第32回配信 まさかの展開で

え?

僕はレミーの言葉がすぐには理解できない。

本物?最高?頭かちわれる?

僕は一つ一つの言葉を噛み締める。それでも、とてもじゃないが言っている意味がわからない。

レミーが言ったものとは思えない。

僕が戸惑っている間にも彼女の言葉は続く。


「やだ!もう本当今のセリフ録音しときたかったー!一生の不覚…」

「ねぇ!さっきの話、やっぱりリスナーの人たちのコメント見ての発言なの?」


とウキウキな声が聞こえてくる。

いや、なんでこんなに柔軟に受け止めることができるんだ。

そもそも、通話が繋がってただけでも気まずいのに相手の本音が聞こえてきたら、そっとしておくものだろ。

それなのに、無神経にもプライベートに踏み込んでくるどころか、2人のヤンデレにまで突っ込んでくるとは。

あ!2人はどうしてる?


僕は、ハッとし2人の方を見ると、2人は何もないかのようにSNSを見ている。

え?この状況で通常運転できる人なんているの?

ねぇ、2人の秘密バレちゃったよ!なんでそんな気にせずいられるの?


そんな僕の焦りも知らず、レミーの声ばかりがまた響く。


「嬉しい!私ね、ずっとずっと本物のヤンデレと出会いたかったの!」

「生きててよかったぁ。ねぇ、もっと話そう?」


いや、うるさいすぎるんだけど。

先ほどまでの先輩風の吹かせていていたレミーとは違い、ただのヤンデレ語りをしている人と化したレミー。

尊敬の念は薄れ、むしろ呆れてしまう。


だが、ここで僕は思い直す。

でも、バレたのがレミーでよかったのかもしれない。

今までの反応からするに、レミーはヤンデレオタク。ならばすることはただ一つ。

言いふらさないようにするだけ。

引かれるタイプじゃなくて、まだよかった。


とりあえず2人は全く気にもしていないから、僕が対応しなければならない。

はぁ、なんだかめんどくさいことになったな。

コラボだけでも疲れているのに。

僕はため息をつきながら、パソコンに近づく。


「あのー、レミーさんすみません。僕は、2人のサポートをしている立花と言います。僕がDMさせてもらってたんですけど」


と話しかける。

すると、レミーは一瞬止まり、あぁ!と言う。


「あなたが私と真面目なDMをしてくださってたマネージャー(仮)さん!初めましてー!」


いや、(仮)って何?

僕はレミーの言葉に疑問しか浮かぶことができない。

まぁ、とりあえずレミーには話すか。


そして僕は、2人はヤンデレ営業で売ってるけど、本当は実際にもヤンデレなこと、それは言わないで欲しいことを簡潔に伝えた。


すると、


「もちろん、隠しておかなければならないなら話しません。私の役目は、この世のヤンデレを守ることですから」


と、レミーは胸を張って言う。

いや、違うと思いますけど。


だが、僕は少しだけホッとした。

これまでのレミーの配信では、レミーがヤンデレが好きだなんて言うことは伝わっていなかった。

だから、あれだけの発言をしていても、本当にヤンデレ好きなのか信じられない部分もどこかであった。

だけど、彼女は一度も2人に対して否定的な言葉を使わない。

それだけでも、彼女を信用するには十分だった。


僕は、レミーにバレたことで焦る気持ちもあったが、どこか嬉しい気持ちもあった。

だって、1人味方ができたってことだから。

今までこの秘密を知るのは、僕たち3人だけだった。

秘密を守るには、人数が少ない方がいいが、何かあった時、2人を守れる人数が多いにこしたことはない。

あぁ、2人を守ってくれる存在が増えた。それも、Vtuberに。


そんな感動に浸っている僕に、


「ねぇちょっと龍ちゃん!いつまで喋ってるの?」


と紫友が急に話しかけてくる。

いや、今すごくいいところなんだけど。君たちの味方が現れたんだよ?

あと、さっきまで興味なさそうだったでしょ。

いきなり話しかけてこないで。

あと、この人が一方的に話してるだけだし。

そう思っていると蒼も、


「本当だよ。今日は僕らと夜を過ごすんだろ?もうレミーさんとの通話はきってよ」


と言う。

いや、失礼だってだから。

さすがに、ヤンデレが好きだって言ったって、こんなことを言われたら、レミーさんだって腹立たしいはず。

不安に思っていると、


「きゃー!もっと言ってもっと!」


というレミーのはしゃいだ声が聞こえてきた。

いや、もう無理。

そう思っていると、次のパンチが飛んでくる。


「ねぇ、龍ちゃんのこと狙っても無駄だから。龍ちゃんは私たちのことだけ好きだから。あんたなんて好きじゃないんだからね」


と紫友がいう。

わー!何言ってんだ!

失礼なことを言うな!そう思い、僕が紫友の口を塞ぐと、


「本当だよ。Vtuberとして人気だからって龍を狙うなんて、身の程知らずすぎるね」


いや、おま、お前も何言ってんだ!兄なら止めろー!

僕が慌てて蒼の口を塞ごうと思うと、


「やだ!私龍さんには興味ないから大丈夫。私が興味あるのは、2人だけだから!」


と楽しそうに言うレミー。

そして、


「はぁ?龍ちゃんに興味ないとかどう言うこと?調子乗らないでよね」


「龍に興味ない人なんてこの世にいるの?まぁ興味あっても許さないけど」


「やだ!もっとヤンデレちょうだい!」


いや、この世の地獄かここは。

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