第7話 酒場にて

吟遊詩人が去ったあとの酒場でだべり続ける私たち。


「ねぇ、結局王都メイロンでは王様に会えなかったよねぇ」

「ああ、俺たち勇者パーティーなのにな……」

「気にしない、気にしない。強敵ワクワク……」


世界を救う使命を帯びた三人。

当然この国の王との謁見など、悠々とゆるされるはず。


「ここだけの……話なんだが。メイロン王って、すごいイケメンだって噂なんだ……」

「へ?じゃあ、生け贄にぴったりじゃん……」

「おまえ……。きっと、それ、聖院のある街で噂になっているぞ……。ああ、だから王様は知っていたのかもな。それで会わなかったとか」

「う、うん」

「おれ、女神と立ちションしたじゃん……」

「どうだった?」

「マグロだったなぁ……」

「え!」

「ずっとマッサージさせられたり……な」

「それは……。労働だね」

「ところでお前さ、聖女辞めたがっていたじゃん?男とヤッタ時点でアウトで解雇とかないの?」

「あ、あぁ。もちろん、あるよ?できるだけヤリチンの男とやれれば最高なんだけど、どっかに居ないかな?なんか面倒だから、それも手かなって思ってる」

「なぜ、ヤリチンをご所望で?」

「そりゃ処女性へのダメージが高い方が、私のセイントとしての資格が減るからですよ」

「オレ、ヤリチンだけど、お前とはパスな……」

「嘘つけ、童貞!」

「童貞じゃねーよ」

「本当にヤリチンなら、ウェルカムなんだけどね……」

「本当だけど、パスだよ」

「なぜ?聖女の処女を奪うなんて最高!とか思わないの?」

「……おまえ、本当に聖女なのか?そもそも処女?」

「処女じゃないよ……」

「なぜ、聖女?」

「うーん、男はみんな私を避けるみたいね。神々しいとかいって……」

「……それ、敬遠されているだけだろ」

「聖女と立ちションとか、ちょー楽しいと思わない?」

「……もっと普通に誘えよ……。ともあれ、魔王は悪そうなやつではなかったな」

「なんか、話せばわかりそうな感じはするねぇ」

「王都戻るか……、こうなるとメイロン王とは会っておきたいし。意外に人間の方から魔族に仕掛けた……って線もあり得る」

「別に真相さがさなくても、エリルちゃんに養ってもらいながら、のんびり暮らすのも悪くないんじゃ……」

「たしかに……」


だが、その時エリル少女はピタリと剣の素振りをやめ、振り返ると

「そこの二人……、働いてよね!」

とぴしゃりと言ったのであった。




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