第5話 新たなる生け贄

「会いたくねーな……」

「ああ、どうしよっか……」

「どうしたの?お姉ちゃんとお兄ちゃん?」

狡猾の賢者アルフは諭すように

「大人になるとな……辛いことが増えるんだ……」

とつぶやいた

「ん?それって、私を子供扱いしている?」

「い、いや?」

「誰に飯食わせてもらっているのかしら?」

「ゴメン、失礼致しましたエリル様」


そうなのだ。エリルが道中モンスター退治のクエストをこなしてくれているおかげで「借金」を増やさずに旅をつづけてこれた……。


「こんにちは。ごぎげんよう……」

「ちっ」

「あ、この間の立ちションでは大変失礼致しました」

なぜか、かしこまるアルフ。


「ちょっと。女神と何があったのよ?」

小声で聞く

「想像にお任せするっ」


「たく、どうするんだよ……、生け贄がいない……、これじゃ……」

「アリアさん……」

「はい、何でしょう!女神様!」

「魔王討伐はすすんでいますか?」

「はい、もちろんです!」

「あのぉ、せっかく下界に降りて参りましたのに……殿方は……」

「あ、いえ、ここに!」

あわててアルフを指さす私。

「おい!!!!」


「ふふ、冗談ですよ……」

女神は真顔になると。

「東の国にはとても美形の殿方がいるそうです……」

「はぁ……」

「私、聖女のあなたが居るところにしか降臨できないでしょ?」

「え、えぇ」

「じゃ、よろしくお願いしますね!」


気がつくと女神はいなかった。


「なあアリア?」

「なに?」

「まさかとは思うが、お前の聖院の街さ……。ずっと女神来てたわけじゃん」

「うん」

「いや、なんでもない……。お前の街の男は全員、立ちションはしない礼儀正しいひとだけだよな!」

「あたりまえじゃん!!どうしてなんだろうね!」

「お前……」


「おーい、アリア、アルフ、おいでおいで。ご飯あげる」

かわいらしいエリルの声で今日も楽しく団らんだ。









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