第22回配信 コラボのための準備を

さて、返事をしたはいいものの、別にこれでコラボが決定したわけではもちろんない。

1週間返事は待てると言うだけで、返事の時期や内容次第では、相手もコラボを白紙に戻す可能性だって十分にある。

1週間待たせたんだから、それなりのリスクはあるだろう。

きっと休みも少ないだろうし。

それに、相手は人気Vtuber。コラボ相手なんて探さずとも、ごまんといる。

コラボすれば相手は彼女と共に配信できるんだから、そりゃコラボ相手にも事欠かないだろうし。


一方こちらは、コラボ初心者。

人気も知名度も彼女に比べたらまだまだ。

そんな僕らとコラボしてくれるというんだから、断られたって誘われただけでも名誉だなと思わなければ。

だが、もし本当にコラボできるなら、コラボが多く慣れている相手からの提案が多くなるだろう。

それに、相手はこちらよりも有名。きっと、こちらは相当な要望でも飲まざるを得ないだろう。

どうしよう無茶なお願いとかされたら、と少し不安になる。

いかんせん、コラボなどしたことがないものだから、想像もつかない。


だが、こちらだって、要望はある。

なんでもハイハイと聞いていては、なんでも聞いてくれると思ってこちらに無理難題を挑んでくる可能性だってある。

まぁ、あんまりないと思うけど。


要望といいつつも、こちらからはただの一つだけ。

それは、画面を介してのコラボであるということ。

つまり、直接は会わないってことね。

まぁ、初対面から会ってコラボっていう人もそうそういないとは思うけど、もしそう言われた時のための布石。


2人が快い返事だったからと言って、初対面の人と密室でコラボなんて厳しいに違いない。

画面を介してなら、なんとか僕もサポートできるし、最悪何かあっても回線のせいにできる。というちょっと姑息な案も立てている。

あと、大事なのはヤンデレバレもしにくいということ。

コラボで緊張しているのはむしろこっち。


彼女は現在、所属事務所の2周年ということで、そのイベントに駆り出されており、とても忙しそうだ。

そんな中でもぼくたちとコラボしてくれようというのだから、感謝だ。

これは凄いことであると同時に、出来るだけ彼女の負担にならないようにしなくてはならない。

そんな使命感に駆られる。

できる限りの策はこちらで練っておかなくてはならないだろう。


そんなこんなで、第2回目のコラボ緊急会議が今日も開かれる。

2人もさすがにこう連日だと、僕に怒られるとは思っていないのか、素直に集まる。

そして、


「まず、コラボすることになったら、どういうコラボがしたい?」


と僕が議題を投げかける。

2人の意見をしっかり聞いておいて、案を聞かれた時にすぐに答えられるようにしておかなければ、という僕の考え。

すぐに蒼が手を挙げる。


「はーい!ゲーム配信がいいと思いますー」


ちょっとおちゃらけて、生徒風にいうのが少しイラッとする。

そういうおちゃらけ感は今はいいから。

だが、まともな意見。

ゲームなら2人も得意だし、あまり緊張せずに初コラボも行うことができるだろう。

それに、ゲームは相手も得意分野。きっと提案しても、快く引き受けてくれるだろう。

だとしたらどんなゲーム?対戦系か協力系か、、


そんなことを考えていると、


「はいはい!仲良し雑談がいいと思いまーす。龍先生ー!」


紫友はやる気がなさそうにしていたくせに、はっきりふざけてきた。だいぶイラッとする。

そして、その案は却下。

絶対に2人には無理。

初対面の人と話せるわけないのにそんなことを提案しないでくれ。


会議と言いつつ、蒼としか真面目には話し合えない時間は、日が暮れるまで続いた。


そして、僕らが出した結論。

それは、やっぱりゲーム配信かなっていう。

いや、話し合わなくてもほとんど出ていた結論ではあったと言えるが、気にしない。

話し合うことに意味があるのだ。

そして、協力系がいいかなっていう結論に至った。

レミーが視聴者と協力しながらする配信が多いことと、協力系なら2人も話しやすいだろうということで。


よし、これで相手からの返答があればいつでも提案できる準備は整った。

あとは、今から2人には備えといてもらうだけ。


備えといてもらうというのはもちろん、2人のヤンデレバレしないようにすること。

これが最重要課題だから。

まず、もうコラボするまでは、配信後にすぐにコメントやSNSを見ることをやめてもらう。

きっと、本番では終了後に会話をする時間があるだろうし、そんな時にコメント見ながらなんてでいない。

我慢する力をつけないと。


あとは、リスナーに愛を求めすぎないような営業っぽい発言しかしないようにしてもらわないと。

ヤンデレすぎなければ、大丈夫。それしかチャームポイントはないんだから。

あと、僕のやめての合図でしっかりやめられるかどうか。

これは、僕にもかかっていると言えるけど。


あとは、初対面の人と話せるようなはじめまして返答集を作っておくことにした。

こう言われた時はこういう返し、みたいな。

いわゆるカンニングペーパーってやつだね。

これがあればとりあえず安心でしょう。


あぁ、コラボ楽しみだな。

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