悪い貴族は全員捕獲じゃー!
「スクエド!」
「ニーズ叔父様!」
バダー公爵は城を飛び出ると、ドラゴンの前に立つ少年王スクエドに声を掛ける。
「こ・・・これは?」
「大丈夫です、皆さん味方です。」
驚きながらも少年王スクエドの方へ歩くと手を握る。
「無事でよかった、アンバスとスメル卿は?」
「神モート様より冥界へ連れていかれました。」
スクエドは後ろでアイトネと並ぶモートを見る、バダー公爵はモートの方へ向きなおし片膝を突く。
「神モート様、スクエドをお救い頂き有難うございます。」
モートはバダー公爵を見ながら微笑む。
「構わない。」
ポツリと呟き返すモート。
「アグリは?フォーリオ・アグリ侯爵は何処へ行った。」
軍を動かしていたアグリが見当たらずバダー公爵は女性騎士を見つけると声を掛ける。
「テンシア、アグリは何処だ。」
「・・・その方が、その・・・魔法だと思うのですが・・・消滅しました。」
テンシアと呼ばれた女性騎士はアイトネを見る。
「貴女様は・・・?」
『アイトネよ。』
アイトネは名前を言うと千春が話しかける。
「アイトネはこの世界の創造神ですよ。」
「そ・・・創造・・・神?」
驚くバダー公爵は立ち上がり礼をする。
「申し訳ありませんでした。」
深々とお辞儀をするバダー公爵。
「ニーズ叔父様。」
「どうしたスクエド・・・いや、スクエド王。」
「これを。」
スクエドは真っ白な紙を取り出しバダー公爵に渡す。
「なんだこの美しい紙は。」
綺麗に線が入り、在りえないほど真っ白なノートの紙を見て驚きながら紙を開く。
「・・・これは?」
「獣人の国、ロンガー国へ陰謀を企む者達です。」
バダー公爵をジッと見つめながら話すスクエド、バダー公爵はノートに書いてある名前を読み続ける。
「この情報は何処で?」
「神モート様、女神アイトネ様より授かりました。」
「神が・・・?」
「はい、聖女チハル王女殿下のおかげで御座います。」
「聖女だと!?」
聖女と聞きバダー公爵はスクエドの目線の先に居る少女を見る。
「聖女チハル様は本物の聖女様です、あの・・・父を欺き死に追いやった・・・いえ、もしかすると殺したのはあのランスルーセン教の偽聖女シュリン・・・あの者とは違います。」
「そうか。」
バダー公爵は千春を見つめる、そして貴族の礼をすると声を上げる。
「テンシア!」
「はいっ!」
「今すぐこの紙に書いてある貴族共を束縛せよ。」
「!?」
「ココに居る兵士全員連れていけ。」
「しかし!命令状が有りません!」
「構わん、逆らう様ならその場で切り捨てろ、結果は変わらない。」
バダー公爵は表情を変えずに言うが声に怒りが混じっていた。
「ねぇハルト。」
「なんだ?チハル。」
「ドラゴン達も手伝って良いかな?」
「良いぞ。」
「良いの?」
「あぁ、結構名前が多かったからな。」
「うん。」
千春はエンハルトの確認が終わるとバダー公爵に声を掛ける。
「あのー、すみませ~ん。」
「如何された聖女様。」
「貴族の人捕まえるのお手伝いして良いですか?」
「聖女様がですか?」
丁寧に答えるバダー公爵。
「いえ!私は役に立たないので・・・。」
千春はバダー公爵に背を向けドラゴン達に声を掛ける。
「ドラゴニュートになれる人ー!」
千春が言うと数頭のドラゴンがドラゴニュートに変化する。
「兵士さんと一緒に貴族さん確保!出来るだけ生け捕りで!」
「了解しました。」
一歩前に出るレフトとライトはドラゴニュート達に指示をする。
「テンシア、ドラゴニュート殿達を連れ貴族を捕まえ大広場へ連れて来い。」
「はっ!」
指示が終わり、女騎士テンシアはドラゴニュートと兵士、魔導士団を連れ各所へ動いた。
「スクエド、一度話を聞いても良いか?」
「はい。」
「聖女チハル様、此方へどうぞ。」
「はーい、みんな行こー。」
「ほいほーい。」
「結構大きなお城だねー。」
頼子と美桜は返事をしながらそびえる城を見上げる。
「パパドラさんこれ壊せる?」
不意に青空が物騒な事を問いかける。
