第17回配信(蒼目線) やっぱり僕らには龍しかいないよねって話

僕らといるのことなんてなんの得もない。

それなのに、僕らが引きこもってからも、僕らと一緒にいてくれいる意味を考えなければならなかったんだ。

馬鹿だな、僕らは。龍ならずっと一緒にいてくれるんじゃないかって勝手に思って。

龍は、僕らをVtuberを始めたら、社会とのつながりができたら捨てるつもりなんだ。

そんなことさせない。龍はずっと僕らたいてくれないと。


僕らは、頑なにVtuberをすることを承諾しなかった。だって、承諾したら僕らは龍に捨てられる運命だから。

それどころか、龍に捨てられるのではないかという不安から、より不安定になっていってしまった。

学校に行っている間もずっと連絡をしていたし、返信が少しないだけで電話もすぐにかけていた。

来ない日が有ればすぐに連絡し来させたし、学校の話なんてしてほしくなかった。

だけど僕と紫友がどれだけ暴れても、どんだけ暗いことを言っても、龍は受け止め、慰めてくれた。

龍も僕らを見捨てるに違いない、そう思っていたのに。


僕らは、そんな龍の優しさに少しずつ自分達を見つめ直せるようになってきた。

外に出ることができなくても、毎日できることも増えてきた。

今日はパジャマから着替えられたし、掃除だってできたって。そんな日々の小さなことでもできることが嬉しかった。

そして、そんな龍の優しさに報いるため、僕らはVtubeを始めることを決めたのだった。

懐かしいな、昔の自分達はなんて酷かったんだろうか。

僕は昔を思い出し、少し笑う。


まぁ、最初は全然順調じゃなかった。

そもそもVtubeのことを全く知らなかった3人がやるんだから、道具揃えて、キャラメイクして、とか色々していたら日々は怒涛に過ぎていった。

そんな日々を過ごすうちに、静かにしているといろいろ考えてしまっていた時間が無くなり、徐々に精神的にも安定している時間が増えていった。


龍はそんなことも考えて、初めてのことを教えてくれたのかもしれない。

だが、忘れもしない最初の配信。

僕らはガチガチで何もできなかった。

そんな僕らの配信なんて誰も見ない。

視聴者はいない、誰もコメントもしない。

僕らは誰にも必要とされていないということをより痛感する時間だった。


やっぱり僕らはこんなことするべきじゃなかったんだ、そう思って初回の配信から全く配信することができなくなった。


だけど龍は、


「大丈夫、ここめっちゃよかったよ。次はこうしてみるのはどう?」


と、いつでもその先を見通して僕らを導いてくれた。

そんな龍が眩しくも、僕らにはそうなれないと思い知らされているようで辛かった。

だから、より僕らは殻に篭るようになった。

何にも揺るがないよう、もう何もしなくていい。


そんな日が続いた。

だが、そんな殻に篭った僕らでも、また龍はそばにいてくれた。何もしない、何も言わない。


そんなことの繰り返しで、今僕らはいる。

徐々に慣れてくると、自然体で配信できるようになり、少しずつ見てくれる人も増えてきた。

僕らの容姿に関わらず、褒めてくれる。僕らがどんな人間であるかなんて放っておいて、動画の僕らを褒めてくれる。

そんな環境に僕らは心が温かくなっていくのを感じていた。


批判や悪口ももちろんあった。そのコメントを見るたびに、僕らは落ち込み、不安定になった。

あぁ、こんなことを言われている。どうせ僕らは好かれていないんだ、って。

だが、そのたびにいつだって励ましてくれるのは他でもない龍だった。

僕らが得意なゲームを使うのはどう?とかそのままの僕らでいい、と龍が言ってくれたから、僕らはその通りにした。


そうすると、徐々に僕らのキャラクターも受け入れられるようになり、僕らも楽しんで行えるようになってきた。


そして、僕らはコメントを見ることが1日の楽しみになった。

コメントをみると、僕らの心は満たされた。

あぁ、僕らはこんなにも必要とされている、愛されているって。

なら、僕らももっともっとこの子たちに愛を返さなくちゃって。

そんな思いで、僕らは配信を続けられている。


だが、人間というのは欲深いもの。

賛辞をより欲しがるようになってしまう。

というよりも、僕らはもっともっとどう思われているのか、気になるようになってしまった。

何も手につかない、僕らのこと以外をリスナーの子たちが見ていると思ったら耐えられない。

そんな毎日。

そんな時に知ったのがSNSのつぶやき機能。

僕らはそれを見ることで、また精神的に不安定にも安定にもなれた。

配信してなくても、つながれるなんてなんて素敵なことだろう。


僕は、時計を見る。

あぁ、もうこんな時間か。

さっきよりも呼吸は落ち着き、なんとかまた眠りにつけそうな精神状態。

さぁ、また寝るか。

僕達には龍しかいない。

そんな思いで、今日も眠りにつく。

龍のことを思い出すと安心して、ぐっすり眠れる気がする。

おやすみ、龍。また明日。

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