第20回配信 2人は成長していた!
僕が悩みに悩んでいる間に、とうとう1週間が経とうとしていた。
もちろん、僕は1週間も返事を放置していたわけではない。
放置するなんて、できるはずがない。
失礼すぎるし、恐れ多い。
僕だって、常識はある。
そのため、
『検討させていただきたいのですが、期限はありますか』
といった内容を、できるだけ丁寧にすぐに返信した。
考えるにしたって、一度は返事をしておかないと、もしかしたら無かったことにされてしまうかも知れないし。
返信した一方で、僕はもしかしたら、もう返事はもらえないんじゃないかと、不安を抱いていた。
だって、快諾の返事ではなく、むしろ待たせる内容。
知られてないくせに偉そうな!って思われたらどうしよう、コラボしないなんて有り得ない!
そんなふうに言われたらどうしよう、そんなふうに考えていた。
だが、僕の予想に反して、レミーからはすぐに返信があった。
1週間以内にはもらえると嬉しい、そういった内容の返事であった。
よかった、まだ待ってもらえる。
こんなに人気Vtuberにも関わらず、驕らず、丁寧な返答をくれるなんてなんて優しい人なんだ。僕は心が温かくなった。
単純かも知れないが、こういった細かいところに人柄は出ると思う。
それに、僕が想像するよりも、他のVtuberの人たちも優しい人なのかも知れない。
今まで、他のVtuberの人との交流がないものだから、過度に考えすぎていたんだろう。
他のVtuberだって、中身は人間。
そこまで怯える必要はないのかも知れない。
そんなことを考えると同時に、よかったとも思った。
この人なら、2人がコラボしてもリラックスしてできるかも知れない。
もし、失敗してしまっても温かくフォローしてくれるかも知れない。
いや、そうに違いない。だからこそトップレベルのVtuberになれるのだから。
僕は返信を見て、コラボについて、前向きに考えられるようになっていた。
2人が消極的に考えがちなら、僕が積極的に考えなくては。
2人の成長を促せるようにしなければ。
そしてもしかしたら、レミーこそが、2人が先に進める大きな助けとなってくれる人かもしれない、そんな考えに変わっていった。
だが、ここで重要な点が一つ。
2人の意見を加味した結果にしなければならないということ。
2人あってのミラーツインズだ。
僕は、所詮アシスタント業をしているにすぎない。
僕は自分の気持ちが先走りしすぎないように、心を落ち着かせる。
コラボしたあとどんな企画したいな、とかこんなふうなサムネイルにしたい、といった考えをとりあえず頭から追い出す。
落ち着け、自分。
この間は、2人は呑気なことを言っていたけれど、本心はわからない。
やりたくないことを呑気なふりをして、誤魔化した可能性だって大いにある。
反対に、とてもやりたい気持ちを隠している可能性だってある。
そのため、2人の真意を知る必要がある。
僕はそう思った。
僕は期限の1週間になる数日前、緊急会議と銘打ち、2人と共に話し合うことにした。
ここで、はっきりさせようじゃないか。
コラボするのか、しないのか。決着をつけよう。
2人は、僕が会議するなんていうから、とても不機嫌。
会議と言われると、いつも僕からの小言を聞く時間になることが多い。だから、2人はそれを警戒して、こちらを見てくる。
いや、待って。今回はそれじゃないから。
「何?龍ちゃん。私たち忙しいんだけど」
「そうそう、まだ見れてないのもあるから早くしてね」
いや、2人がするのってどうせリスナーの観察という名の監視でしょ。
忙しいとか言わないでほしい。こっちの方がはるかに大事。
そんなことはさておき、僕は2人にこのコラボの依頼をどうするかを相談したいことを話した。
コラボを行う上でのメリット、デレリットを余すことなく伝える。
そして、僕の思いである、2人の成長につながりそうだからできるなら前向きに考えてほしいこと、でも僕は2人が心配でもあることを。
その上で、2人の率直な意見を聞きたいと。
僕はきっと、
「どうせできるわけないよ」
「他の人と関わるなんていやだ。3人でやっていけばいいじゃん」
そんな反応が返ってくると思っていた。
だが、2人の反応は僕の予想に反するものであった。
「龍ちゃんは心配してくれてるのかも知れないけど、大丈夫だよ」
「そうそう、僕たちも頑張れるよ。せっかくのレミーさんだよ。コラボしてみたいな」
2人は笑顔で前向きな発言をする。
嘘でしょ?そんな言葉が2人から出るなんて。
僕は感動して、涙が出そうだった。
なんていうことだ。
僕が思っていたよりも2人は成長していたらしい。
感動すると同時に、僕は深く反省した。
僕は、2人のためと言いつつ、僕の後の労力を先に考えてしまっていたのかも知れない。
僕の都合で、2人に成長することができる機会、を与えることができていなかったのかも知れない。
もしかしたら、2人にとってはこれがより成長するいい機会になるのかも。
なら、僕はそれをサポートするまでだ。
僕は期限の1週間になる今日、返事を送った。
もちろん、YESの返事をね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます