第24回配信(蒼目線) 決戦は金曜日

「コラボするって決まったよー!」


龍は、とてもうれしそうにマンションに入ってきた。

コラボの話が来てからというもの、龍はウキウキワクワク。いつでも浮き足立っているような感じ。

そんな龍を見るのは久しぶりだ。

だが、僕は全く嬉しくはない。


レミーからコラボの誘いが来た時、僕はついに恐れていたことが起こってしまったと思った。

はぁこのコラボは回避できない、と。


僕らは今まで全くコラボをしたことがなかった。

それは別に、僕らが他の人と話したくないとか、緊張するからとかそういうことが理由ではない。

龍は、僕らが初対面の人と話せないだろう、そう思ってコラボの誘いが来ても、やんわりと断ってくれていた。


でも、実際は違う。

確かに、他の人と話すことは緊張するし、できればしたいことではない。

あの日のことを思い出すきっかけにもなりやすいし、できればずっと3人だけでいい。

でも、これからVtuberとしてやっていくのに必要だというならば、龍が言うなら、僕だってやらないわけではないのだ。


だが、コラボするってことは龍と他のVtuberが関わりができてしまうってことでしょう?

もしも、龍が相手の意外な面とか知って、コラボしたVtuberを好きになったらどうする?

もしも、他のVtuberが龍のことを気に入ったらどうする?


そうしたら、僕らは見捨てられるかもしれない。

こんなめんどくさい僕らのことなんて、機会さえあればいつだって捨てられる。

そんなの絶対に耐えられない。

そんな懸念の芽は、根絶やしにしておく必要がある。

だから、龍にできる限り他のVtuberとの関わりを持たれないよう、コラボをしてこなかったのだ。

龍は知らなかっただろうけれど。

龍は優しいからそんなことには気づかない。


だが、今回は訳が違う。

それは別に、レミーがトップVtuberだからとかそういうことではない。

今回断れない龍はただ一つ。

龍がレミーのことを好きだからだ。


龍が興味もないVtuberだったら、龍だってあまり罪悪感を抱かずに断ることができる。

でも、今回は龍が好きなVtuber。

龍は一言も言わないが、そんなことは龍を見ていればわかる。

好きなVtuberなのに断るなんて、龍にとっては耐えられないことだろう。

断って、悲しい思いを龍にさせることはできなかった。

たとえ、レミーに会わなければならなかったとしても。


だが、そんな思いを加味しても、そんな素直に受け入れることはできない。

なんでそんな嬉しそうなの?そんなにレミーに会いたいの?

僕たちといるよりも嬉しそうなことある?

僕たちでは、龍は楽しくなることができないの?

そんな感情が溢れ出そうになった。


しかし、僕がそんな思いに駆られている間に、龍はコラボ嬉しくないの?といったような困った顔をする。

僕は慌てて、


「やった!よかったね」


と僕は言った。

危ない、龍に悲しい顔をさせるところだった。

そんなことは絶対にあってはならない。

そんなことは誰にもさせない。


コラボまでの期間、龍はレミーと連絡を取り合い、コラボ時の内容や注意点について固めいてた。

龍は僕らの前では絶対にレミーと連絡を取らない。

龍が連絡をわざわざ僕らの前では取らないことで、より想像を掻き立てられる。

はぁ、堂々と連絡すればいいのに。

なんで隠そうとするのか。

隠そうとされればされるほど、耐えられないというのに。


そして僕らはというと、龍に言われた通りに備えるのみ。

配信後すぐにコメントやSNSを見ない、きちんと会話する。

そんなことを心がけて行動するも、やはりなれないことであるが故に思い通りにすることができない。

すぐに見ないと不安になるし、みんなが今何を見ているかが気になる。

そのせいで、自分の精神が不安定になるのを感じる。


だが、僕には不安定になっている場合ではなかった。

僕には、もう一つミッションがあるのだ。

それは、レミーの配信を見て龍が何に魅力を感じているのかを分析することだ。


別にこれは、龍がレミーを好きだと知った時からしていたことではある。

だって、見ないといけないでしょ。

僕ら以外に龍を魅了している存在なんて。

だから、僕は余すことなくレミーの配信を見ていた。

まぁ、別にその時も理解はできなかったけどね。

Vtuberとして凄い人ではあるけれど。

だが、今一度見ることでより知ることができるに違いないのだ。

龍がレミーを好きな理由を。


だが、それは想像以上に大変。

嫉妬の炎が牙を剥き、冷静に見ることなどもちろんできない。

そのため、精神が不安定にもなる。

はぁ、なんで僕ら以外のVtuberを見るんだ、龍。

僕らだけを見ていればいいのに。


龍はそう言ったが、僕は見るに決まっていた。

血反吐を吐こうとも見るよ。

だって、相手の戦況を見ないと対処することが出にない。

龍にとってどこが魅力的なのか、僕らと何が違うのか。

それを知らずして、相手に会うなど丸腰すぎて馬鹿野郎だね。


負けない。まってろ。

誰が本当に龍を魅了しているか分からせてあげるから。

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