第24話 模久藍朱と三頭衣莉守の完堕ち1

「え? 知火牙ちかげ? いま、ボクに彼女になってほしいって、言ってくれた?」


「チ、チカ? ......な、何言ってるの? さっき藍朱あいすのこと彼女にしてくれるって言ったじゃん! なんで衣莉守いりすちゃんに告白してるの!?」



 理解不能な急展開に藍朱の脳は処理が追いつかない。


 幼稚園のころから一緒の藍朱と違って、小学校に上がってから後からしゃしゃってきた幼馴染の衣莉守ちゃんが無様に負けて、藍朱が勝利を収めたのです。って思ってたら、さっき藍朱に告白してきたばかりのチカが衣莉守ちゃんに告白してる。あんなに藍朱に服従する気マンマンな姿勢だったくせに、チカが別の女に媚びようとしてる。


 何が起きてるの?


「あぁ、そうだよね、いきなり言われても混乱しちゃうよね」



 う、うん、混乱しちゃってるよ。

 衣莉守ちゃんもポカンってしてるじゃん。


「あ、もしかして冗談? 衣莉守ちゃんへの告白はジョーク? そうだよね? そうなんだよね!?」



 それなら許せる。いや許せないけど。あとでお仕置きするけど。

 可哀想な衣莉守ちゃんに最後の情けをかけてあげたんだと思えば、藍朱の溜飲も下がる。


「いーや、冗談なんかじゃない。俺は2人ともを彼女にしたいんだ」



 ..........................................................................................。


「「何言ってるの?」」



 奇しくもハモってしまう藍朱と衣莉守ちゃん。

 でも誰だってこう返しちゃうのはしょうがないでしょ。


「だから、2人とも、俺の人生のパートナーになってほしい。必ず2人とも幸せにするから」


「そ、そんなの認められるわけないよ! 知火牙......藍朱に脅されてるの? それなら大丈夫だよ? ボクが藍朱を消してあげるから......。だから遠慮なくボクだけ選んでいいんだよ?」



 は? 衣莉守ちゃん、なに言ってんの?

 ......あ、そうか。こいつ、やりやがったな!?


「脅してるのはそっちでしょ、衣莉守ちゃん。最近ストーカーが過激になってるなって思ってたんだよね。そういうことだったんだ。チカ、大丈夫。藍朱を選んで? 絶対に藍朱がチカを衣莉守から護って見せるから!」



 こんなぽっと出の幼馴染なんかに知火牙を害させはしない。


「は? 知火牙を守るのはボクだよ。藍朱じゃ知火牙を守れない。これまでだって、そうだったろ? 今の知火牙の状況をどれだけ知ってるの? ボクは違うよ。ボクは知火牙のことなら何でも知ってるよ。知火牙が毎日家で何食べてるのかも、どんな音楽を聞くのかも、どんなオカズで抜くのかも、......どんなプレイが好きなのかも。それに、誰を本当に好きなのかもね! その相手はもちろんボクだよっ!」


「衣莉守ちゃん..................妄想もいき過ぎるとこんなにも痛々しい生き物を生み出してしまうんだね......。藍朱、気をつけるね」



 衣莉守ちゃん、可哀想に。

 ここまでイカれちゃったら、もう手遅れだよ。南無......。


「ふっ、信じてないの? 藍朱っていっつもそうだよね。哀れすぎて涙ちょちょぎれるよ」


「......どういう意味?」


「知火牙はね? 昨日の夜言ったんだ。オナりながら、僕の名前をね! しかも、名前を呼んで『好きだ』って言った瞬間、果てたんだよ? こんなの決定的でしょ?」



 ......衣莉守ちゃんの目。嘘ついてない。

 そんなのありえない......。チカ、ちゃんと言って! 『適当なこと言うな』って怒って!


「チ、チカ? 嘘............だよね?」





「なんで衣莉守が知ってるのかは気になるけど......。いや、嘘じゃないよ。昨日のおかずは衣莉守と藍朱だったから。名前を呼んだかは、覚えてないけど」


「「へぁ?」」



 チ、チカ? な、何言ってるの?


「ち、知火牙? 今なんて言った? ボクと藍朱の2人ともオカズにした......って言った?」


「うん、っていうか、俺昔から自分でする時は藍朱と衣莉守の写真とか想像とかだったからね。思えば俺、昔から2人のこと好きだったんだろうなぁ」


「チ、チカ......」 「ち、知火牙......」










「「って、そうじゃない!」」



 しんみりした空気につい流されそうになっちゃったよ!

 そして、またしても衣莉守ちゃんとハモっちゃった。いい加減にしてくれないかな。


 っと、それよりも今はチカの目を覚まさせるのが優先。

 藍朱と衣莉守ちゃんのどっちも好きだなんて、ダメだからね。


 チカは藍朱にだけ愛を注がなきゃいけないの!


「ダメだよチカ。恋愛においてはね。出会ってからの長さが全てなんだよ。つまり、幼稚園のころからずーっと一緒の藍朱以外、チカのお嫁さんに相応しい人はいないんだよ! ストーカー女はおとなしく警察さんと仲良くしてたらいいんじゃないかな! それでチカは藍朱だけをデロデロに甘やかすの。それ以外に、道はないよ」


「藍朱は黙ってなよ。キャンキャン喚くだけで実際にはなんにも行動しない木偶の坊の藍朱は、今回もおとなしくしてれば良いんだよ。知火牙? ボクは知火牙のためならどんなことだってしてあげるよ? 始末して欲しい人がいたらボクが殺るし、知火牙が希望するなら恥ずかしいことだってしてあげる。こんな意気地なしは放っておいて、ボクと2人っきりでイチャイチャし続けるのが、知火牙にとって唯一幸せな未来だよ」



 こんのアマァ!

 言わせておけば、藍朱のこと木偶の坊だとか意気地なしだとか好き勝手言って!


 こうなったら............衣莉守ちゃんのことはここで刺す!

 チカに振られたら刺してお願い聞いてもらおうと思ってもってきてたナイフだけど、ここで衣莉守ちゃんに使う!



 ......!? 衣莉守ちゃんも武器を!? あれは......スタンガン?


「ふぅん。そっかそっか、そういうことするんだぁ。衣莉守ちゃん、スタンガンなんて味な真似するね。でもそれだって、大したリーチはないでしょ。バチバチされる前に......仕留めるっ!」


「そっちこそ、刃物を持ち出すなんて、物騒だなぁ。藍朱って思ってたより頭イカれてたんだね。誤解してたよ。ごめんね?」



 ............一撃で楽にしてあげる。

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