容疑者全員確保だぁ!

「お待たせしました。」

 バダー公爵は千春達が居る応接間に入る。


「どうですかー?」

「はい、概ね問題無く終わりました。」

「良かったです。」

 ニコッと微笑む千春。


「千春、両手にお菓子持ってキリっとしてもダメだよ。」

 頼子はチョコでコーティングされたパイをパクっと口に入れる。


「役に立てたのかな?」

 麗奈がバダー公爵に問いかけると頷く。


「勿論です、女神アイトネ様が現れ、アグリ侯爵・・・軍部の貴族が目の前で消えるのを兵士や魔導士が見ておりました、その為皆スクエド王の指示を一切疑いもなく指示に従い全て順調に動く事が出来たのです。」

「おぉードラゴンさん達は?」

「今問題の貴族を監視して頂いております。」

「全員捕まえた感じですか?」

「・・・2人見つかっておりません。」

「ありゃ?逃げました?」

「はい。」

「う~ん、出て来るかなぁ。」

「今関係貴族の者に聞いておりますが・・・。」

 難しそうな顔で答えるバダー公爵。


「儂らが行くか?」

「アレやるのか?」

「わっちも手伝うばーい。」

「僕も手伝いますよ?」

「ロイロ何やんの?」

 ペット達がニヤニヤしながら話すと、千春が問いかける。


「儂らの本当の姿で食べる真似すれば誰かが話すじゃろ。」

「ビェリーが影に落とせば良いだろ。」

「わっちがやると窒息するばい?」

「結界張りますよ?」

「アイトネにお願いしたら早くない?」

 アイトネは美味しそうにケーキを食べながら千春を見る。


『どの子かしら?』

 アイトネはそう言うとバダー公爵をじっと見る。


『・・・ん~その貴族思い出してくれる?』

「は、はい。」

 バダー公爵答えると目を瞑りながら思い浮かべる。


「・・・。」

『ん~・・・あら、1人はもう居ないわね、もう1人は・・・もうすぐ死んじゃうわね。』

「な!?」

『今捕まえているクットクって子の屋敷の地下よ。』

 アイトネはそう言うとまたケーキを食べ始める。


「口封じ?」

『そうね、ドラゴンとスクエド君を見たのね、その派閥から抜けると言ったら殺されちゃったのよ。』

「もう一人はまだ生きてるんだよね?」

『えぇ。』

「・・・助けれる?」

『助けてもすぐ冥界逝きよ?』

「うっ・・・そっか、うーん。」

『チハルの国の言葉で「因果応報」ってあるでしょう?』

「うん・・・。」

 少し納得のいかない千春は腕を組み唸る。


「チハル様!」

 扉を開け声を掛けて来る少年王スクエド。


「おかえりー、どう~?」

「はい、貴族は皆王宮の牢へ。」

「って事は家族とかも?」

「はい。」

 キリッと顔を上げるスクエド。


「そっかぁ。」

「聖女チハル様。」

 バダー公爵が悲しそうに呟く千春へ声を掛ける。


「はい。」

「チハル様がそのようなお顔をする必要は御座いません。」

「わかってます・・・わかってドラゴンさん達連れてココまで来たんで。」

 エンハルトからも言われ、裏切った貴族がどうなるか、そしてその家族、一族がどうなるかは聞いていた、しかし他にどうにかならないかと頭を悩ませる千春は悲し気に答える。


「やっぱり私ダメだなぁ~・・・。」

「何言ってんのさ、そこが千春の良い所だよ。」

「そうそう、ウチらもそこらへんは流石に割り切れないし。」

「ダヨネー、やっぱモヤッてするよね。」

「するする、平和な日本で暮らしてるからだろうね。」

「こっちに染まらないとダメかなぁ。」

 JK達はウンウンと頷きながら話す、千春は少しだけ笑みを戻し頼子達を見る。


「チハル、チハル達はそのままで良いんだぞ。」

「そうです、ミオさん達もそのままで大丈夫です、私がその思い全て受け入れますので。」

