第7話 月曜日の鎚玲有

「あははははっ、それはないでしょ!」


「ははっ、だねっ」


「あぁ、私、とっても幸せ。いつまでもこうしてちーくんとイチャイチャしてたいよ......」


「そうだね。俺もおんなじ気持ちだよ。愛してるよ、玲有れいあさん」


「私も」



 ほんと、幸せだ。


 こうやってちーくんとソファに並んでゆったりテレビを見て笑い合うなんでもない時間。

 肩に腕を回すようにして頭をポンポンってされる何気ない時間。


 月曜日の夜は私の時間。

 他のどの女も邪魔しに来ない。ちーくんと私だけのラブラブタイム。

 週末の乱交のときみたいに愛を分割されたりしない。


 ちーくんがすべての感情を私だけに向けてくれるひととき。

 身体で繋がらなくったって、心が繋がってることがわかる幸せな時間。


 至福の時間だぁ。


 ちーくんの胸板、安心するなぁ〜。

 ほっぺすりすり擦りつけたら頭なでてくれるし、最高しゅぎる〜。



 ......あっ。ちーくんが切なそうに私の顔を見つめてきてる。

 ふふ、わかってるよ、チューしろって合図だよね。よろこんで♡


 むちゅーーーーーーーーーぱっ。


 ふぅっ。うん、気持ちいい!


「あはっ、ありがと、玲有さん。でも俺、もっとキスしたいな」


「うふふ。私もよ。でも、あと1回だけね? 2回以上しちゃったら、ちーくんのソレ、抑えらんないでしょ?」



 ふふっ、ガッチガチにテント張っちゃって。

 わかりやすくサイン出してくれて可愛いんだから♡


 でも、今はだーめ♡


「お腹のこの子が安定期に入るまではエッチはなしだよ?」


「うん。そりゃそうだ。万が一にも流れたりしたら哀しいし、玲有さんの身体にも負担がかかるからね。もちろんわかってるよ」



 ぐへっ。ちーくんの苦しそうな表情。

 今すぐにでも私を食べたいって顔に書いてるよっ。


 でも私と私たちの子どものことを慮って、ちゃあんと我慢してくれる優しいところも、大好きだよ!

 お腹の赤ちゃんもきっと、ちーくんと私に似て良い子に育つよ。


「そんな切なそうな顔しないで? さっきのはジョーダンだよ。2回以上してシたくなっても、手と口なら大丈夫だから!」


「でも、妊娠したら匂いとかムリになることあるっていうじゃないですか......。もしかしたらもう咥えるのはムリかも......」



 あっははは。ちーくんはホント変なところで気遣い屋さんだよね。


 気絶するまで遠慮なしにヤリまくったかと思えば体調を気遣ってくれたり。

 妊娠しても責任とって結婚する気はないって言ったかと思えば一生幸せにするから産んでほしいってお願いしてきたり。

 妊婦を襲おうとしたかと思えばつわりとか妊娠で現れる身体の変化に気を遣ってくれたり。


 ..................まぁ、間違いなくクズ男の手口なんだけどさ。

 DVして優しくしてって繰り返す、よく聞くやつとおんなじパターンだけども!

 それはわかってるんだけどっ!!!


 好きな気持ちが止められないんだからしょーがないじゃん。

 あーぁ、私ってほんとバカだなぁ。


「んーん、大丈夫。ちーくんのなら、オエってなってもがんばるよ。もし私がオエってなるのが気になるんだったら、手だけでするし」


「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」



 即断即決が信条のちーくんがこんなに悩むなんて、ほんとに珍しいなぁ。


「やっぱ今日はやめよう!」



 !?!?!?!?!?!?!?


 嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘だっ!

 えっち大好きのちーくんがなんにもしない!?


 そんなのおかしいでしょ!

 え、もしかして私とスるのが嫌になったとか?


 私はもう、抱いてもらえない?

 女として見てもらえない!?


 ま、まさか......私はもうちーくんの中で、自分の女じゃなくて、子どもの母親になったとか!?


「えっ!? なんで!?!? 私、なんかやっちゃった!? 私の手、気持ちよくない!? やっぱり妊娠した女なんてもう女として見れない!?!?!?!? もしそうだったら私、この子とちーくんをぶっ転がして永遠に一緒にいられる場所に逝くけど!?!?」








「いやいや、玲有さん落ち着いて。俺は一生玲有さんのこと女として見るし、何度も孕ませたいと思ってるし、その子も立派に育てたいし、玲有さんと添い遂げたいよ。悪い意味で言ったつもりじゃなかったんだ!」


「あうっ。ぐすっ......。............どういう......こと............?」



 うぅ。そんな優しげな表情して、ずるいんだぁ。


「いや、別に不思議なことじゃないでしょ? 大事なパートナーが妊娠して不安定な時期なんだし、俺が欲望のまま突っ走るなんて、まったく紳士じゃないし、漢らしくないじゃん。俺、そんなことするわけにはいかないしさ。だから、我慢しようと思って」


「............私に魅力感じなくなったとかじゃ、ない?」


「そんなわけ無いってば。なんなら前まで以上に色気がでてて、正直すぐにでも押し倒したいくらいですよ」


「あっ......ふふっ。そっか。それならよかった! じゃあ遠慮しないで! 私もちーくんにいろいろシテあげたいし、ウィンウィンだよ!」



 だからほら、欲望を解放して良いんだよ?


「本当かなぁ。玲有さん、すぐにムリしていろいろ背負い込んじゃうとこあるからなぁ」


「む〜。確かに昔の私はそうだったかもしれないけどさぁ。いつまでも昔の私のままじゃないよ? もうすぐママになるんだしっ♪」


「まぁ確かにそうだね。玲有さんもあの頃に比べたら、大分素直に甘えてくれるようになったよね」


「でしょ? けど、あの頃はいろいろ背負い込む質だったからこそ、ちーくんと出会えた部分あるし、それはそれで悪くなかったのかもね〜」

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