第3回配信 2人が配信を始めたのはね①
僕と蒼、紫友の2人とは、もういつから一緒にいるかもわからないほどの幼馴染。
親同士が仲良かったのもあり、意識する前から3人で一緒にいた。
はいはいも一緒にしていたし、きっと初めて手を繋いだのもこの2人だろうと言えるほどに一緒にいた。
3人で仲良く縄跳びやサッカー、鬼ごっこと子供らしい遊びを毎日していた過去が懐かしい。
今思えば、その時期が一番平和だった。
地獄が始まったのは、小学校に上がってからだった。
ランドセルというアイテムを身につけ、親という守りが常にいる状況では無くなった2人は、最強な2人となっていた。
簡単に言うと、2人は周りを凌ぐ、超級の顔面の持ち主であったのだった。
歩けば、周りが振り返り、目を奪われる人々。
それはクラスメイトも例外ではなく、常に人だかりができ、アトラクションの様になっていた。
だが、こんなことになってしまうことは、僕に取って計算外だった。
慣れというのは恐ろしいもので、2人の顔面が超級であることに僕は全く気がついていなかったのだ。
だから、毎日一緒にいることは変わらず、なんでみんな2人の周りに集まるんだろう?といったように呑気に構えていた。
それが良くなかった。
調子に乗っている、独り占めするな、と早速のいじめという名の学校の洗礼を受けた僕は、早々に人前においては2人のそばにいないことを徹底することとなったのだ。
2人も、周りからの注目を浴びることはそんなに苦でなかったのか、僕がいない場でも楽しんでいる様子であった。
小学校なんてそんなものだ。幼馴染よりも、新しい友達に目がいく。
それを見て、より一層僕は近づかなくなったのだ。思えば、僕も子供だった。
だが、離れるべきではなかった。冷静に見ることができる人物が、この2人の周りにはいなければならなかったのだ。
中学3年生の時だった。
僕は、これまで通り、2人のそばには近寄らないように徹底していた。中学3年生にもなると、僕と2人が幼馴染であることを知る人は少なく、地味な僕と派手な2人の関係性を探る人もいなかった。
その日も僕は普通に学校生活を送っていた。すると、その平穏な日々を打ち砕くニュースが入ってきた。
その場にいなかった僕に、詳しく知る手立ては無い。しかし、その出来事後、2人は学校から姿を消した。
学校中がざわめき、会話は2人のことで持ちきりとなった。2人をなんとか学校に来れるようにしようと、電話やメール、家にまで行く人も出てきた。
家族にはただ一言、『心配しないで』とメッセージが来たという。
だが、それ以降、2人の携帯につながることはなかった。そして、誰にも居場所を教えることはないまま2人はどこかへ行ってしまった。
誰も2人の居場所を知る手立てはなかった。
僕以外には。
『秘密基地』
2人が居なくなって数日後、見覚えのないアドレスからたったこの一言、このメールが僕に届いた。
僕には疑う余地などなかった。
僕は、メールを貰い、すぐに迷うことなく一つの場所に向かった。
何年幼馴染をやっていると思っているんだ。
全力疾走なんて柄じゃない僕をこんなに走らせるなんて。
息絶え絶えについたのは古びたマンション。
ここは、小学校入学してすぐ、3人で入り浸っていた場所。
3人しか知らない、秘密基地だ。
ミシッ。床の音を立てながら進んだ先には、破れかかったカーテンがかかっていた。
あの頃と変わっていない。
カーテンを開けると、そこには2人がいた。
2人はゆっくりとこちらに顔を向け、そして、
「龍」
か細い声で蒼が僕の名前を読んだ。
かろうじて蒼が出したその声は、あまりにもか細く、僕の耳が悪くなったのかと思わせるほどだった。
久しぶりに会う2人は、以前の輝きを一切失い、
あんなによく笑っていた顔は、なんの表情も見せない。
僕は、人生でこれほどまでに後悔したことはないだろう、いやこれからもないに違いない。
僕は中に入り、腰を下ろした。
何をいうでもなく、ただただ座っていた。
そして、火が沈むと僕は何を言うでもなく、家に戻った。
その次の日も、そのまた次の日も僕は、来る日も来る日も放課後にマンションに寄り、ただ2人と一緒に座っていた。
そんな日が続いたある日、紫友が言った。
「ねぇ、龍ちゃん。私ゲームしたい」
わかった、と返事をした僕は、その次の日、ゲームを3台持って行った。
特に何を言うでもなく、2人に渡すと、僕はゲームを始めた。2人もすぐにゲームを始めた。
その日からはただ黙ってゲームをした。来る日も、来る日も僕はマンションに向かい、ゲームをした。
そんな日々が続き、そろそろ1ヶ月になろうかという時、僕がいつも通りにマンションに入った。すると、2人が立っていた。
そして、
「「もう大丈夫」」
2人は声を揃えてそう言った。その声は、僕が初めに聞いたか細いものではなく、以前に近づいた声であった。
そして、少しわらう2人を見て僕は初めて言えた。
「家、帰ろうよ」
と。
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