第6話 魔王降臨

久々の大きい街についた……。酒場に入る。ここなら新たな犠牲者には事欠かないだろう。だが。


「最も狡猾な賢者アルフっていうけど、あんたのどこが狡猾なのよ!」

「うるせー、ヤリモクな癖に聖女なんてやってるんじゃねぇ」

「……。二人とも……。うるさい……。剣の素振りしてるだから静かにして!」


「なぁ、それはともあれ、このままじゃオレの体が持たねえよ……」

「そうね……、早急に新しい生け贄を見つけないと……」


「コホン……歌を拝聴願えませんか?」

旅の吟遊詩人だ……。ン?美形?

「聞く聞く!聞きます!」

私は元気よく返事する。


「こんにちは、東の国から参りました異国の吟遊詩人でございます……」

東の国……だと?

「聖女さんですよね?」

あ、あれ?私のこと知っている?

「はい、そうでございますわ」

急に聖女モードに入る私。職業病やね。

すると吟遊詩人は泣き崩れた……。

「私の故郷の東の国は……、魔王によって壊滅したのです……」

「アリア!気をつけろ!!」

狡猾な賢者が叫ぶ。

「え?」


気がつくと、吟遊詩人の短剣をエリルが子供用の両手剣で受け止めていた。

「ふふふー、なかなかの腕前じゃん!」

エリルは機嫌がいい。


「ほう。人間にしてはなかなか腕が立つではありませんか……」

「何者なの」

「人間のような虫けらに名乗る名前はございませんよ」


「アリア、そいつがおそらく魔王だ」

「かいかぶりすぎです。ただの下級の魔族にすぎませぬゆえ」


「なぜ人間を襲うのかしら?」

「なぜあなた方は魔族を襲うのですか……」


「和解の道はないの……」

「ほう、歴代の聖女は問答無用で私に斬りかかってきたものですが……。なかなかに今回の聖女殿は賢い」

「オレに提案がある」

賢者アルフは

「百年間停戦できないか……」


「停戦?なぜ、何のメリットが私に?」

……く、このままではニート生活が……。

「決まっている!!それは!」


「「サボりたいからに決まっているだろ」」


「たく!スネかじり」

とエリル。


「良くわからないのですが、一つわかったことがあります。要するにそこの剣士以外のお二方はそこまで真剣に私に敵対する気がない……ということをね」


吟遊詩人は考え込むと……


「東の国の居城に来て下さい……。あなたが想像するような魔王城ではありませんが……歓迎はいたしますよ。一回目はね。」


「交渉に応じると?」

「話によってはね。では、また、その日まで……」


そういって、吟遊詩人はゆうゆうと酒場を去っていった。
































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