第6回配信 ゲーム配信って普段にもどりやすよね

プレイが光っているのは蒼?蒼が優勢かな。

僕はゲーム画面を見ながら、ゲームの行く末を見守る。

2人の実力は拮抗しているものの、堅実なプレイをしがちな蒼の方が勝率は高い。

コメント欄も応援する言葉で埋まるが、リスナーも蒼が優勢なだと思っている様子。


[ガミ、そうやってやってたら勝てないでしょ。こういかないと!]


蒼がそう挑発しながら、攻撃を決める。

挑発もプレイの一つ。特に、会話ができている相手ならなお効果的だ。

うまい!効果的な攻撃。

2人はゲーム中も会話を止めることはない。引きこもり、2人でずっとゲームをしているだけあって息ぴったり。

そう言った面では安心して見れる。

まぁ、そういった面における問題点もあるんだが。


対戦は拮抗し、なかなか勝負がつかない。

2人も、僕も、リスナーも固唾を飲んで見守る。

だが、お!勝負がついた。

結果は、、蒼が勝ってるな。

接戦ではあったものの、一回戦のバトルでは蒼の勝利。コンボと必殺技のでたタイミングが良かったな。


『さすが!』

『上手い!カガやっぱゲーム上手い』

『必殺技出すタイミング神』


コメントはゲームの勝者への、つまり蒼へのコメントで溢れる。やっぱり、蒼に分配があがったか。紫友にはいつもいってるのにな。こういう時は焦らず冷静に、って。

まぁ、聞く人でもないけどね。

その一方で、


『ガミちゃんどんまい』

『惜しかったー』


紫友への励ましのコメントも溢れる。敗者への励ましの言葉も忘れないのが優しいリスナー達。

本当に、ありがたいなぁ。敗者に対して、批判的な発言はほとんどない。

自己肯定感が低い2人にとって、批判しがちな人がリスナーにあまりいないのはありがたい。

2人がリスナーを好きな理由もこういったところにあるだろう。

ゲーム配信ではこういった賛辞を多く受けられることも、2人にとってはいいことだ。

これでどんどん2人の自己評価も上がっていけば一石二鳥だ。


[よし、ガミ!僕の勝ちだねー]


蒼は勝利し、機嫌な様子。蒼もこういった時は、これでもかというように、挑発をする。

そういった盛り上げをすることもできるのも、兄としての資質でもあると思う。

そんなにこにこな蒼とはうって変わって、不機嫌なのは紫友。


【あーもう!お兄ちゃん!今の反則!】


大きな声を出し、蒼を睨みながら発言する。

その妹感全開な様子も、配信なら好評になる。

コメントでも、


『また兄弟ゲンカーー!』

『恒例すぎる』

『助かる』


といったもので溢れている。

2人が自分の感情をコントロールしにくいことも、配信なら演じていると思われ、むしろ得。

兄弟ゲンカも助かるって言われるし、ゲーム配信はいいこと尽くめなように思える。

だが、ゲーム配信には問題があるのだ。


2回、3回と対戦は続いていく。

2人は対戦をしながらも、会話を忘れない。というか、普段からずっとゲームをやっているような2人だから、喋りながらでもゲーム力が落ちるようなことはない。

だが、こういった普段のゲームみたいな空気感になるのが一番まずい。こう言った時に出やすいんだから。

そう僕が思っていると、


【そういえばお兄ちゃん、昨日の記録残しといた?】


[え?あぁ、もちろん。大事な資料だから]


僕はぎくりとする。

おーい!!

そして、慌てて、バツマークを挙げる。

2人はそのマークを見ると、あ、という顔になる。

そうだろ、それは言っちゃダメなやつだろという無言のアピールが僕から響く。

慌てて2人は会話を配信モードにシフトする。


[そ、そういえば昨日のカレー美味しかったなぁ]


【そうだねーお兄ちゃんー】


ふぅ、なんとか2人の会話を軌道に戻す。

コメントもどうだ?気づかれてないよな?

僕は急いでコメントを見る。


『記録って勉強系?』

『やっぱ、大学生くらいなのかな?』

『カレー好きなのかわいい』


特に先ほどの2人の発言に言及する声はない。

よかった。本当にやめてほしい。

普段感が出過ぎるとこういうことになるから要注意だな。僕も気を張っていないと。


問題、それは2人が素に戻り過ぎてしまうことだ。

別に、素に近いものを配信者に求めている人も多いだろうし、僕もVtubeを見るようになってから、その人が本当存在しているんだ、と思えるような発言をしていくれると少しホッとする部分もある。

だから、一Vtube視聴者としても、そういった部分を出していきたいという思いもある。

だが、問題なのはこの2人であるということ。

2人の普段=ふだんのヤンデレ。

それはつまり、営業以外のヤンデレが出てしまうということに他ならない。


みんな、営業だと思っているから楽しめるわけであって、自分達の呟きを逐一見られていたり、見ているVtuberを全て把握されていたりしたら引くに違いない。

だから、僕はゲーム配信の時にはいつも以上に気を張っている。

2人の普段が出過ぎないように。

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