第34話 佳音唯桜の完堕ち1
「早速だけど、次の土曜日か日曜日、空いてない? もしよかったらあたしとデートしようよ」
まだお仕事以外の時間に一緒にいることが少ないからあたしの魅力が伝わってないんだ!
「いや、ですから、俺、彼女いるんですって。デートとか、できませんよ」
「来なかったら、知火牙くんの大事な彼女ちゃんたち、コンクリに埋めて均すよ?」
どっちにしても埋めるけどね。今は都合のいい人質になってね、見も知らぬ彼女ちゃんたち。
「はぁ......
「そりゃあ、あたし、これが運命の出会いって気づいちゃったからね。今まで大事な貞操を護ってきたのは知火牙くんに捧げるためだったわけだし、知火牙くんにまでその態度する意味ないじゃん! あ、もちろん他の男には今までと同じ態度続けるから安心してね?」
他の人にまでこんな感じで接しちゃったら、浮気かなって知火牙くん心配しちゃうかもしれないもんね。
そんな誤解にあたしたちの運命の糸を断ち切らせはしないよ!
そもそも知火牙くん以外の男とか近寄られたくないって本心もあるけどさ。
「んー、そっか。わかりました。じゃあ、次の日曜日ならいいですよ」
「ほんと!? やった♪」
ふふっ、そこで知火牙くんを落とす!
「一応言っておきますけど、俺、ほんとにそんなに簡単には落されませんからね? みんなのためにもそんなに簡単に絆される気もありませんし。だから唯桜さんの期待に応えられないことは覚悟しててくださいね?」
あはは。知火牙くんのそういうちょっと頑固なとこも、好きだなぁ。
それに、そんなことあたしにわざわざ言わなくてもいいのに、あたしが無駄な時間を使わないようにって先に言っておいてくれてるんだよね。優しいな。
「振った女とデートなんて嫌かもしれないけど、日曜日で知火牙くんを振り向かせてみせるからね!」
「うっ、唯桜さん......ウインク上手ですね」
「えへっ、そぉ? 可愛い? 惚れちゃった?」
へへへ、テンション上がっちゃって初めてやってみたけど意外と好感触?
褒められちゃったし、嬉しい。
「あー......。まだ惚れてませんけど、ドキッとはしました。ごちそうさまです」
「あ、あぅ。お、お粗末さまでした......」
何よ何よ! あたしが攻撃するターンなのに!
なんで知火牙くんがあたしにカウンター打ってるのよ!
年下のくせに。年下のくせに!
日曜日は覚えておきないさいよね〜。大人の女のモテテクいっぱい勉強していって、メロメロにさせてやるんだから。
あ、そうだ。知火牙くんは女の子を大事にするんだよね。なら、あたしが知火牙くん以外と一緒になれない、なったら幸せになれないって状況を作ればいいんじゃない!?
「振った女とデートなんて嫌かもしれないけど、日曜で知火牙くんはあたしのものになるから安心してね。あたしも、日曜日までに、一生知火牙くん以外の人に見せられない身体に仕上げてくるから、絶対に見てね?」
「いやぁ。唯桜さんは美人なので確かにほしい気持ちもありますけど。あんまり無茶はしないでくださいよ? 俺、女の人が傷つくのとか嫌なんで」
え〜、なに〜? 知火牙くんってば、もうあたしにちょっと気が傾いてるんじゃないの〜?
これは、あたしが日曜に頑張れば、知火牙くんの方からあたし以外の女を捨てようって気持ちにさせられるかも♪
「わかってる! それじゃあ、日曜日ね! 絶対だよ!」
「あぁはい、今日もお疲れさまでした。また日曜日に」
*****
待ちに待った日曜日。
デートプランもおめかしもバッチリ!
身体は仕上がってるし、最近流行りの媚薬も持ってきた。
万が一に備えて知火牙くんを気絶させるための武器も持ってきた。
いつもより多めに胸パッド詰めて魅力アップしてるし、グロスもせくしー......なやつにしちゃったし!
仕込みは上々だよ。
............お化粧に時間かかっちゃって5分遅刻しちゃってるけど......。
「あ、唯桜さん。おはようございます」
「知火牙くん! ごめんね、待った?」
「いえいえ、唯桜さんがここに来てから瞬間移動してきたんで待ってないですよ」
にっこり微笑みながらテンプレ......とはちょっと違う返しであたしの遅刻を誤魔化してくれる知火牙くん。
優しい......好き。
って、あたしがさらに落とされてどうすんだ!
