第21回配信(紫友目線)今日は私の話をするね聞かないわけないよね?

ふぅ、今日も疲れた。

いつもの配信を終えると、私はほっと息をつく。

今週も無事、乗り切ることができた。

何度やっても慣れることはない。


だけど、息をついている暇もなく、私にはやることがある。

いつものように私はパソコンを開く。

それはもちろん、みんなの反応を見ること。

これは重要かつ欠かせないこと。

ということで、私は配信が終わると早々に、お兄ちゃんと役割分担をし、コメントやつぶやきをみる。


『ガミちゃんまじ可愛い』

『2人見てるだけで頑張れる』

『ミラーツインズ大好き』


よかった、今日もこれでよかったんだ。

私はほっと胸を撫で下ろす。

私たちははっきり言って、龍ちゃんの言う通りに活動しているだけ。

自分達以外のVtuberなんてほとんど見たことがない。

だから、私にはどうしたらいいのか、何なら喜んでくれるのかもあまりよくわからない。

どんなことをしたら好きになってくれるの?

私のどんなところが好き?ってね。


だから、リスナーのみんなの意見は参考になるし、ありがたい。

本当の意見が知りたくて、みんなのいろんなアカウントを探してみてしまう。

どうしたらもっと好きになってくれるか、そんなことばかり。

あと、みんながどんな人や物がに好きなのか、それも気になって仕方がない。

だって、その真似をしたら私のこともっと好きになってくれるでしょう?

しょうがないよね、気になるんだもん。


それと、もう一つ。私がみんなの感想を見る理由がある。


それは、じっとして何もしていない時間があると、ふとあの日のことが思い出されることがあるからだ。


ふと思い出した時に、胸が冷えるような過去に引き戻されるようなそんな感覚に陥る。

なんで何年も経ってもまだ思い出されるのか。私はなぜ進むことができないのか。そんな思いで頭が動かなくなってしまうことがある。


だから、私は無意識にみてしまう。

自分達を好きな人たちがいることを知ること。

それだけで私は安心できる。

私はまだ頑張れる、そう思える。



「今日は緊急会議をするぞ」


なに?

急に龍ちゃんは真剣な顔でマンションにくると、そんなことを言った。

何?私たちを叱るつもり?

いつも、会議っていうと私たちに対する文句ばかり。

コメントをそんなに見るな、SNSばっかり監視するなって。

いいじゃん、見ても減るもんじゃないしって私たちは返し、言い合いになるのがいつもの流れ。

でも別に、今回は何も叱られるようなことしてないけど。


そんなことを思いながら、席に座ると、いつになく龍ちゃんは真剣な顔をしている。

何?やなんだけど。真剣な顔ってドキドキするからやだ。嫌なこと言われると思うと不安になる。

私の心拍数が上がるのがわかる。

何?もしかして、もう僕は辞めるとか言わないよね?

もう嫌になったとか言わないよね?

絶対にそんなことさせないから。


だけど、龍ちゃんの話は私が思っていたものとは違う話をする。


「この間、レミーさんからのコラボの話があったけど、2人は実際どうしたい?僕としては、コラボすると…」


と、コラボのメリットとデメリット、龍ちゃんの思いを話す。

だが、私の耳にはそんな言葉入ってこない。


あぁ、よかった。その話か、とほっとしたのも束の間。

ん?レミーとのコラボの話?まだ続いてたのか。

もうてっきり終わっていたのかと。

速攻で返信すると思っていた。YESと。

だって、龍ちゃんレミー好きじゃん。


知らないと思っているの?

私は龍ちゃんに問いかけたい気持ちでいっぱいだ。

レミーって龍ちゃんの好きなVtuberじゃない。

そんなのコラボする一択じゃない。

私たち、龍ちゃんの言うことなら全部聞くよ。

だったら、コラボすればいいじゃない。

そうしたら関わりも持てるよ?


でも、龍ちゃんは私たちの前でレミーさんが好きだなんて絶対に言わない。

私たちの前で動画なんて見ないし、名前も出さない。

でもわかる。龍ちゃんの携帯で「れ」って打ったら、2.3個目にレミーって出てくるし、おすすめ動画にも出てくるの見たことあるし。

でもわかってるよ?

言わないところはいいところだとは思うけど、言わないからって私たちが知らないわけじゃないのよ?


でも、もしかしたら龍ちゃんはいい人だからレミーと関わりが持てるなんて思っていないかも知れない。

単純に、コラボしたら私たちがもっと多くの人に知られるからって思ってくれているのかも知れないね。


そんなことを考えている間にも、龍ちゃんは熱弁している。

でも、私はただ嫉妬するだけの女じゃないの。

ただ嫉妬する人ならきっと、コラボしないって言うでしょうね。

だって、会わせたくないもの。


でも、私は絶対にコラボしてみせる。

何があってもコラボしてみせる。

だって、好きな人が好きな人なんて、ちゃんと見て採点してあげないとね。

私、優しいからきちんと見てあげる。

その上で気づかせてあげるね。誰が一番龍ちゃんを好きなのか。


でも、勘違いしないでほしい。

私たちの絆は恋とかそんな生優しいものでは表せないから。

そんないつか終わるようなものと一緒にしないでほしい。

私たちは一生一緒なわけ。一連托生ってやつ。

わかる?

私たちの龍ちゃんなんだから。

誰にも渡さない。


だから、私は言った。


「龍ちゃんは心配してくれてるのかも知れないけど、大丈夫だよ」


ってね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る