第61話 伝説の樹の木の下で【STAGE スリズィエ】


 ひらり…

  ひらり…


 優しい風がピンク色の花びらを運んでくる。

 見上げれば前世の桜に似た木が満開だった。

『スリズィエの木ですね』


 桜にそっくりね。

『まあ、日本メーカーの作ったゲーム設定ですから』


 この花を見るのも2回目ね。

『日本と同じく入学式の季節ってやつですね』



 入学式か……



 私がこの学園に入学して、もう1年が経ったのね。

『この1年で色々な事がありましたね』


 メイヤー先生と感動の再会をして、先生を困らせるマリク達をシメてカレリンズブートキャンプして、

『入学早々暴れてましたね』


 突っかかってきたヴォルフを返り討ちにして、あまりに情け無いからカレリンズブートキャンプして、

『そんな事もありましたね』


 その後マーリスがセクハラしてきたのでとっちめてから、更生の為にカレリンズブートキャンプして、

『同情の余地なしでしたね』


 セルゲイが最初デキるヤツかと思ったけど、やっぱり無能過ぎたのでカレリンズブートキャンプしたのよね。

『見事にキャンプの思い出しかありませんね』


 そんなことないわよ。

 フェンリルが清掃隊員にもみくちゃにされ、トラウマを再発してしまって、

『その清掃隊員は貴女がけしかけたんでしょう!』


 その後フェンリルが引き篭りになって、ピンク頭の子が突っかかってきて、

『あの娘はいったい何がしたかったのでしょうね』


 家に帰ったら犬屋敷になっていて、お母様を奪われたフェンリルがグレて、

『犬達は可愛かったですね。あの堕犬には良い薬でした』


 そして、私が実家に帰っている間に3バカはキャンプを脱走してしまってたわね。

『あの連中の更生は無理でしたね』



 そうねぇ。あれからも3人はガルム様やラファリィを巻き込んで、なにかと私に挑んできたのよね……ぜ~んぶ叩き潰したけど。

『あいつらも凝りませんでしたね』


 あんたもこの1年はずっと一緒にいてくれたわね……ありがとう。

『何ですか急に』


 何となくよ。

 ホント色々な事があったなぁ。


 そう言えば、私の通り名に『霊長類最強』が遂に加わったわ。

『それはおめでとうございます』


 えへへへ……ありがと。

『ホント嬉しそうですね(はにかむ姿はホントカワイイんですけど♡)』


 清掃隊員達とも結構バカやったっけ。

 ふふふ……色々あったし、色々やったなぁ。

『楽しかったですか?』


 なによ? そんな優しげな表情して……調子狂うわね。

 ま、まあ……それなりに楽しかったわよ。

『それなら良かったです』



 あっという間の1年だったわ。

『早いものです。貴女もこの1年で随分と成長しました……胸とお尻が』


 なんでなの!?

 お尻はともかく胸はもう大きくならないって思ってたのに!

『今は上から……99、50、86ですか。貴女、本当に16歳ですか?』


 まさかまだ大きくなったりしないわよね?

『さあ?』


 さあって……

『ゲーム設定とは大きくズレていますので……因みにゲームカレリンのスリーサイズの設定は90、53、88です。今の貴女ほどではありませんが、十分に見事なプロポーションですね』


 この大きな胸については諦めるしかないか。

『それよりも本当にこのままでいいのですか? その美貌とプロポーションならガルムも簡単に堕とせますよ?』



 いいの! 成り行きに任せる。

 ガルム様が私と結婚したいならそれでよし、婚約破棄したいならそれでもよし。私はガルム様の意志を尊重する。

『本当に貴女はガルムのことが好きではないのですよね?』


 しつこいなー。好みじゃないって。

『そう……ですか?(好みと好きになることは必ずしも同じではないのですけどね)』


 何よも〜。私とガルム様をくっつけたいの?

『私は貴女が幸せになれればそれでいいのですよ(ガルムをかなり気にしているみたいですが無自覚なんですね)』



 大丈夫よ! どう転んでも私は自分のやりたいように突き進むだけ。

 それじゃあ新入生を迎えましょうか。

 見込みのありそうなのいるかしら?

『貴女の被害者が増える未来しか見えません』


 ふふふ……楽しみね――――

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