第19話 ちょっとやりすぎる三頭衣莉守

「ねぇねぇ、知火牙ちかげ?」


「ん?」


「知火牙のこと、そろそろ社会的にころしてもい〜ぃ?」



 ボクが可愛くお願いしたら、ワンチャン知火牙は頷いてくれるかも。


「ダメだけど、なんで?」



 流石に駄目だったか。

 それに知火牙、全然ビビってない。ボクが口先だけだとでも思ってるのかな?

 ......思ってないか。ボクが本気でやってもなんとかできると思ってるんだろうなぁ。


 まったくもぉ。『なんで?』なんて野暮なこと聞くなぁ。


「理由聞かなきゃ分かんない?」


「んー、どうだろ。言ってくれる?」


「そりゃ、そろそろ他のセフレのみんなは切って、ボクだけに専念してほしいからだよ。でもこんなこと言っても知火牙は言う事聞いてくれないでしょ? 他のことならなんでも聞いてくれるのに、これだけはずっとだめだもんね。だからそろそろ強硬策に出たほうが良いかなって思ってさ」



 こんなのわざわざ言うまでもないことでしょ!


「なんで急に?」



 いや、急じゃないから! 前から言ってるでしょ!


「急じゃないよ! 知火牙が社会的にオワってくれたら、ボクが知火牙を周りの人全員から遠ざけられるように操作してあげるから! ついでに他のみんなも社会的にぶっころしさえすれば、知火牙が頼れるのはボクだけになるし、ボクと知火牙はずっと2人っきりで一緒にいられるようになるでしょ?」


「なるほど」


「でもね、ボクだって知火牙にヒドイことはあんまりしたくないんだぁ。だから知火牙、社会的に自殺してくれない? 名目は、そうだなぁ......嫌がるボクを監禁して無理矢理レイプして孕ませて、堕ろさせるために殴る蹴るの暴行を加えて中絶させたあげくクスリ漬けにして脳みそぶっ壊した、ってのをSNSで謝罪するってのはどうかな? 手っ取り早く世界中から確実にボッコボコにしてもらえると思うんだ」


「うーん、それはちょっとなぁ。衣莉守の評判も下がっちゃうのはなぁ」



 ダメかぁ。っていうか、自分の評判じゃなくてボクの評判を気にして嫌がるあたり、知火牙だよねぇ。

 ま、今はまだそれはいいよ。


「じゃあ他のことでボクの言うこと聞いてくれる? もっとたくさん愛してほしいな?」


「あぁ、もちろん。衣莉守のお願いならできるだけ聞かせてもらいたいな。いくらでも愛を注ぐからね」



 ふふっ、ドアインザフェイスってやつだね♪

 なんて、そんなことしなくても知火牙はボクのお願い聞いてくれるのはわかってるけどね。


 それにボク、聞いてるんだからね。

 先週の木曜日は藍朱あいすとイジワルの日したんでしょ。


 藍朱が調子に乗って知火牙の嫉妬を煽って煽って、煽りすぎてくれたおかげで、ボクらは今週、木曜日も知火牙といちゃいちゃできる。

 たくさん知火牙に愛されようとして墓穴を掘ったね、藍朱。超ブザマざまぁ!


 ボクは墓穴掘るのは嫌だけど、藍朱から聞いたイジワルの日の知火牙からの攻めはものすごかったらしい。

 あの日・・・以上の攻めだったらしいし、相当だと思う。


 羨ましい......。ボクもしてほしいな......。


「俺は衣莉守のこと、すごく大好きだよ。ずっと一緒にいよう」



 ......え?

 もしかして知火牙、ボクと永遠に2人っきりになることを認めてくれて......?


「でもね、衣莉守。いま衣莉守がぶっころすなんて言ったみんなも、俺の一番大切な人たちなんだよ?」



 うわぁ。知火牙の目が凶暴になってる。

 ボクを脅して取り下げさせようとしたって無駄だよ。知火牙の怖い顔なんて見慣れてるんだからね。

 15年来の付き合いは伊達じゃないよ。


「ボクよりも大切なの?」


「比べられるものじゃないさ。全員、俺の一番なんだよ」



 爽やかな笑顔で良いこと言ってる空気出してるけど、ありえないくらい最低なこと言ってるからね?


