第19回配信 はじめてのコラボの誘いが
僕がコメントやつぶやきに心配になっている間にも時は巡る。
ある日、一通のダイレクトメッセージが来た。
それは、こんな文面。
『はじめまして。Vtuberのレミーと申します。
以前から拝見しておりまして、宜しかったらコラボしていただけませんでしょうか?
よろしくお願いします』
え?あのレミー?
登録者100万人越えの人気Vtuberの?
羽滝レミー(はばたき れみー)。通称れみれみと呼ばれる人気Vtuber。
ゲーム配信や雑談配信、歌枠などはもちろん、Vtuberには珍しいメイク配信を行い、話題となり一気にトップVtuberとなった。
可愛らしい見た目と、豪快な笑い方、繊細なメイクが人気を呼び、男女問わず人気を博している。
そんなレミーが?
僕はDM画面を見ながら、固まってしまう。
まさか偽物か?いや、ちゃんと公式マークもついてるし、フォロワーも多いし。
相手は、大手Vtuber会社に所属するトップVtuber。
コラボを切望する人も多いに違いない。
かたやこちらは、無所属でコアなファンが多いヤンデレVtuber。
コラボなんてしたこともない。
そんな2組がコラボするなんて、ましてやレミーのほうから誘いがあるだなんて、びっくりしすぎて信じられない。
だけど、当の2人はと言うと、
「レミーと?コラボするの?やってみたいかもー!」
「コラボって緊張しそう。そういえばはじめてだね。誘われたの」
と呑気な様子。
もっと、
「えー?あのレミー?できないよー」
とか、
「そんなの緊張しちゃうから無理だよー』
とか。
そういう反応じゃないの?
もっと騒いでもいいと思うけどね。
だけど、僕も逆に冷静になってしまう。
こんな人に知られているなんて思わなかった。
はっきり言って、2人が元気になればと思い進めたVtuberで、こんなにも色んな人に応援されるなんて僕は涙がにじむ。
と、冗談はこの辺にして、2人にコラボの話がきたのははじめてではない。
これまではうまく断ってきたのだ。
なぜって?そりゃ、2人にコラボができる技術がないからだよ。
コラボをすると、互いに違うリスナーの人に知ってもらう、つまりより多くの人に知ってもらう機会となるため、とてもいい効果を生むものだ。
それに、今回においては、トップVtuberからのコラボ以来。
大手に所属している人とのパイプなんてあって損することはない。
だが、今回においても僕はあまり乗り気ではない。コラボをあまりやってこなかったのは理由がある。
それは、2人が僕以外の人と話さなければならないからだ。
画面を通じてコラボはするとこになるだろうし、家も近くではないだろうから直接会ってコラボ、ということになる可能性は低い。
初対面で直接はきついとお互いに思うだろう。
だが、直接会おうが会わまいが、2人が初対面の人とうまく話せるかと言われると難しい。
2人がこの数年話している人は、僕と時々くる家族のみ。
他人と話す機会をほぼほぼ持てていない2人にとって、コラボ配信は大きな労力の消費と2人のこれからの活動に大きな影響を及ぼすかも知れない。
それに、コラボとなればいつもは精神状態に合わせていた活動も、相手に合わせなければならずもしできなかったときに急遽辞めます!ともできない。
それに、もし精神状態が良かったとしても、2人がうまく配信できるかと言うと、とてもじゃないが難しいだろう。
もし失敗してしまったら?
やっと、ここまでできるようになったことが崩れてしまうこと。
普通の人にとっては小さなつまずきかも知れないが、2人にとってはそうではない。
そのつまずきを取り戻すためにどれだけの労力が必要なことか。
そのことを想像するだけで、ゾッとする。
そして最大の懸念。
それは、相手にヤンデレが営業ではないとバレてしまうこと。
コラボするといったって、その前後の会話はするだろうし、もしそんなところでヤンデレが出てしまったら?
もし、何か質問されてバレてしまったら?
ごまかす技術もない2人にとっては、打つ手は無くなると言えるだろう。
別に2人にとってはバレてもいいことかも知れない。それが、2人の素ではあるわけだしね。
だけど、それで離れていってしまうファンも少なからずいるだろう。
その離れていく人たちのことに対して、果たして2人は納得することができるだろうか。
いや、できないに違いない。
2人にとってはどちらがいいんだ。
僕は迷いに迷ってしまう。
返事をするなら、早くしなければならない。
相手だって、暇じゃないのだ。早く返事をしなければ、コラボする話だって無くなってしまうかも知れない。
だけど、どうしたらいいのかわからない。
2人のことを思えば、コラボしたほうがいいのか。いや、でもできるのか?2人があの日の2人に戻ってしまうかも知れないんだぞ?
僕は自問自答を繰り返す。
どうしたらいいのかわからない。
もちろん、このチャンス逃したくないと言う思いもある。
きっと、リスナーの層も異なるであろうレミーとコラボすることで、より2人のことを知ってくれる人が増えれば、応援してくれる人も増える。
そうなれば、2人の自己肯定感はより上がり、いつか自然な笑顔が見られるかも知れない。
それは、僕の密かな野望だ。
だから、ぜひこの好機は逃したくない。
あぁ、どうしたらいいんだ!
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