第41話 倒せ!魔人カレリン【マッチング不成立】
――最後は宰相令息セルゲイ・ハートリフね。
彼との出会いイベントが済めばガルム王子ルートの条件を満たせるのよ。
これでいよいよガルム王子と接触できるようになるわ。
やっと目的のガルム王子の攻略に入れるのね。
えッ!?
攻略対象のイベントを消化していたのは逆ハー狙いだったからじゃないのかですってぇ!!
前にも言ったでしょ!
わたしは一夫一妻のコテコテの日本人なの!!
それに、マーリスやヴォルフにも色々な悩みがあって、わたしは解決方法を知っているのにほったらかしになんてカワイソウじゃない?
セルゲイにも他の2人と同じようにやっぱり悩みがあるのよ。
彼は物静かで落ち着いた雰囲気が素敵な男の子。成績優秀で冷静沈着なガルム王子の懐刀って設定よ。
まあいわゆる眼鏡の腹黒枠よ。
そんなセルゲイの悩みは優秀すぎること。
何を言っているんだかわからねぇって?
安心して。わたしにも意味わかんないから。
頭の良い人ってわたし達みたいな凡人には理解できない悩みがあるものなのよ。
まあ、設定によればセルゲイは本の虫となっていて、それだけに実体験が少ないのが悩み。
自分は頭が良いが、それだけではダメなのではないか、頭良いけど、だけど何をしたらよいのかわからない、頭良いけど、でも今でもじゅうぶん仕事はできている、頭良いから。ってことらしい――ムカつくヤツね!!!
さて、そんなセルゲイとの出会いイベントは図書館――
「貴女がラファリィ・マット嬢か!?」
――じゃないやんけぇ! ここ廊下ぁ!
イケメン腹黒眼鏡が泣いてわたしの足に縋りついてるんですけど!
「マーリスとヴォルフから聞いた! 貴女は救世主だと!!」
えッ? 落ち着いた雰囲気?
「助けてくれぇ! もうダメなんだぁぁぁぁぁぁあ!!」
えッ? 冷静沈着?
「あの史上最悪の天上天下唯我独尊女――カレリン・アレクサンドールから殿下を救ってくれぇぇぇぇぇぇ!!!」
「急にそんなこと言われてもぉ!」
「お願いだぁぁぁ!!!」
この動転した状態ではまともに会話にならないわ。
「お、落ち着いてください! また、今度お話はお伺いしますから」
「今度っていつだぁぁぁ!!!」
「ですから…またいつかきっと……」
「いつかなんて日はいつだぁぁぁ!!!」
そんなどこぞの名言吐かれても!
「とにかく今日から我らは
「えええぇぇ!!!」
わたしまだ何もしていないんですけどぉ!?
えー…よく分からない間に攻略対象3人と友好関係を結び、ガルム王子との顔合わせも済みました――これでいいのかな?
まあ、とにかくガルム王子と側近3人の話を
その時に観察したカレリンは噂通りとっても美人だったんだって。しかも民から慕われる心優しい素晴らしい令嬢だったらしい。
そんなカレリンに一目惚れしたガルム王子は、さっそく彼女と婚約を結んだわけなんだけど、観察していた時の彼女の姿は全て擬態だったんだって。
婚約が成立すると、カレリンはその本性を現したらしいの。
確かに容姿は成長するごとに綺麗になっていったんだけど、その性格が悪すぎるらしいのよ。
――ガルム王子の贈り物にはケチをつけるし……
――領民を扱き、恐怖支配を行なっているし……
――何かあれば暴力で解決しようとするし……
――妃教育を疎かにしているし……
――実は魔法を使えないし……
まあ次から次に問題が出てくるわけよ。
だけどガルム王子の方から望んだ婚約なだけに、白紙に戻す事ができないんだって。まあ、そりゃそうよね。
側近の3人は――詐欺だ! 騙された!
と騒ぎたて、カレリンに婚約を撤回させようと立ち向かったのだが
そのせいでマーリスは剣に迷い、ヴォルフは女の子恐怖症、セルゲイに至っては人格が変貌してしまう始末。
ガルム王子は……うーん、なんかまだカレリンに未練がありそうに見えるけど?
まあガルム王子サイドの話しは分かったわ。
彼らの話が真実なら、神様の言うように世界の秩序を乱しているカレリンは危険ね。
だけど一方の言い分だけを聞くのは不公平よね。
ちゃんとカレリン側の話しを聞かないと。
どーせ転生絡みでカレリンとは1度話し合わないといけなかったしね――あッ!
で、ここでわたしは気がついた――カレリンと会ってない!
そうだった! ガルム王子達の攻略にかまけて悪役令嬢の存在を忘れてたわ!
おかしい……
ゲームでは入学初日から絡んでくるのに。
やはり転生者だからヒロインを警戒している?
逆ざまぁ狙っている感じかしら?
だけどクラスが違うとは言え、この1ヶ月あまり全く姿が見えないのはおかしいわ。
あ、そうだ!
序盤攻略対象のマリク・タイゾンがそろそろ退院するんじゃなかったかしら?
うーん、でも……カレリンが転生者でわたしを警戒しているなら、マリクのイベントを起こしていない可能性もあるかな?
とにかく現在のカレリンとマリクの所在を確認しないと。
「まあ、同じ学園の生徒だしすぐに見つかるでしょ」
――とこの時のわたしは安直に考えていたのだった……
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