第31回配信 (レミー目線)生きててよかったってこういうこと!
チュンチュンチュン。
鳥の鳴き声で目が覚める。
なんて爽やかな朝だろうか。
と言いつつ、私は一睡もできなかった。
でも私はとても元気。だって、今日は2人とのコラボの日。
何日も寝なくたって、元気かつ爽やかにコラボできる。
私はその日、他にもするべきことがあった気もするし、なかった気もするが、とりあえず楽しみすぎて全く覚えていない。
気がついたら、コラボが始まる2時間前だった。
とうとう、コラボが始まる。
私は胸を弾ませ、2人と回線を繋ぐ。
まず私はジャブとして、2人と配信前に話そうという企画を持ち出した。
プライベートなら、2人の本心が知れるに違いない、と思ったからだ。
まぁ、もしも配信前から2人のヤンデレが偽物だったとわかったら、私はショックでその後のコラボができないかもしれないけれど、そんなことは関係ない。
ヤンデレのセリフさえあれば、私は頑張れる。
だが、ここで私の計算違いなことが起こる。
2人は思ったよりも人見知りで、ヤンデレが本物かどうかを知る前に、仲良くなることで配信前の時間を使ってしまったのだった。
思っていたよりも、人見知りだった。
私、結構打ち解けられやすいタイプだと思っていたんだけど、2人の壁は厚かった。
最初はもうどうしようかと思ったよ。
だが、なんとか配信が始まる午後9時には、コラボ配信ができるほどの仲にはなれた。
普通は、初対面ですーみたいなところも配信してもそれはそれでリスナーさんウケするものだけど。
今回のは無理だろうな、よかったよ先にやっといて。
はぁ、とうとうコラボが始まる。
私は緊張で胸の鼓動が速くなるのを感じる。
コラボを何回したからと言ったって、初めては慣れるものではないと私は思う。
やっぱり、初めてってことは、相手のリズムは分からず、関係性もまだ脆い。
その中で、顔も見えずコラボなんてうまくいく自信がある方がおかしい。
でも、これを乗り越えれば、2人ともっと仲良く素敵な関係を築けるような気がするのだ。
大丈夫、とりあえず仲良くはなれたし、コラボはうまくいくはず。
それに、2人は本物のヤンデレよ。きっと。
私は、自分にそう唱えながら、配信を開始する。
さぁ、勝負の始まり。
私の恒例の挨拶から始まった配信は、なんとも至福の時間であった。
2人が、
「あー!やっぱだめかぁ」とか、「あ!レミーさんナイスー!」
とかいうたびに、あぁ本当にコラボしてるんだなぁと実感した。
だって、推しが私の名前を呼んでくれるっていう奇跡。この奇跡噛み締めていきたいよね。
それに、
「はぁ、だめだ。死にたい」とか、「ねぇ!ちゃんと私のこと見てる?」
とかいうたびに鼻血が出そうだった。
やばい、本当に言うんだ。そう言うこと。しかも、きっかけがあまりなくてもさらっと出てくる。
え?それきっかけだったの?みたいな。
あぁ、生ヤンデレ。こんなにすらすら出てくるなんて、天才以外の何者でもない。
私は、2人の魅力に魅了され、配信中何度も息を噛み締めた。
そして、私が噛み締めている間に、配信は終了に近づいてしまった。
え?嘘でしょう?まだ私もっと話したいし、聞きたいんだけど!
まだあと100時間ぐらいできるけど?
でも、そんな自分本位のことは言えない。当たり前だけどね。
だって、私はコラボにおける先輩。きちんと自分から言わないと。
そして、私の挨拶を境に配信は終了へと向かう。
あぁ、結局ヤンデレかどうかなんてわからなかった。
2時間じゃ全くわからなかった。2時間きっちり2人の魅力を再確認しただけだった。
だけど、私はまだ諦めない。
だって、まだ配信後があるでしょう?
2人がすぐ終わろうとしても絶対に終わらせない。
私が2人の本心にもっと迫るわ!
だが、配信後も特に何もあるわけでもなく、ただただ雑談をしただけ。
ただ仲良くなっただけだった。
いや、まぁ大事だけどね。仲良くなることも。
それに、仲良くなれば次の配信も誘いやすくなるし。
何度もコラボを重ねれば、きっと2人は私に心を開いて本心を見せてくれるはず。
はぁ、今日は色々ならことがあったなぁ。楽しかったけど、どこか虚無感をつきまとう。
1つの大きな行事が終わってしまったようだ。
そんなことを考えていた私が通話を切ろうとすると、
「あぁ…やった!あきちゃん…」
というカガさんの声が聞こえてきた。
あれ?まだ通話相手も繋がってたのか。教えてあげないと。
そそて、私が話しかけようとすると、
「大好き、もうみんないないと生きていけない」
というガミさんの声が聞こえてくる。
え?今なんて?みんないないと生きていけないって言った?
私は、頭が混乱し、整理できない。
あれ?もう配信って終わってるはずだよね。なのに、なんでこんなセリフ言ってるんだ?
私が混乱している間にも2人はまだまだ話をしている。
「ねぇ、お兄ちゃん!ルリちゃんはこの時間、違う配信見てるんだけど。ありえない」
「えっ、僕のプレイ今日ちょっと下手だったって。やだ、もう生きていけない」
ねぇ!このセリフ、ヤンデレでなければ出ないセリフじゃない?
なんて素晴らしいの?2人は本物のヤンデレ。
配信外でもこの調子だったんだ。
あぁ、なんてこと!素敵すぎてなんとも言えない。
しかも、営業ですらない!
あぁ、生まれてきてよかった。
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