第34話 クリーナーケイデンス【STAGE 校庭】
【訓練30日目】
「ぜんた〜い――進めッ!」
タクマの号令一下、元不良の
――ザッ! ザッ! ザッ! ザッ!
一糸乱れぬ統制の取れた行進――見事だわ!
引き締まり、自信に満ちた顔――素晴らしい!
盛り上がり、逞しい筋肉の体――素敵……ぽっ!
私は先導役のタクマに率いられて行進する
『僅か1ヶ月であの愚連隊の様な連中が随分と精悍に様変わりしたものですね』
私の考案したカレリンズ・ブートキャンプの効果は絶大よ!
アレクサンドール領でも山賊達を更生させた実績があるんだから。
「ぜんた〜い――駆け足ッ!」
先導のタクマの指導のもと、足並みを揃えたランニングが開始される。
――ダッ! ダッ! ダッ! ダッ!
「唱和開始ッ!」
ゴルゴ
(ゴルゴ十三を知ってるかッ♪)
背後に立つカス駆除する♪
(背後に立つカス駆除する♪)
イカした凄腕スイーパー♩
(イカした凄腕スイーパー♩)
汚物は消毒だッ!(汚物は消毒だッ!)
汚物は消毒だッ!(汚物は消毒だッ!)
タクマを先唱役に『
『――ッ!? 何ですかこれ!!』
えッ? だから『クリーナーケイデンス』よ?
『クリーナーケイデンス?』
ミリタリーケイデンスってあるじゃない?
あれを参考に私が作詞したの。
『ジョディコールとか呼ばれる軍隊や警察の行進やランニングで歌われるあれですか……』
歌詞は領地で山賊や冒険者達に施した、カレリンズ・ブートキャンプで使ってた歌詞を改造してみたの。
題して――『ジュウゾウコール』よ!
ゴルゴ
(ゴルゴ十三を知ってるかッ♪)
社会のゴミ屑駆除する♪
(社会のゴミ屑駆除する♪)
汚れを許さぬ掃除屋さ♩
(汚れを許さぬ掃除屋さ♩)
ゴミ屑は排除ッ!(ゴミ屑は排除ッ!)
ゴミ屑は排除ッ!(ゴミ屑は排除ッ!)
『ゴルゴ十三って……』
ゴルゴ十三……私が創作した伝説の東洋人スイーパー。
どんなゴミ屑も見逃さず、あらゆる汚れを落とすイカした凄腕の掃除屋さん。決してスイス銀行が大好きな伝説の
俺たち学園のウジ虫さ♪
(俺たち学園のウジ虫さ♪)
父ちゃん母ちゃんごめんなさい♩
(父ちゃん母ちゃんごめんなさい♩)
俺たち心を入れ替えて♪
(俺たち心を入れ替えて♪)
立派な掃除屋目指します♩
(立派な掃除屋目指します♩)
学園を清掃!(学園を清掃!)
学園を清掃!(学園を清掃!)
『――ッ! これって洗脳目的じゃないんですか!?』
何を馬鹿なこと言ってんの……
これは伝説の
ゴミ屑だった彼らが立派な清掃隊となって、学園に
こうやって清掃隊の結束と伝統を築き、彼らによってゴミ屑どもは
『そんなに上手くいきますか?』
アレクサンドール領では山賊相手に上手くいったわよ?
山賊達もこのカレリンズ・ブートキャンプをくぐり抜け、今では屈強なアレクサンドール清掃隊員として生まれ変わったわ!
彼らが社会のゴミ屑どもも蔓延る汚物もばっちり始末してくれるお陰で、アレクサンドールはこの国で1番安心・安全・清潔な領地と言われているのよ。
見なさい! この頼もしい筋肉達を!
『貴女の行き着くところは筋肉なんですね……』
あんたには分からないのね――筋肉の素晴らしさが!
『……分かりたくありません』
「――ッぐふッ!」
集団で最も太っちょの巨体がへばって倒れる。
ちッ!――またヤツか!
私はだらしなく地面に倒れ、ぜぇぜぇ、はぁはぁと呼吸を荒くする新兵へ駆け寄った。
「また貴様かッ!」
そして、怒声と共に未だに贅肉が取れ切れていない、この隊きっての肥満で巨体の持ち主を片手で持ち上げる。
『この異様な光景にも見慣れてしまった自分が怖い……』
「ゴマー・パイエル二等兵!」
「がッ! くッ、は――ッサ、サーイエッサー!」
苦しみジタバタするが、私に逆らう意思は無さそうね。
調きょ――調練も良い
『――ッ!いま、調教って言おうとしましたよね! やっぱり調教って自覚しているんですよね!!!』
騒ぐポンコツを無視してゴマー二等兵に罵声を浴びせる。
「いつもいつも貴様は途中で簡単にへばりおって――この根性なしがッ! そんなに皆の同情を惹きたいか! まるで街で男を漁る
『カレリン! そのセリフは人権的に問題ですよ!』
筋肉になれない肥満ウジ虫に人権なぞない!
