いけど、どこがドスの効いた声も出せて」
え?ガミ?嘘、そんなふうにも思ってもらえてたんだ。
僕は一瞬反応しそうになってしまい、慌てて冷静さを保つ。
多分、そのドスの効いた声はヤンデレ発動時だろうけど。
でも、ガミの声も素敵だと思ってくるなんてとても嬉しい。まるで、自分が誉められているようだ、と僕は嬉しくなる。
すると今度は、
「あー、ガミちゃん好きなのわかるわぁ。やっぱさ、ヤンデレの発言が良くない?可愛い。守ってあげたくなる」
え?嘘。まじで?ここにもヤンデレ好きがいたとは。
僕は今度は驚きで、目を見開きそうになってしまいあわてて瞬きをする。
そうかぁ、そんなふうに思ってもらえてるんだな。
よかったような、君にはガミを守ることは難しいんじゃないかなと少し不安に思うような、そんな思いに駆られる。
そんな感じで話は進んでいき、レミーや2人以外にもたくさんのVtuberの話が出てきた。
その話を聞いている中で、
「なるほど、こういう風にリスナーは思っているのか」というものや、「いや、それはちょっと考えすぎじゃない?」
というものもあったけれど、リスナーの実際の意見を余すことなく聞くことができた。
すごく参考になるなぁ、なんて。
僕は、帰り道しみじみと考える。
コラボの影響をこんな身近でも感じることができるなんて、と。
そんな嬉しいことはない。
あくまで、2人のためと思ってしたコラボがこんなにたくさんの人に影響しているなんて。
Vtuberの凄さと、2人の成長をひしひしと感じる。
だが、大学は僕の平穏の地でありたかった。
少しでも、2人のヤンデレを忘れられる、そんな地でありたかった。
はぁ、僕に安寧の地はないのか。
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