「はい、私もそう思います、レナさん達はそのまま過ごして頂きたいです。」

 エンハルト、エーデル、ホーキンは千春達の前に行くと話しかける、そして。


「ヨリさん。」

「アリンさん・・・。」

 アリンハンドは優しい笑みを浮かべ頼子の横に来る。


「この世界で辛い事が有れば私達が全てを持ちます。」

 アリンハンドはそう言うと千春を見る。


「チハルさん。」

「・・・。」

「この結果はチハルさんのせいではありませんからね?」

「・・・うん。」

 話を聞いていたバダー公爵と少年王スクエドはJK達の前に立つと礼をする。


「この国の為に悲しまれる事、誠に申し訳ない!!!」

「申し訳ありません!僕が・・・僕がしっかりしてないからっ!!!」

 2人は深々と頭を下げ謝罪する。


「いえ!そんな!許せなかったのは本当なので!」

「そうですよ!お父さんとか手に掛けられてたとか聞いたらじっとしてられなかったんだもんね!」

「ほんとだよ!うん!こっちの法律しらないけどソレがこっちの正解なんだからっ!」

「そうそう!うん!そうなんだよね!悪いことしたのが悪い!」

 千春と頼子、そして青空達も頷きながら、自分を納得させるように答えを返す、そして花音がポツリと呟く。


「これで良くなるのかなぁ?」

「良くします!」

 食い気味に答えるスクエド。


「そりゃ楽しみだぁ♪」

 気を取り直した千春は頑張って笑顔を見せる、するとアイトネの横で聞いていたモートがスクエドに話かける。


「皆の前で審判を下すか?」

「皆の前?」

「あぁ、プロステル国でやったように、民衆の前で俺が審判を下し、神罰を落とす、あの国では効果があったぞ?」

『あら、協力的ねぇ、チハルを悲しませた者達だもの、私がやっても良いわよ?』

 乗り気な神二柱がニコッと微笑む。


「この件は市井の者に見せる必要はありませんが・・・今集まっている貴族には見せる必要が有るかもしれません。」

「皆俺が連れて行く者達だ、俺が審判を下してやろう、準備が出来たら呼べ。」

「はっ!」

 バダー公爵は、自分の地位など気にせず返事を返す。


「うちらの仕事おわり?」

「って言うか何もしてないが?」

 大愛と日葵は顔を合わせ話す。


「来て圧掛けるのが仕事でしょ?」

 麗奈が言うとホーキンが頷く。


「しっかり仕事されましたよ、ダイアさん、ヒマリさん。」

「そっか・・・ふぅ、仕事したぜぇ。」

「何もしてないがな!」

「「「「アハハハハハハ!!!!」」」」

 2人の漫才を聞きながら千春達は大笑いする。


「なんかホッとしたわ。」

「チハル今日ココ泊るの?」

「え?あー、どうしよ。」

「旅行でしょ?コレ。」

「そうだったわ、卒業旅行じゃん!コレ!」

「んじゃお約束の王都探索する?」

 JK達はいつものペースに戻りワイワイと騒ぎ始める、その姿を見てエンハルト、アリンハンドが微笑む。


「やっぱりこうじゃないとな。」

「はい、ヨリさん達は笑顔でないとダメですよね。」

 2人の呟きにエーデルとホーキンも笑みを浮かべ頷く。


「俺達が守らなければな。」

「はい、命を賭けてでも。」

 エーデルとホーキンは騒ぐJK達を見ながら呟く。


「ハルト!遊びに行って良いよね!」

「あぁ、勿論だ。」

 心に残るしこりを無理やり笑顔で抑え込む千春、それが分ってしまうエンハルトは笑みで返す。


「アリン、エーデル、ホーキン。」

「はい。」

「はっ。」

「はっ。」

 エンハルトがそっと出す拳に3人は誓う様に拳を当てた。







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