「あはは、なにそれ。ありがとっ。遅れちゃったお詫びにチューしてあげるね?」
おらっ、くらえ!
年上のお姉さんの魅力に戸惑っちゃえ!
「あ、いいんですか?」
「へ?」
じゅるじゅるじゅるじゅるぷはっ。
「ふぅ。ごちそうさまです」
な、なに? あたし、今キスされた? 深いやつ!?
「あ......あれ? え、なんで?」
「あれ、やっぱりダメでした? すみません、据え膳喰わぬは漢の恥が信条なので、もらえるものはいただこうと思いまして」
あ、え、そ、そっか......。
あたしじゃなくても誘われたら誰とでもキスするんだ。
「......だれでもいいんだ......」
「いやいや、さすがの俺もそこまで見境なくないですよ。彼女以外にはしませんって。えっと、唯桜さんは俺の彼女になってくれるんですよね?」
「そ、そうだけど......。あれ、知火牙くん、あたしと付き合ってくれる、の......? あれ......あれ?」
い、意味がわかんないんだけど......。
知火牙くんは今日落としてみせるって......だからあたしはまだ彼女じゃなくて......でも知火牙くんは彼女にしかしないキスをあたしにして......。
「順番が前後しちゃいましたけど、唯桜さん、俺の4番目の彼女に、なってくれますか?」
「よんばんめ......。でも......なんで?」
あたしが4番目の彼女なんて屈辱だけど............けど、あたしの当初の目標はとにかく彼女にしてもらうことだったじゃん。
だから、それよりもなんで知火牙くんがこんなに急に心変わりしたのかってことの方が気になる。
「なんで、とは?」
「だから、なんで急にあたしを彼女にしてくれる気になったのかってこと! 前は『俺はそんなに安くないよ。キリッ』って言ってたくせに! や、やっぱり本心ではお姉さんの魅力にあてられちゃってた、とか?」
そっかそっか。口では強がり言ってたけど、知火牙くんも男の子なんだね。実はあたしのことが欲しくてたまらなかったのかな?
「いやぁ、唯桜さんの本気を知ったので、そこまでされちゃったら受け入れないわけにはいかないでしょ」
「......? どういうこと? あたしまだ知火牙くんになんにもしてないけど?」
「何言ってるんですか。そのお腹の名前とか、胸のピアスとか、他にも色々開発してくれたんでしょ? 夜の練習も頑張ってくれてたみたいですし。その熱意に感動しちゃいまして。俺のせいで身体に墨まで入れちゃったなら、責任取らないとですよね」
な......な......な......。
「なんで知ってんの!?」
「唯桜さんが頑張って準備してくれるって言うから、いろいろと見たり聞かせてもらっただけですよ」
「へ、変態! 夜の練習とか、あたし自分の部屋で1人でシてたんだよ!? それも見てたの!?」
「見てましたね。すげぇ気持ちよさそうな身体でした」
............っていうか、ちょっと待って?
家でのあたしを見てたってことは......。
「まさかあたしのおっぱいも......?」
「えぇ、胸パッドもいいですけど、俺は詰めてない方が唯桜さんのそのままの素敵さが強調されていいと思いますよ」
〜〜〜〜〜〜〜っ!? やっぱり見られてた!?
こんないっぱいパッド入れまくって、逆に恥ずかしいやつじゃん!
「変態! 変態変態変態変態変態!」
「あはは。俺のこと、嫌いになりました?」
............恥ずかしすぎてムリ......。
知火牙くんの名前叫びながらシてたのも、泣きながらピアス空けたのもバレてるって......。
しかも盗聴盗撮じゃん! 最低すぎ!
こんな最悪な男の子......願い下げだよ!
「愛してるよ! あたしをお嫁さんにして!」
あ、あれー!?
口が勝手に動いちゃった!? 本能に勝てなかった......。
「あはは。よろしくおねがいします。お嫁さんにできるかは、わかりませんけどね」
ちくしょ〜! 爽やかな顔でゴミクズ発言を何度も何度も繰り返しやがって〜!
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