第27話 鎚玲有が病み落ちしたきっかけ1
私が1人でちーくんを独占できる貴重な貴重な月曜日。
......なのに......なのに! 何よこれ!!!!
「「「アヘェ〜」」」
私もギリギリだけどさ......。この子たち、恥ずかしくないのかな?
白目をむいて足もかっぴらいて上からも下からもヨダレ垂らして......。
無様すぎでしょ。同じ女として恥ずかしいよ。
っていうか、大事な私の月曜日にここまで無遠慮にイキ散らかすなんて、ほんとありえない。
「
ちーくんが呼んでる。でも......。
「ご、ごめんちーくん。私、もう足がガクガクで歩けない......」
「あぁ、そっか。なんだ玲有さんも限界だったのか。そっかそっか」
ニコニコ笑顔で私の方に近寄ってくるちーくん。
私のこと迎えに来てくれるんだね。
ほんの数歩分だけでも、嬉しい。優しくて大好き。
ちーくんがへたり込んでる私の目の前まで来て、私の目を見つめながら頬にそっと手を添えて微笑んでくれてる。
あぁ、大好きだよ、ちーくん。
「今日は玲有さんへのお仕置きの日なんだよ? なんで玲有さんがまだしゃべれる状態なの?」
「............え?」
あ、あれ!?
この流れはチューじゃないの!?
確かに今日、私の月曜日のハズなのにみんながここでイキ散らかしてるのは、私がちーくんを信じきれなかったお仕置きって名目だったけど......。
これ以上のお仕置きもあったの!?
............『なんでまだしゃべれるの?』なんて、最低発言が過ぎるよ......。
それにニッコニコなのに、なんか怖い......。
「すぐに気絶させてあげるからね」
「ひっ......」
だらしなくアヘってる3人がちーくんの向こう側に見える。
あ......これ、
これから私もあの子たちみたいに......ううん。あの子たち以上に情けない格好を晒すことになるんだ......。
「今日も幸せな夜にしようね?」
「ちょっ......待っ......んむ!?!?!?!?!?!?」
ちーくんの宣言通り、私はすぐに他の3人と同じ............いや、前も後ろも全部からお漏らしもしちゃったから、みんな以上に無様な姿を晒すことになった。
目を覚ましたときにみんなに見られてたのが......恥ずかしすぎた。
こんな辱め、あの時以来だよ......。ぐすんっ。
*****
あれは私がまだ高校3年生だったころの話。
「ちーかげくんっ!」
「あ、玲有さん、お疲れさまです」
「お疲れ様〜! 今日の授業もホント疲れたよ〜。もう受験受験ってみんなピリピリしだしててさ〜。空気最悪なんだよね〜」
「あー、もうそろそろそういう時期ですかー。玲有さんは理系ですし、みんなそういう感じになってるのも頷けますね」
「そーなの。運動部の子たちの中にはもう引退して勉強に専念し始めてる子もいるから、余計にね〜」
「なるほどです。玲有さんも、もうそろそろ引退ですか?」
「むぅ〜っ! なんでそんなイジワル言うの! もっと部室でダラダラさせてよ!」
「あはは、冗談ですって。そんなにポコポコ叩かないでくださいよ。萌えが過ぎるじゃないですか」
最近の
私の生徒会長の任期が終わるのと同時に知火牙くんと一緒になんでも屋みたいな部活、総務部を立ち上げて、もう2ヶ月ちょっとが経ってる。
知火牙くんと私の2人っきりの部活。
甘い蜜月をおくれる幸せな空間がここにはある。
最初、知火牙くんから部活を一緒に立ち上げてくれないかってお願いされて話を聞いた時は、よくわかんない部活だし、どうせ滅多に依頼者なんてこないだろうって高を括ってた。
だから、正直知火牙くんと2人っきりで、部室でぼーっとする時間がもっとできると思ってたんだけど......。
そんな私の甘い考えはあっさり打ち砕かれて、毎日、大小数件の依頼が舞い込んでくる忙しい部活動になってた。
ほとんど知火牙くんがこなしてくれるから、私がやることなんて書類の整理とか簡単なことだけだから、受験生になった今も、この先も卒業するまで居座れそう。
思えばこの部活もこの2ヶ月でえらく有名になったもんだ。
まぁ知火牙くんが前々からコツコツ名前売ってくれてたのと、どんな依頼にも知火牙くんが一騎当千の働きをしてくれてたからこその今なんだろうけど。
こうやって知火牙くんと部室でいちゃいちゃすることが、私にとって受験勉強のストレスを発散する数少ない幸せな時間。
私はまだ告白してないけど、知火牙くんの反応を見ても、こんなの実質お付き合いしてるようなもんだよね?
肩を寄せ合って、頭をなでてもらって、共同作業......一緒にお仕事をこなす日々。
知火牙くんは私のこといつも可愛いとか萌えるとか綺麗だとか素敵だとか褒めてくれるし、どう見たって満更じゃあなさそう。
いつもさっさと帰っちゃうのと、ときどき行方がわからなくなったりすることがあることを除けば、不満もなにもない。
この学校で一番知火牙くんと一緒の時間を過ごしてるのは、間違いなく私。
私が知火牙くんの人生を支えるパートナー。ぐへへへへ。
その時間を守るために、無駄にたくさんくる入部希望者を面接と称して排除してるんだから、私ってほんとよくできたお嫁さんだよね。
知火牙くんには面倒をかけないために、入部希望者がいることは内緒にして、面倒事は私が処理してあげてるの。これが内助の功ってやつでしょ。
でもそろそろ私たち、次のステップに進むべきだと思わない?
今日は丁度......。
「あ、そうだ。玲有さん」
「はっ、はい!」
「あはは、なんでそんなに緊張してるの?」
「い、いや、緊張なんてしてないよ!? そ、それで? 知火牙くんは何を言おうとしたの?」
じっと知火牙くんの横顔を見つめてたら急に話しかけられて吃っちゃった。
知火牙くんの真剣な眼差し......。しゅてき......。
「今日って、玲有さんの誕生日ですよね?」
「う、うん! そうなの! 私、今日で18歳になったよ!」
そう。何を隠そう今日は私の誕生日!
ふふっ、知火牙くんなら絶対覚えててくれてると思ったよ!
「おめでとうございます! ハッピーバースデー!」
「どーもどーも! ありがとね〜」
「去年は出会ったばかりで玲有さんの誕生日を知らなくて逃しちゃってましたからね......。あれは痛恨でした」
「そんなの気にしなくっていいんだってば! それに後でお祝いくれたでしょ? あれにはびっくりしちゃったよ」
去年の誕生日。
私が知火牙くんと出会って間もなかったから知らなくて当然だった。なのに知火牙くんってば、あとあと私の誕生日を知ったときに贈り物をくれたんだよね。
しかも、何時間も並ばないと買えないケーキに、1日数個限定のすっごくレアなお菓子。
私のために時間をかけて入手してくれたっていう事実が嬉しかった。
今年も、別にモノがほしいわけじゃないけど、期待しないわけない。
誕生日当日に、知火牙くんからもらえるプレゼント。しかも去年と違って、もう実質ラブラブな私たち。
必然的に期待値も上がるってものだよね。
「それで、玲有さん。今年の誕生日プレゼントなんですけど......」
「はっ、はい!」
「もしかしたら受け取ってもらえないかもしれないんですけど......」
きっ......きたきたきたきたきた!?!?!?!??!?!?!?
私が受け取らない可能性があるプレゼント。
知火牙くんは女の子が嫌がる贈り物なんて絶対にしないだろうから、気持ちの問題がおっきいものとかなんじゃない!?
それってそれって......つまり......知火牙くん自身をプレゼント、とか!?
きゃー! なにそれ素敵すぎ! 大好き知火牙くん!
受け取るに決まってるじゃん!
「部屋......をプレゼントしようと思ってまして」
「................................................はへ?」
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