第13話 佳音唯桜の思い出(後)と画策
「ちょっとそこの彼〜、そういうの辞めましょうよ〜」
「え?」
「あ゛ん?」
「欲望に任せて女の子に怖い思いさせるなんて、男として一番やっちゃいけないことですよ」
「何だお前? 僕に言ってんのか?」
「え、あなた以外に男いませんよね? あ......それとももしかして女性でした? だったらすみません! 女性を男と間違えるなんて俺、一番やっちゃいけないことしちゃいました......」
いやいやいやいやいやいやいやいや
「はぁ゛!? 僕が女に見えんのか?」
「あぁいえ、よかった違いますよね。あまりにも女々しいことをおっしゃっていましたので、同じ男だと思えなくて、つい」
な、なんかよくわかんないけど......いいぞ御霊くん! もっと言ってやれ!
「誰か知らないけど、僕たちは愛し合ってんの。僕と
だ、騙されないで助けて!
さっきから怖くて声出せないけど......。
「あぁ、全然イヤですね。
「何いってんだオマエ? 頭イってんのか? キモいんだけど」
いやいや、あんたブーメラン刺さってるからね。
「佳音さん、もう行ってもらって大丈夫ですよ。気をつけて帰ってくださいね」
「え? でも......」
「何勝手なこと言ってんだ。あんまふざけたこと言ってっと、潰すぞ?」
そんなの危ないよ! こいつ、キモさもそうだけど、お金も確かに凄いし。
こんだけ持ってるってことは何かヤバいやつらとかも動かせちゃうんじゃ......。
「あはははは、弱い犬ほどよく吠えますよね。
えっ? 御霊くん、なんでコイツの名前知ってるの?
「......お前、なんで僕のこと知ってる?」
「知ってますよ〜。俺、身近な人の周辺情報はそれなりに調べてるんで。特にあなたみたいなヤバい人はよくチェックするようにしてるんです」
え、えぇー......。ストーカーみたいなもんじゃん......。
御霊くん、爽やかキラキラ系に見えて、結構ヤバい人だったか......。
あ、御霊くんがヤバい人っぽくて、逆になんかちょっと落ち着いてきた?
掴まれてた腕も御霊くんが解放してくれたし。
「......御霊くん、あたしのストーカーしてたの?」
「ストーカーとは心外です。自分と自分の周りの人を守るための自衛をしてるだけですよ。もちろん佳音さんだけじゃないですよ。大学の知り合いも、マクロのみなさんのことも、あらかた調べてます」
それは......もういっそ凄いね......。
「きっしょ。おまえ、キモすぎだろ」
「いやだから、あんたの方がキモいから!」
「冗談でもそんなこと言うなって唯桜。これはお仕置き追加だな。前だけじゃなく後ろの穴もぶっ壊してやるからな。覚悟してろよ?」
ひーっ、キモキモっ!
「ふっ、丙午さん、死ぬほどキモいですね。でも大丈夫、俺がまっとうに戻してみせますよ! とりあえず佳音さんは帰ってください。気をつけてね」
「で、でもっ!」
「俺、次のシフト明後日なんですけど、佳音さんと被ってましたよね。そんときには仕上げておきますから。ゆっくり休んでください!」
白い歯をキラーンってさせて言ってるけど、ほんとに大丈夫かな......。
でもあたしがここにいても、邪魔になるだけ......かな?
「佳音さん、本当に、大丈夫ですから。ね?」
「あ、う、うん。わかった。そ、それじゃあ、明後日? かな? またね?」
「はいっ、お疲れさまです!」
結局、実際に二日後に一緒に仕事し終わった後、知火牙くんが丙午のやつを連れてきて、心底驚いた。
あいつの表情も雰囲気も柔らかくなっててすっごい丸くなってるし、お金の話とかもしなくなってるだけじゃなく、あたしに昔からのこと全力土下座して二度と近寄らないって誓ってくれた。
*****
っていうね。
けど、目障りな幼馴染が消えてくれた代わりに、余計なことを
あたしが高校2年のときに一瞬だけバイト先の先輩と付き合ってキスされそうになって身体目当てなの丸出しでムカついたから即行別れた話とか、それを愚痴ってたただの幼馴染だった丙午に無理矢理くちびる奪われた上に、おっぱい揉みしだかれたこととかをバラされてた。
知火牙くんのカッコイイ話の1つでもあるけど、あたしにとってもあんまり蒸し返したくない話。
あいつが言わなきゃ知火牙くんにバレることもなかったのに......っ! ちょっと改心したからって許されると思うなよ!
ま、こんなことで知火牙くんがあたしに夢中になってくれるっていうなら、それもいいか。
「ふふっ、大丈夫。知火牙くんは女たらしの最低男だけど、あたしのこと絶対護ってくれるし、知火牙くんだけ、愛してるからね♪ あたしは絶対離れないよ。っていうか離さない。離れさせない。ずっと知火牙くんのもの。知火牙くんも、あたしのもの。何があっても逃さないからね? あたしを捨てようとしたら、許さないよ? どこに逃げても見つけ出して、あたしに泣いて謝るまでお仕置きするから」
「唯桜さんのお仕置きなんて、楽しみですねぇ。ま、俺が唯桜さんを手放すこともないから、その機会は訪れないわけですけど」
......はぁ。ま、効くわけないよね。
「あの幼馴染くんのことはほんとになんとも思ってなかったんだよね......?」
「もぅ、それ辞めてってば。あいつとはホントになんでもなかったんだって。そんなつもりもなかったし。わかってるでしょ?」
「でも、初めてのお付き合いも、初めてのキスも、俺以外の男にあげちゃったんでしょ?」
「うっ......。イジワル言うのやめてよ......。しつこい男はかっこよくないよ?」
「あー......確かに。もうやめます、ごめんなさい。嫉妬してるのは本当ですけど、今は唯桜さんの心も身体も、俺に向けてもらえてますもんね? 俺、それだけで満足ですよ」
「......それはそうだけど......。知火牙くんの目、全然満足してないじゃん............。お、怒ってる?」
「まさか。怒ってませんよ。大切な唯桜さんに怒りを抱くなんて漢らしくないこと、ありえませんよ」
そういいつつ、やっぱり知火牙くんの目がギラついてるじゃんか。
「ただ、またちゃんとマーキングしておかないとって思ってるだけです」
「まだヤるの!? 獣だ! 肉欲に飢えた獣がここにいる!」
「失礼な。肉欲だけじゃありません、愛に飢えてるんです! もらう方も、与える方も! 唯桜さんが俺を捨てないように! 体じゃなくて、心にマーキングしておかないと。だから今日はもうソウイウコトじゃなくて、ゆっくりイチャイチャして愛を育みましょう?」
「も〜! 知火牙くんはそういうとこ、ほんと変わんないよね!」
「唯桜さんは、変わりましたよね。あの頃の堅物な唯桜さんからは想像もできないくらいに柔らかくなりました」
「う、うるさいなぁ!」
いい加減調子に乗りすぎ!
「知火牙くん。あんまりふざけてると......あたしを嫉妬させるようなことし続けてると、手足切り落として、閉じ込めちゃうよ? あ、あと、あたしとおそろいの乳首ピアス開けて、背中にあたしの名前彫ってあげる。他の女が入る余地ないくらい、ひっどい身体にしてやる。......あ、これ、別に今やっても、いいかも?」
ま、どっちにしても
あと、イキリすぎてる知火牙くんも、そろそろキッチリお仕置きしてあげるから。もうちょっと待っててね?♡
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます