第55話 見るも無残なハーレムの(元)主の姿
「これからどうしよっか......」
誰も話さないから
「まさか、チカがここまで重症だなんて、予想してたよりよっぽど悪いよ......。藍朱たちのこと、全部忘れて、しかも敵だって認識されちゃってるだなんて......」
結論から言えば、チカの奪還作戦は無事に成功した。
病院の外で待機していた黒服たちは全員、
チカへの牽制のためにも、安全装置を設定した上で、サイレンサー付きの銃口を股間にぶち込んでやった。
発砲した後の熱々の状態じゃないだけ感謝してほしいね。
チカはもっと抵抗するかと思ったけど、最低なことに桃郷凛夏を人質にしてるってことが効いてるのか、大人しく縛られてくれた。
藍朱たちと再会できたっていうのに、喜ばないどころか、嫌悪感丸出しなその対応に涙がこぼれそうになったけど、ひとまずチカに会えた喜びと桃郷凛夏への憎しみで塗りつぶした。
それで、外で待機していた玲有の車にみんなで乗り込んで、そうして藍朱たちは無事にいつもの家に帰宅できて今に至る。
帰宅してすぐ、全裸で気を失ったままの桃郷凛夏を床に投げ捨てて、ベッドの上にチカを裸で縛り付けた。口には轡の代わりに藍朱たちの脱ぎたてパンツを4人分突っ込んで、その上からタオルで縛っておいた。
それで今は一旦放置してる状態。
藍朱たちは作戦に成功したにも関わらず、お通夜みたいな空気を醸し出してる。
それというもの、チカの奪還に成功した今、ここからのプランは練れていなかったっていうのと、チカの容態がここまで重症だとは見積もれていなかったから。
ベッドに転がってるチカは藍朱たちに目を向けるんじゃなく、床に転がってる桃郷凛夏の方を見つめながら静かに涙を流してる。
むかつきすぎて血管が破裂しそうだけど、作戦の疲労とチカへの対処についての無力感から、脱力してしまう。
藍朱たちがもっと早く団結して、もっと早くに助け出せてたら、チカはここまでダメにならなかったかもしれない。
チカをここまで狂わせたのは、誰あろう桃郷凛夏であることに変わりはないけど、チカを護れなかったのは藍朱たちであることもまた、紛れもない事実。
藍朱たちは全員同じ後悔を感じていて、だからみんな口が開けないんだと思う。
自分たちを責めて、悲観して、動けなくなってる。
けど、今こそ......こんな状況だからこそ、藍朱が出る幕なんじゃないかな。
藍朱はバカだし力もないし人脈もないけど、現実逃避する力にかけては誰にも負けないと思う。
衣莉守には散々バカにされてきたけど、並大抵の妄想力じゃあ想像妊娠はできないんだよ。
チカを奪われたショックで命を断ってしまったりしないよう、ショックから逃れるために現実を直視しないようにして、幸せな自分を思い描いて。
そうして正気を保ってきた。いや、正気は保ててなかったかも知れないけど、ともかく命は大事にして、前に進んできた。
そのおかげでチカの彼女のポジションもゲットできた。
だから藍朱は現実逃避が悪いことばかりだとは思ってないんだよ。
今は「どうしようもない」って現実を直視してたって意味ないんだから、そんなのは一旦置いておいて、ポジティブにいた方が絶対に良い。
「ねぇみんな! 大丈夫だよ! ほら、チカは藍朱たちのとこに戻ってきたんだから! 大丈夫、これからチカの心を藍朱たちに引き戻せばいいだけだよ!」
みんなが俯いていた顔を上げて、絶望顔のまま藍朱の方を虚ろな目で見据える。
「ほら、チカを元に戻すための時間はこれからいくらでもあるわけだし、チカの身体だって護れたんだよっ。だから今は、一回喜んでおこうよ!」
藍朱の激励が効いたのか、みんなの目がちょっとだけ光を取り戻した気がする。
「それも......そっか......」
「うん、そうだね、藍朱の言う通りだわ」
「さすがは現実逃避のスペシャリスト。現実を直視しないってのも、悪いことばっかりじゃないわけだ」
ちょっと前までのみんななら、ここで罵倒の嵐だったろうに、藍朱たち、この短い期間で随分変わっちゃったなぁ。
けど、こんな関係も悪くない......どころか心地よく思ってる藍朱もいるんだよね。
だから......このみんなで、ちゃんとチカを取り戻して、幸せなハーレムを取り戻すんだ。
いや、前までは藍朱たちがいがみ合ってて、幸せなハーレムってわけじゃなかったから............1から新しく幸せなハーレムを創るんだっ!
「けど藍朱......。さっきの
「そうだね......。私たちに泣きながら土下座して赦しを乞うなんて......前までのちーくんなら絶対しなかった。それに............桃郷凛夏の命がピンチのときにも、体を張って助けようとはしてなかった......」
「うん......。昔の知火牙くんなら、あたしら含めて女なら見境なく命懸けで助けてきたのに......。その様子もなかった......」
うん、みんなが言いたいことはわかるよ。
藍朱だってそうだもん。
「あの姿を見たら......正直....................................」
「今すぐぶち犯したいって思った」
「「「............っ!?」」」
藍朱はチカのために何もできないって思ってたけど、藍朱にもできることがあるんだ。
こういうときにみんなに前を向かせるための現実逃避術は、藍朱が一番なんだから。
嫌なことは一旦全部忘れて欲望に素直になれば、きっと良い未来を引き寄せられるよ!
「ボクも思った!」 「私も思った!」 「あたしも思った!」
「「「「だよねーーー!」」」」
さっきまでお通夜だったのが嘘みたいに、みんなの目に光が灯っていく。
やっぱりみんなそう思うよね!
よかったぁ。みんなの心の中の素直な感情を引き出せたみたい。
あとは素敵な未来の妄想に花を咲かせて明るくすれば、ここに居るみんなのチカラを合わせれば絶対に実現できるはずだよっ!
「チカのあの情けない姿......。涙なんて流しちゃって、可愛すぎだよ! 藍朱、足とかお股とかべろっべろになめさせたりしてチカに苦しそうな顔させたい! またあの可愛い顔が見たい!」
「だねだねっ。私、お腹の赤ちゃんともう1人赤ちゃん育てちゃうって気分になっちゃった! あの泣き顔はやばかったわね! 私もさせたいな。ちーくんのプライドが残ってるのかわからないけど、赤ちゃんプレイとかさせて、尊厳も全部ぶち壊して泣かせてあげたい!」
「あたしも。あたしの無い胸を一生吸わせてやりたくなっちゃったな。Aカップの胸で窒息寸前になる知火牙くん......。あぁ、それいいなぁ」
「ボクも、絶対にボクたちから逃げられない、みんなで幸せになるしかないってわからせて、泣き叫ぶくらい絞りとってあげたい!」
いいねいいねっ。みんな元気になってきた!
これで藍朱たちは先に進める。
みんなの目標、どれもとっても素敵だねっ。
藍朱たちなら、絶対実現できるよ!
「そうと決まれば、藍朱たちの手で今のチカをぶっ壊してあげよう!」
「「「おー!」」」
ベッドに縛られてるチカは、いつのまにか桃郷凛夏から藍朱たちに視線を移してた。
そこに浮かべてる怯えるような表情が、藍朱たちのヤル気を益々高めてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます