第42話 女神暦199X年、世界は核の炎に包まれた!【STAGE 学食】
それから学園中カレリンやマリクを探し回ってみたんだけど……
朝――校門前で待ち伏せたけどカレリンもマリクもやって来ない。
昼――休み時間に教室や食堂を覗いてもいない。
放課後――やっぱり校門で門限ギリギリまで粘ったけど姿を見せない。
学校に来てないのかなって思ったんだけど、彼女らのクラスメイトに尋ねると授業には参加しているみたい。
放課後に校庭で見たとの証言があり向かってみるも影も形も無い。
どうして同じ学校にいるのに接触できないの!?
学園の職員などにも聞き込みしたんだけど、どうやらそれらしき集団が朝日の昇る前に登校しているみたい。
そこで、わたしは早朝の学園へとやって来て確認したんだけど……
めっちゃ衝撃的な光景を目の当たりにしたの!
なんとカレリンがマリクを洗脳していたのよ!
彼女はやっぱり悪役令嬢なのよ!
でも、まだ邪神に騙されているだけって可能性もまだ否定できないし……
世界とゲームが
早くカレリンと接触して彼女の思惑を見極めなきゃ。
幸いカレリンはマリク達の洗脳を終えたからなのか、最近では普通に学園で姿を見かけるのよね。
だけどカレリンはわたしに嫌がらせをしてこないの。
ガルム王子達の私の好感度が上がっているにも関わらずよ。
やっぱ彼女はヒロインであるわたしを警戒してるのね。
だけど、カレリンは高位貴族だから、迂闊にわたしの方から声を掛けるのは
こうなったら危険だけどイベントを強制発動させましょう。
カレリンに足を引っ掛けられて転倒するのがあったわ。
あれなら彼女と怪しまれずに接触できるんじゃないかしら?
えッ? それのどこが危険かって?
だってこの手の転生ヒロインは断罪するための一環として悪役令嬢の前で転倒するじゃない。
あれってほぼ100%逆ざまぁされるでしょ。
こういうイベントは無計画に引き起こしちゃダメなのよ。
だから入念な準備をしたかったんだけど、そんな事を言っている場合じゃない。
さて、イジメイベントは昼の食堂で発生するんだけど……
――いたッ!
校庭で見た軍服姿とは違い今日は制服姿ね。まあ当たり前だけど。
流れる髪はキラキラと輝くような
ホント凄い美女……
ただキレーと言うだけじゃないわ。
その全身から溢れるオーラが違うのよ。
ここに何百人の美女を集めても、きっと彼女はすぐに分かる。それくらいハンパない存在感なの。
特にヒマラヤの様に
胸なんてただの脂肪の塊だしぃ!
デカきゃいいってわけじゃないしぃ!
だいたい大きいと肩は凝るし、下が見にくいし、動くと揺れて大変だしぃ!
現状でもわたしの魅力は100%出せますぅ!
えッ!? Aカップもないようだなですってぇ!!!
胸なんて飾りです! エロい人にはそれがわからんのです!――泣いてなんかないんだからッ!……グスッ……(ごしごし)
と、とにかく彼女とのイベントを発生させないと。
きっと近づけば強制的に発動するんじゃないかしら?
幸い食堂ならわたしが近づいても怪しまれないはず。
自然に……自然にっと。
近寄ると彼女の威圧感がますます漂ってくるわ。
なんだろう? 人気女優とか大物政治家とか――そんな人たちも彼女の前じゃ霞んでしまいそう。
その全身から迸るオーラ。
ホント凄い……何人も近づけさせない、何人も届かないプレッシャーよ。
(たゆんたゆん……)
くッ! 負けないんだから!
女は度胸! 突貫よ!
待ってなさいカレリン! 今あなたの正体を見極めてあげるわ!
って意気込んだんだけど、彼女のオーラに気圧されてたのか、それともゲームの強制力なのか、足がもつれちゃったの!
そのままバランスを崩して――倒れるッ!
わたしはぎゅっと目を
いえ、なんだか柔らかく心地よい感触と不思議な浮遊感が……
恐る々々目を開くと……
「あッ!」
目の前には絶世の美女の顔がドアップにッ!
わたしはあまりの光景に息を呑んだ。
わたしは今カレリンにお姫様抱っこされてるの!?
「大丈夫かしら? 可愛いお嬢さん」
「か、カワイイ?」
転びそうになったわたしを咄嗟に掬い上げて抱き上げられたの?
しかも何このフェロモン! 下手な男よりカッコいいんですけどぉ!?
ダメ! 顔が絶対に赤くなってる!
心臓がばくばくF1マシン並みに爆音を上げてるし!
柔らかくて、
暖かくて、
いい匂いで、
頼もしくて、
カッコ良くて、
こんなの、こんなの――惚れてまうやんけッ!
「どうかしたの?」
不思議そうな彼女の顔――いやん! 凛々しくて美しいお顔。
キャーーーーーーッ!!!
――って、なになに?
周囲からけたたましい黄色い悲鳴が聞こえるんですけど!?
わたしとカレリンを中心にして周りに頬を朱に染め、目を潤ませてうっとりしている令嬢が1、2、3……たくさん!
「あゝ! カレリン様……今日もなんて凛々しいのかしら!」
「
「あーもうッ! 羨ましいですわ。私が代わりたい!」
こ、こ、これは!
悪役令嬢カレリンは女性人気?
もしかして女の子にモテモテですか?
「やっぱり頼りになる方って素敵ですわ」
「時代は魔法より使える筋肉ですわ!」
「あら、でしたら騎士団長令息のマーリス様にアタックしてみては?」
「あれは使えない筋肉よ」
マーリス……哀れ。
「その点カレリン様は最高よね」
「引き締まった体で逞しいのに女性らしくしなやかで……」
「もしかして貴女もファンクラブに?」
「当然よ!全校の令嬢の殆どが加入しているカレリン様ファンクラブに入らないわけないじゃない」
ファンクラブまであるんかい!?
「もういいかしら?」
「えッ?……あっ、はい」
彼女達の話す内容に気を取られていたせいで、カレリンの言った内容を全然理解しないまま返事しちゃった。
ポーッとしていたわたしは再びふわっと浮遊感を感じ、次の瞬間には地面に足がついていた。
あゝカレリン…さま……ちょっと残念……
はッ! わたしは何やってるの!?
カレリンと接触するのが目的でしょうに!
「って、もういないしッ!」
もうカレリンの姿は見当たらないわ。
まあ、いいわ。チャンスはまだまだあるもの。
この時のわたしは軽くそう考えていたんだけど――
それからわたしは機会ある毎にカレリンに近づいたんだけど、彼女のオーラに気圧されてか、はたまたゲームの強制力か、いつも転んでしまうの。
そしてその度にカレリンにお姫様抱っこされるのよ♡
「あら? またあなたなのね。ふふふ慌てん坊さんね。気をつけなさい」
わたしを降ろして優しく笑うカレリン――ス・テ・キ!
あわあわ……なんて美しいご尊顔。
光って見えて拝みたくなる――ってまたやっちゃった!
もう! またカレリンと話しができなかったわ。既に彼女は颯爽とどこかへ去っているし。
――と、こんな感じでわたしはカレリンとの接触は難渋していた。
そして……
「なにあの子、またなの?」
「私達のカレリン様に露骨に近づいて!」
「抜け駆けよねぇ」
めっちゃファンクラブの子達から非難の目を浴びています。
「あの子ってガルム殿下や側近の御三方にも色目を使っているのよ」
出た! 乙女ゲーム定番の陰口。
婚約者のいる殿下や令息に無闇に近づくなってヤツよね。
「ガルム殿下ねぇ……」
「なんか側近ともども頼りないのよねぇ」
「まったくよ。やっぱり理想の王子様はカレリン様よねー」
ねーっと令嬢達が相槌を打ち合う――って、あれ?
「いっそあの子がガルム殿下を寝取っちゃえばいいのよ!」
えッ!?
「それな!」
あれ?
「そーよそーよ! ガルム殿下との婚約なんて破棄しちゃえばいいのにッ!」
あれあれぇ?
「カレリン様を解放して――ッ!」
展開がおかしい!
「あの子もガルム殿下を堕とせば英雄になれるのにね」
「なんならファンクラブの名誉会員にしてもいいわ」
浮気は推奨ですか!?
「それなのにカレリン様に秋波を送るなんて許せないッ!」
「さっきの見た? お姫様抱っこされて顔真っ赤にしちゃって」
「見たわよ! 目までウルウル潤ませて」
陰口の方向がおかしいッ!!!
「くやし――ッ! 私だってカレリン様にお姫様抱っこされたいッ!」
「あんた抜け駆けは許さないわよ!」
「そうよ! 会則にある鉄の掟を忘れたの!」
「でもぉあの子ばっかりズルい!」
「そうね今度またカレリン様にお姫様抱っこされたら……あの子許さないからッ!」
「次やったら……私が刺す!」
1人病んでる子がいるんですけどぉ!
怖いッ! 恐いッ! こわいッ! 冗談抜きで殺されるッ!
これは本気でヤバいわ。
ほとぼり冷めるまでカレリンには近づけないわね。
仕方がないからカレリンはいったん諦めて、先にマリク・タイゾンとタクマ・ジュダーの方から切り崩そうとしたんだけど――
「キャーーーッ!」
「清掃隊員の方々よぉ!」
「ステキィィィッ!」
「抱いてェ――ッ!」
なんでモヒカンがモテるの!?
あいつら肩パッドの世紀末スタイルなのよ!
「やっぱり時代は筋肉よね!」
「なよなよした男なんか頼りなくって全く興味が湧かないわ」
「その点、清掃隊員の方達は逞しくっていいわぁ」
「世の為人の為、日夜戦う姿がまた凛々しいのよねぇ」
何故この
何でみんな目を潤ませ熱いため息ついてるのよ!
モテる男性のタイプがおかしいッ!
ここって乙女ゲームの世界よね?
もしかして、わたし核戦争後の世紀末に迷って転生しちゃった!?
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