幕間1 ????
「ん............う......ん。ん? あれ、どこだここ?」
目を覚ますとあたりは真っ暗で何も見えない。一筋の光もない空間。
かろうじて感触から腕と足を強力な金属製のなにかで拘束されていることはわかる。あと、多分俺はいま服を着ていない状態だと思われる。
顔になにかの感触があるわけではないので、目隠しされているわけではなさそうだ。
それはつまり、この空間自体が、外界から完全に遮断された真っ暗闇であるということ。
それから............あんまり良い状況ではなさそうだってこと。
............記憶が曖昧だ。
この状況に至った原因なんかの記憶......直近の記憶がごっそり抜けてて、思い出せない。
こんなこと、何年ぶりだろううか。記憶がない、知らない場所にいるっていうのはこんなにも不安になるものだったか。
精神も鍛えてきたつもりだったけど、いざこうやって危険な状況になったら動揺しちまう程度だったわけか。帰還できたら修行し直しだな、これは。
なんにしても今はこの状況を理解して、脱出することが先決だろう。
一旦冷静になったころ、どこからか声が聞こえてきた。
「あ、ダーリン、起きたんだ。おはよ♡ 生きててくれてよかったよ。後追いしなくて済んでなにより。それに、あんなに強い毒を使ったのに、五体満足っぽいね。やっぱりダーリンはすごいね♡」
その声を聞いて、さっきまであやふやだった記憶が呼び起こされる。
あぁ、そうだった。俺、毒を塗った包丁で刺されて意識を失ったんだ。
俺を昏倒させるほどの毒だなんて、よっぽどのものだ。合法ではないのは確定だろう。
ま、合法か違法かなんて些事だ。
まずはあんまり相手を刺激しないようにしつつ、交渉してみるとしようかな。
「おはよう。とりあえず、俺を解放してくれないかな?」
「あはっ。相変わらず冷静だねぇ。こんなになっても取り乱さないなんて、さすがだね、
ピクッ。
ちかちゃん、だって?
「..................」
「あれ? 聞こえなかったかな? ちかちゃ〜ん?」
「....................................」
「おーい、
ちかちゃん......だって?
どう聞いても、漢らしさとは真逆の響きじゃないか。
俺のことをよく知ってて、その上でそんな呼び方で俺のことを呼ぶとは、いい度胸じゃないか。
「俺がそういうふうに呼ばれるのがすげぇ嫌いってこと、わかってて呼んでるんだよね? 覚悟できてる感じだと思っていいのかな?」
「んー、なんていうかぁ、覚悟するのは旦那さまの方なんじゃないかな。これからダーリンがカワイイカワイイ従順な奴隷ちゃんになっていくんだよ?」
ちょっと意味がわからないかな。そんなこと、あるわけがない。
それはつまり、俺が『漢らしさ』を諦めて折れるってことを意味してるわけでしょ。
それは、ない。
「あり得なさすぎて心臓止まるかと思ったよ」
「ふふっ、強がっちゃって、かわいいね? それがあり得るの。ううん、現実にさせてみせる。ダーリンは他の女には見向きもしないで、だーい好きなお嫁さんの足を指の間まで舐めながら、1人でマス掻いて、赤ちゃんの素無駄撃ちしながら、メスイキさせてくださいっておねだりしちゃうような、ださカワイイ男の子になるんだよ」
何を言っているのか。強がりとかじゃない。
本気で自分がそうなるビジョンが1ミリたりとも見えないだけだ。
俺の信念と覚悟を知らない仲でもあるまいに。
「ダーリンはこれから、その真っ暗なお部屋の中で、ほとんど身動きも取れない状態で命の限界まで過ごすの。その中に満ちてるガスにはすっごいキク成分が入ってるから、もしかしたらそれだけで壊れちゃうかも。その後、用意してるおクスリを飲み続けてもらうの。最後に仕上げでご奉仕に仕方を教えてあげれば、あら不思議。旦那さまは『お嫁さんに服従したい、他の何もいらないから可愛がってほしい』って思うようになります!」
「暗闇もクスリも、大抵のものは俺には効かないよ?」
「心配しないで。そのガスはね、精神と脳をぶっ壊して、こわ~い幻覚を見るようにするすぐれものなんだ。どんな屈強な人でも2〜3時間で心が折れちゃうんだって。そのあと最初に優しくされた相手にはたっくさん感謝の気持ちが湧いてきて、大好きになっちゃうんだってさ」
それは......ヤバそうだね。なかなかいい修行になりそうじゃないか。
「あとおクスリの方もすっごいの。少量でも発情しちゃって止まらなくって、脳みそは蕩けて理性が崩壊するし、全身の筋肉も弛緩してろくに動けなくなる上に、感度はすっごい高まるっていうスグレモノなの! 普通はカプセル1個で廃人になっちゃうんだけど、旦那さまは強いからね。それを毎日10錠ずつ飲ませようとおもってるんだ。ついでに注射器と浣腸器で体内にすばやく成分を届けてあげるの! その分、ものすっごくお金かかっちゃったけどね。でも結婚したらダーリンのお金も2人の共有財産にできるし、それで余裕で支払えるよ!」
なるほど。それもヤバそうだ。
俺と彼女の我慢比べ、ってことか。
「けど、そんなことして俺を廃人にして、なんか意味あるの?」
「ありありだよ! そうなったらちかちゃんはもう他の女には頼らない。お世話し放題! かわいいちかちゃんを独り占めできるんだから最高だよ。将来の心配もないよね。お金ならちかちゃんがものすごい金額のお金もってるから大丈夫だろうし、赤ちゃん産む気もないから。だから一生2人っきりでラブラブえっちだけして過ごせるんだよ。幸せしかないでしょ?」
狂っちゃうほど俺のことを好いてくれてるってのは嬉しい話だけど..................ちかちゃんちかちゃん、うるさいよ。
その程度の責め、楽に乗り切って、お仕置きしてあげないとね。
みんな心配してるだろうし、彼女たちの無事も気になる。
俺はさっさと元のハーレムに戻る。好き勝手させないからね。
「じゃあ始めよっか。ちかちゃんが心の底からお嫁さんに服従したいって願ってるって気持ちが伝わってきたら、たくさん甘えさせてあげるからね。愛してるよ、ちかちゃん♡」
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