第29回配信(レミー目線)ねぇ、あなた達本物?

私は毎日、配信を行う傍らヤンデレ探しに没頭した。

ヤンデレ探しとは、まず重めの発言をしているVtuberたちを、チェックすることから始まる。

「私だけを見ててね」とか、「他の人見たら許さない」とかその辺がキーワード。

また、配信だけでなく、つぶやきやコラボ時の様子も見ながら、本物のヤンデレがそれとも営業のヤンデレかを確かめるのも重要。

それだけ見るだけでも、結構ヤンデレかどうかは見極めることができる。


ヤンデレ探しをしていく上で、私自身もVtuberになっていたのは、とても効率が良かった。

本当にヤンデレかどうかなんて、配信だけを見ていても分からないことが多い。

ヤンデレ可動化の線引きはできるが、本物と営業の見分けはやはり、直接出ないと厳しい。

だから、できる限り直接会える、コラボできる人として、自分がVtuberになったことにはとても意味があった。


その点、私は大手事務所に所属していることもコラボはしやすい、ヤンデレを見つけやすい状況であった。

コラボすれば、その人の配信外の様子がわかるし、プライベートトークもできる。

ヤンデレを炙り出すには絶好の機会となるのだった。


これまでわたしは沢山のVtuberとコラボし、営業のヤンデレを見破ってきた。

でも、別にその人のヤンデレが営業だったからって、何をするわけではない。

ヤンデレ営業をやめろと言うわけでもなければ、逆にヤンデレじゃないんですよこの人は、とリスナーに言うわけでもない。

その人の営業戦略な訳だから、私が口を出すものでもないのだ。

言う意味もないし。所詮、殆どのリスナーはヤンデレは営業だと思って見ているのだから。


ただその人の意外な点、いわゆるギャップと称して、ヤンデレとは似ても似つかぬことを明かす、ということはする。

そうすることで、本物のヤンデレなのではないか?と信じている、昔の私のような人を救うのことができるのだ。

この人は本物ではないよ、と暗に伝えることができると言うこと。

私にできるのはせいぜいそれぐらいだ。


そんなことをしながら、コラボをしまくっていたら、私自身のVtubeも結構有名になっていった。

そして、気づけばトップVtuberと言われるまでになっていたのだ。

ヤンデレの副産物が結構大きいものとしてわたしに返ってきた。


だが、それだけ有名になっても私は営業ではない、本物のヤンデレを見つけることはできなかった。

なんで?本物のヤンデレっていないの?

ヤンデレって二次元にしかいないの?

なぜわたしはVtuberを続けているのか。

私は、絶望の淵に立たされ、Vtuberを続ける意味を見失いかけていた。


そんな時、私は1つの動画に出会った。

それは、ただゲームをしているだけの配信だった。別に珍しくもなく、特に秀でて上手いわけでもなかった。

だが、どこか目が離せず、私は夢中になって見てしまった。

なぜ?なぜ目が離せないんだ?


そして、私は気づいた。なぜ、自分がここまでこの2人に夢中になっているのかを。

そう、2人の言葉の節々になぜか病みが醸し出されていたのだ。

そして、その病みに私のヤンデレレーダーが引っかかったのだ。


私は夢中になって、その2人について調べた。

2人は新進気鋭のVtuber。

登録者数はまだ1万人ほどだが、ヤンデレなセリフでリスナー達を魅了しているらしい。

また、2人は配信内はもちろん、配信外でもコメントやSNSを細かくチェックしていると密かに話題となっていたのだ。


え?もう絶対これ本物のヤンデレじゃん!

配信外でもチェックとか、普通営業ならできないんだから。

それに、何気ない発言からも病みを感じれるなんて、これはもう本物しかあり得ない。


絶対そうだわ。本物。やっと出会えたのでは?

私は興奮し、手が震える。

やばい、今回は本物の可能性ある。

これは調査の必要アリでしょ。


私はその日から、2人の配信を見漁った。

そりゃあもう、全ての配信の全てのセリフを暗記できるほどに。

そして、2人のつぶやきもSNSも全てチェックした。


だが、私はすぐに接触することはしなかった。

だって、少ないからこそできる芸当だとも言えたから。


だが、彼女たちは10万人にいこうとも、30万人にいこうとも、これまでの姿勢を崩さずなおかつコメントなどに対する反応も忘れていなかった。

それどころか、より病みは増し、ヤンデレ度は高くなっていったのだ。


この2人こそ本物だ。

この2人が本物でなければ、誰が本物のヤンデレだと言うのだ。

これもう、最終審査をするしかない。

私は2人が登録者50万人を突破したところで、コラボの連絡を送ったのだった。

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