第25回配信 今日は記念すべき初コラボ!
ふっ。
僕は、目覚ましよりも早く目を覚ます。
時計を見ると、まだ5時30分。
まだ眠れるこの時間だが、僕はもうバッチリ目が覚めている。二度寝などできる余裕はない。
あぁ、ついに今日なんだな。
僕は目を覚ましても、まだ夢の中にいるような気分を感じた。
そう、今日はなんと、あのレミーとの記念すべき初コラボを行う日なのだ。
僕らはこの1ヶ月、できる限りの準備をおこなった。
実はレミーの都合上、思ったよりも早いコラボとなり、はっきり言って余裕は全くなかった。
はじめてのコラボで右も左もわからない僕らをレミーは丁寧に教えてくれ、その上で企画も一緒に考えてくれた。
だが、準備時間が短かった割には、なんとかコラボができる準備は整い、宣伝も行うことができた。よかった、本当に間に合わないかと思ったもんね。
コラボを発表した時の反響ももちろんすごかった。
トップVtuberとのコラボであることはもちろん、2人にとってはじめてのコラボということで、予想以上に反響があった。
つぶやきはトレンド入りし、通常の木曜配信の視聴者数も増えるなど、大きな影響があった。
だが、
『レミーとコラボ??』
『コラボ初じゃん!』
『見るしかないやん!』
といった肯定的なコメントがある一方で、
『いや、レミーとのコラボとか霞むでしょ』
『ヤンデレとコラボとかやめてほしい』
といった否定的な意見も少なからずあった。
悲しいことではあるが、これは仕方ないことだ。
ヤンデレなんて、限られた需要の中で活躍している2人。
ヤンデレとは2次元でも好みを分けるジャンルだから、そりゃあアンチも湧きやすい。
それに、相手はトップVtuber。そんな器でもないくせに、と思う人が多かったとしても仕方がない。
だが、2人だってこの数年、ただ遊んでいたわけではない。
どうすればみんなに見てもらえるのか、楽しんでもらえるのか、と考えてやってきてついにこのチャンスを掴んだんだ。
そうやすやすと、アンチをのさばらせてはおかない。
だけどこの意見が2人には目に入らないように、僕は細心の注意を払った。
もし目に入れば、2人はこんなもう引くに引けない時期でもコラボしたくないと言い出すかもしれない。
だから、頑張った。まぁ、2人が独自に調べていたらもう手には負えないけれど。
それはともかく、2人の準備ももちろん完璧だ。
30分ぐらいなら、コメントやつぶやきを見なくても耐えられるようになったし、会話のパターンも完璧。
2人もこのコラボのために努力を行ったのだ。
他の人が行うような努力の方向ではないけれど。
あとは、突発ヤンデレに備えるだけ。
さぁ、準備は万端だぞ。
その日の僕は、大学の授業はもちろん、友人の話も耳には入らない。
別に今日ぐらいサボってもよかったのだが、普段通りに生活をしないともはや頭がおかしくなってしまうんじゃないかという精神状態。
そんな状態で、なんとか授業を終え、すぐにマンションへと向かう。
僕がマンションに入ると、2人はいつもどおりゲームをしていた。
いや、いつもどおりと思ったが、いつもと違うところが見えてくる。
ゲームに身が入っていないし、いつもよりも部屋が綺麗。
2人だって、緊張しているのだ。
そりゃそうだ。でも大丈夫、僕が2人らしくコラボできるようサポートするから。
午後7時。
コラボ配信開始前に打ち合わせと、軽い顔合わせを兼ねて、とこの時間から繋げようとレミーからの提案があったのだ。
僕は準備をし、2人も促す。
そして、
『はじめましてー!レミーと申します。今日はよろしくお願いします!』
あ、本当に存在するんだ。
僕が率直に思ったのはそこだった。
配信を見ていても、連絡をとっていても、どこか空想的なように捉えていた。
だが、声と共に動く姿を見るだけで同じ時間を生きていることを実感する。
可愛らしいキャラメイクとコロコロと変わる表情、かわいらしくもどこか妖艶な声。
全てにおいて、一瞬で魅了される。
これこそが、トップVtuberのもつオーラ。
僕は圧倒されてしまう。
だが、2人も負けてはいない。
『はじめまして!カガです』
『ガミですー!今日はよろしくお願いします」
と元気いっぱいの挨拶。
顔が見えていないからこそ、第一印象は声で決まるとも言える。
いつも以上に、さわやかさがあった2人の声に、きっとレミーも元気が出たに違いない。
午後9時まで、僕らは雑談と今日のゲームのルールの確認や、どんなふうに協力していくか、と話をおこなっていく。
僕が用意した台本、もといカンニングペーパーに沿って、2人はレミーと穏やかな会話を行う。
よかった、用意しておいて。
そして、時刻は9時をつげる。
あぁ、とうとう始まるのか。
みんな見てくれるだろうか、もし見てくれる人がいなかったら?
僕は今までにないほどに緊張してきている。
今日だけは、2人がいつも緊張し、落ち着かないのも理解できる。
はぁ、落ち着け。
緊張しているのは2人だ。僕はあくまでサポートするだけ。
さぁ、行こう。新たなる世界へ。
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