「パパの精
『カレリン!貴女はなんて卑猥な言葉を――ッ!!』
「そんな貴様のような根性なしは、大好きなママの元へ泣き帰るがいい――このマザコンがッ!」
「もっとも貴様の様な根性なしを産んだ母親の股もさぞかし根性なしでゆるゆるなのだろう。今頃はよその男の
『ちょっ!女の子がそんなセリフを言ってはダメ――ッ!!!』
「どうしたゴマー二等兵! 根性も金
「ぐッ! く、くそぉぉぉ! ママを侮辱するなぁぁぁ――ッ!」
立ち上がったゴマー二等兵が大きく拳を振りかぶって殴りかかってきたが、完全なテレフォンパンチ――ッ! 喰らうか!
ヒョイっと簡単に避けてゴマー二等兵の足を引っ掛ける――ズデーーーンッ!
激しい音と共に俯けに倒れた。
「ほう……立ち向かってくるガッツは残っているようだな。よろしい! それだけの元気があるならまだまだ走れる!――ランニングに腕立て伏せ追加ッ!」
「く、違う! ママは……う、う、違うママは……」
地面に拳をダンダン!と打ちつけ、悔し涙を流すゴマー二等兵。そんな彼を私は虫けらのように見下す。
「悔しいかッ! 否定したいかッ! 違うと言いたいかッ!」
上半身をお越し、私を見上げるゴマー二等兵の瞳に炎が宿った。
「だが、人間でないウジ虫の貴様にその権利はないッ! このカレリンズ・ブートキャンプを乗り越えて人にならねば、悔しいと思う資格も、否定する資格もないッ!」
私は温度を感じさせない冷たい目でゴマー二等兵を
「悔しいと思うなら立ち上がれ――ッ! ガッツを見せてみろッ!」
よろよろと立ち上がるゴマー二等兵は、しかしその顔には強い決意の色が見えた。
「私の言葉を否定したいなら走れッ! お前がマザコンではないと思うなら根性を見せろッ!」
ゴマー二等兵を心配そうに見つめる他の
強い仲間意識ができているわ。いい傾向ね。
全員に聞こえるように、私は声を張り上げた。
「貴様らは人間ではないッ! この学園の最底辺のウジ虫だッ! 故に貴様らに人権など存在しないッ! カレリンズ・ブートキャンプの試練を乗り越えた者だけが初めて人間となり、人としての権利を勝ち取るのだッ!!!」
『貴女は悪鬼ですか!? 悪魔ですか!?』
悪役令嬢よ!
『――ッ!開き直るし!』
「うおぉぉぉ! ママぁ~~~!!!」
ゴマー二等兵が懸命に走り出した。
私に反抗するよりも、訓練へ心血を注ぎ込む方を選択したようね……
よしよし、洗の――教育も順調ね。
『貴女やっぱり彼らを洗脳しているんじゃないんですか!』
結束を強め助け合う
頼もしく育っていく将来の
盛り上がり逞しくなっていく筋肉。
私は1つ大きく頷く――ナイス筋肉ッ!
走る筋肉……脈動する筋肉……溢れる筋肉……
うむ! 素晴らしい!――ナイスバルクッ!
『その感性はどうかと…… 』
ちょっと飴が居なくなったから心配もあったんだけど……杞憂だったみたいね。
『飴?――あッ! そう言えば確かにフェンリルの姿が見えませんね』
あの子はここに来ると、ごっつい筋肉達にもみくちゃにされるからイヤだって言って来なかったの。今は王都のお屋敷に籠っているわ。
『貴女に
今朝も学校へ行くわよって声を掛けたら、逃げ出して侍女達の背後に隠れてプルプルふるえちゃって……
『それは……かなり重症なのでは?』
不良どもの更生が済むまで魔法学園には近づかないって、目をウルウルさせて侍女やメイドにしがみついて離れないの。
『貴女のせいで
大丈夫よ。そんな状態でも、しっかり侍女達の胸(Cカップ以上)に顔を埋めていたから。
今頃は
この間、美人の巨乳侍女にブラッシングされながら恍惚な表情を浮かべて「この屋敷は王都に残された最後の
『――ッ!? あのエロ犬! 心配するだけ損でした』
『この後、更に30日間もカレリンによる
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