「ブレス2~3発という所か。」
パパドラが言うとママドラも城を見上げながら話す。
「あら、一撃で壊せないの?私ならイケるわよ。」
「ブレスの話だ、魔法を使えば俺でも一撃で消せる。」
「流石ドラゴンの長だねぇ~。」
呑気に話す青空、その声はスクエドとバダー公爵の耳にも聞こえていた。
「だ・・・大丈夫か?」
思わずスクエドを見ながら呟くように問いかけるバダー公爵。
「大丈夫・・・だと思います、とても優しい方々ですから。」
スクエドはドラゴニュートの姿に変化したパパドラ、ママドラをチラッと見て答える。
「それに・・・。」
「それに?」
「神様方もいらっしゃいますから。」
「そ・・・そうだな。」
後ろでニッコニコのアイトネと、苦笑いしながら話す千春を見る。
「聖女様と女神様・・・何処でお会いになったのだ?」
「えっとぉ・・・あとでゆっくりお話しします。」
上手く言葉に出来ないスクエドは、困り顔で話す、しかしホッとしたのか子供らしい笑みを浮かべバダー公爵を見つめた。
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「ブルーユ男爵、ハウド子爵は王宮ね?」
「はっ。」
テンシアは貴族の居場所を確認すると直ぐに編成しドラゴニュートと共に貴族を取り押さえに行かせる。
「クットク侯爵・・・モンセン子爵は・・・。」
「今王宮には居ないとの事です。」
「屋敷ね、どうしようかしら。」
テンシアは兵士の編成を考える。
「テンシア嬢私達が連れて行くわよ?」
レフトは軽く問いかけるとテンシアは驚く。
「つ・・・連れて?」
「えぇ、私とライトが連れて行ってあげるわ。」
「そうね、それに他の子達もヒマでしょうから、一緒に屋敷を囲めばいいでしょ。」
レフト、ライトは楽しそうに話す。
「囲むのですか?」
「えぇ、貴族の屋敷は何度か抑えた事が有るわ、人だけだと護衛も居るし抜け道を使って逃げる事も有るでしょう?」
「えぇ、だから兵士の数が物凄く必要なの。」
「ふふっ、それは任せて頂戴、外の監視は魔力探知が出来る子、中に突入は私達が行けば良いわ♪」
何故かレフトはテンシアに指示をしていく。
「・・・なぜドラゴンが貴族の屋敷包囲に詳しいの?」
「それは・・・。」
レフトは千春のトラブルでよく貴族の屋敷を崩壊させているとは言えず言葉に詰まる。
「エンハルト殿下の指示で良く動いてるから♪」
「ライト!」
「あ・・・。」
エンハルトの名前を言うライト、レフトは思わず突っ込むとテンシアがライトを見る。
「で・・・殿下?あの、ハルトと呼ばれた方ですよね!?あの方王族なの!?」
「ライトぉ~?怒られちゃうわよ?」
「あー、テンシアちゃん~~~~!内緒にしてー!聞かなかった事にしてー!言う事聞くからー!」
「言いません、ライト様もそんな顔しないで下さい。」
テンシアは笑みを浮かべる、そして兵士へ指示をする。
「クットク侯爵、モンセン子爵は私とレフト様、ライト様、外にいるドラゴンで取り押さえます、あなた達は他のドラゴニュート様と一緒に名簿の貴族を取り押さえて。」
「「「「はっ!」」」」
「レフト様お願い致します。」
「レフトで良いわ。」
「私もライトでいいわ♪」
「えっと・・・レフトさん、ライトさん・・・。」
「ライトちゃんで♪」
「ら、ライトちゃん。」
「テンシアちゃん私に乗って良いわよ♪」
ライトは楽しそうにテンシアへ楽しそうに話す。
「ごめんなさいね、ライトって人間が好きなのよ。」
「そうなんですね。」
「あら♪人間よりサンの方が好きよ?」
「それは番いでしょう。」
「ライトちゃんって旦那様居るのですね。」
「私も居るわよ。」
「やっぱりドラゴンなんですか?」
「えぇ、今外に居るわ、紹介するわね♪」
何故か恋バナで盛り上がるレフト、ライト、テンシアもこれから貴族を捕まえに行く雰囲気では無いなぁと思いつつも会話を楽しんだ。
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