第28回配信(レミー目線)私はヤンデレを愛している

「じゃあ、レミーの配信今日はここまで!みんないい夢見てねー」


やっと終わった。

わたしはホッと息をつく。

今日の配信は長かった。間違えたな、あそこはもだと短くできたし効率良くできたな。

そんな1人反省会が自然と始まる。


だけど、今日は本当に疲れた。頑張ったわ、本当に。

そんな疲れに効くのはこれでしょ、とばかりに私は秘密兵器を取り出した。


はぁ、今日も尊い。

こんなに尊いものがこの世にあるのか?いや、無い。

思わず反語が出てしまうほどに素晴らしいヤンデレに今日は出会ってしまった。

私は、感動に打ちひしがれながらそっと本を閉じる。


今回のはよかったなぁ。最初はあんまり魅力的じゃ無いかな?と思わせておきながらの、急なヤンデレルート。

主人公を好きになってからの、愛という名のストーカー行為が別格に良い。

あぁ、ヤンデレに埋もれて死にたい。


私はレミーこと、高橋玲美。Vtuberをやっていて、登録者数は100万人を突破している、自分で言うのもなんだが、中々の有名Vtuber。

知ってる?知らなくても別にいいよ。これから知ってくれたら。


まぁ、そんな私ですが、ここまででわかったかもしれないけど、私は重度のヤンデレオタク。

小学生の時に出会ったヤンデレという名の天使に魅了され、そこから私はヤンデレしか愛せない体になってしまった。

ヤンデレが出ている漫画を読み漁り、夢にまでヤンデレが出てくるという生活。

周りに理解されなくても、私だけが知る至福の時間を過ごして生きてきた。


そんなふうに育ったものだから、成長するにつれて、二次元だけでなく、現実世界でもヤンデレを探したくなってしまった私は、ヤンデレ探しの旅へと出た。

だが、なかなか現実世界にはいないもの。


そんな時、私が出会ったのはちょっと重めの発言をすることで話題を呼んでいたVtuberだった。


「私だけを見ててね」

「もう、私のことだけ好きでいてよ」


はー?可愛過ぎるんだが。これはヤンデレでしょ。

私は怒りを覚えるほどに、魅了された。

そう、はじめて出会ったヤンデレVtuberは、私を一気に魅了したのだ。

やっぱりいるんだ、ヤンデレって。Vtuberといえど、配信している人が話さなければこの人は動かない。

つまり、現実にこのヤンデレ発言をしている人がいるってことでしょ?

やば、今まで生きてきてよかった。

私はそのVtuberにどハマりし、ずっとその人の配信を見続けていた。


だが、こんな幸せな時間はそうそう長くは続かなかった。

私は、その日も楽しみにその人のVtubeを見ていた。

あぁ、今日も病みが尊いな。この人のおかげで私は生きていける。

そんなふうな思いで見ていた。


はぁ、もう終わっちゃった。過去の配信でもみよっかなぁ。

配信が終わり、そんなふうに考えていた私に飛び込んできたのは、なんと切り忘れたVtuberの発言だった。


なんともまぁ、配信の切り忘れにより、Vtuberの人の素の部分が生配信されてしまったのだ。

え?何言ってんの?なんで?

私は理解が追いつかなかった。


だが、結果として、そのVtuberはその事件により好感度をグーンと上げて一気に有名となった。

なんでって?

実はその素の部分というのが、ツンデレだったからだ。

それはもう、ヤンデレが営業であったことよりも、本物のツンデレだったことにみんな歓喜の嵐。

その人がヤンデレであると装っていたことなど、みんなにとってはどうでも良いことだったのだ。


だが、皆が湧く中、私だけはショックで立ち直れなかった。

え?嘘でしょう?

あんなに私だけをって言ってたのに、みんな好きでいてねって言ってたのに。

あの言葉は嘘だったの?

私はショックで三日三晩寝込んだ。


だが、私が寝込んでも、Vtuberのヤンデレが営業であっても時間は流れていく。

そして、立ち直れない私にみんな言うのだ。

ヤンデレなんて営業でしかないでしょって。

むしろ、営業以外でヤンデレである必要性ある?って。


だから、わたしはVtuberになった。

偽物のヤンデレを暴くために、私のような被害者をこれ以上増やさないために。

そして、ヤンデレとしてのプライドを持った、本物のヤンデレに出会うために。


だが、私もVtuberをやっていく上で、過去に私を魅了したVtuberの人の気持ちも理解できるようになった。

Vtuberというのはキャラが命。

そして、なんとしても目立つこと。

その中で考えた苦肉の策であったに違いないって。


でも別に私だって、はなからヤンデレ営業を否定しているわけじゃない。

ヤンデレがあまり好きではない人でも、Vtuberという現実と2次元の狭間の人たちがやってくれることで、よりヤンデレが身近になり、ヤンデレを好きになる人だって増えるには違いない。

だから、ヤンデレ界を発展させてくれるっていう意味では、営業のヤンデレも、100歩譲って我慢する。ちゃんとやってくれるなら。


でも、ならちゃんと騙してほしいの。

営業かもしれないけど、もしかしたら現実でもヤンデレなんじゃないの?って見ている人たちに想像させてほしいの。

それこそが、あなたたちの役目だから。

わかる?わからないならやらないで。

それくらいの覚悟をもってヤンデレを扱ってほしいの。

ヤンデレを侮辱するのは私が許さない。

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