 知火牙ってそういうとこあるよね。

 最低発言をゴリ押しで通そうとするよね。


「いつまでもそういう誤魔化し方がボクに通用すると思ったら大まちがんむぅ!?!?!?!?!?」



 最後まで言う前に急にキスで話を遮られた!?


 あっ......。気持ちぃ................................................。







 ................................................何分ボクの舌しゃぶってるんだよ。

 ボクもなに必死に知火牙の舌を求めてるんだよ......。チョロすぎるじゃん。


「ぷはっ......知火牙ぇ。はぁはぁ、もっとぉ」


「あぁ、いくらでもするよ。だからさっきの話はもういいよね?」



 もぉ、キスの快感でボクを黙らせるなんて、最低だよ。


「............ほんと、知火牙ってゴミクズだよね」


「嫌いになった?」



 微笑みながら聞いてきちゃってさ。

 ボクが絶対に嫌いになれないことわかってて、ボクに言わせようとしてるんだから、質悪いよ、まったく。


 まぁ......ボクの顔が蕩けきってて、キスを求めまくってるんだから、嫌いだなんて言うわけないことくらい誰でもわかっちゃうか......。

 くそぅ。止めたいのに止められないんだよ。


「........................知らない。いいから早くボクにもっとキスしろよ......」


「あはは。了解、お姫様」



 ジュゾジュゾっていやらしい音を立てながらボクの舌をしゃぶり尽くす知火牙。


 あ゛〜、幸せぇ〜♡

 もっとボクの唾液を知火牙の身体の中に入れて〜。


「ふぅ。美味しいよ、衣莉守」


「うにゅぅ、ボクもぉ」



 知火牙の執拗に深いキスにドロドロに溶かされちゃった。

 ............あれ、知火牙、なんでそんなあくどい顔、してるの?


「衣莉守。おおかた藍朱からイジワルの日の話でも聞いて妬いちゃったとかでしょ? だから急にまた俺やみんなをどうこうするなんて言い出して俺を怒らせようとしたんじゃない? 違う?」



 図星も図星。ど真ん中ストレートをばっちし射抜かれてる。


 けど、そんなの恥ずかしすぎじゃん。

 ボクもイジワルの日してほしいって直接言った方がまだマシだったじゃん。

 イジワルの日をしてほしいからって、わざと知火牙を怒らせようと画策してたって遠回りなことしてたのバレるなんて、無様の極みじゃないか。


 そんなの、気づいてても黙っててよ。

 こういうときの知火牙って、ほんと意地悪だし、クズだよ。

 ボクがほしいイジワルはこういう精神攻撃じゃないし。


「........................................................................知らないよ」








「安心してよ、衣莉守」


「......?」


「今晩は、衣莉守にもあの日・・・以上の体験をプレゼントするからね。もちろん、衣莉守が『許して』って泣き叫んでも、終わらないからね?」


「ひっ」



 知火牙の表情が......。にこやかな表情してるのに、目は笑ってない。

 普段の行為でもボクは泣き叫んで許しを請うて、叫びながら謝って、喘ぎすぎて声を枯らして、朝方には涙と涎と汗とその他いろんな液体でぐっちゃぐちゃにされてるのに、本当にそれ以上があるの?

 本当にあの日以上の夜に、なっちゃうの?


 知火牙が言う『あの日』。

 ボクが知火牙のものになった日。


 あのときは幸せとショックが同時に来た特別な日だけど、明日のことを思うとちょっと怖いかも。

 でもボクの心臓はドキドキして、未知の快楽を楽しみにしちゃってる。


 今日の知火牙は本気ってことなんだよね。だったら今日、逆に知火牙を屈服させてあげたら、ボクだけの虜にできたりするんじゃ?

 よしっ、頑張っちゃうぞ!











「あと、俺を惑わそうとする悪い衣莉守にはお仕置きとして、来週の水曜日はみんなで遊ぶ日にするから」


「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?!!?」

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