たとえ、どんな状況でも絶対にコンプライアンス違反をしない小説

 

 

 友人の高倉と居酒屋で酒を飲んでいると、突然、電話がかかってきた。電話は病院からで、母さんが一刻を争う状況であるとのことであった。


「誰からの電話だったんだ?」と高倉が俺に訊ねた。


「病院からだった。母さんの病状が悪化して危篤らしい。昨日、会った時はとても元気そうだったのに……」


「だったら、早く病院に行ってやれよ」


「無理だよ。今からタクシーを呼んでも間に合わない」


「じゃあ、自分の車で行けばいいだろ。お前、車で居酒屋に来たんだからさ」


「俺は酒を飲んだから、飲酒運転になる。だからダメだ」


「じゃあ、俺が運転するよ」


「お前も酒を飲んだだろ。だからダメだよ」


「自分の母親の死に目に会えなくていいのか? そんなに現実の法律が大切なのか? ここは創作の世界なんだぞ」


「……仕方ないよ、これが運命なんだ。たとえ俺らがであろうとは守らないといけない。最近の読者はの中にもを求めてくるんだ」 


「……そっか。大変な世の中になっちまったな」と高倉は神妙な面持ちでそう呟いた。


 俺はその後、タクシー会社に電話をかけた。電話をかけた20分後には来てくれたが、病院に着くと、母さんはもう冷たくなっていた。

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たとえ、どんな状況でも絶対にコンプライアンス違反をしない小説   @hanashiro_himeka

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