準備おっけー!行きますかぁ!
「王は何処へ行かれた!?」
貴族の男性が大声で叫ぶ。
「バダー公爵閣下!」
兵士は叫ぶ貴族へ駆け寄る。
「王は何処だ!」
「そ、それが。」
兵士は言い辛そうに説明を始める。
「・・・仮面の男がアンバス宰相とスクエド王を連れ去ったと?」
「はい、横に居た執事が・・・。」
「他に何か情報は無いのか!?」
「審判に掛けると・・・。」
「・・・何者なのだ、その仮面の男と言うのは。」
急に現れ、目の前で2人を連れ去り消えたと報告され、バダー公爵は考える。
「審判・・・か。」
「はい。」
「そうか。」
バダー公爵はうつろな目で呟く。
「宰相様は?」
「その者が俺の思っている者・・・いや、その方が想像通りの方であれば・・・。」
先王の死を不審に思っていたバダー公爵は呟く。
「バダー公爵!」
「なんだ!」
王宮に走って来る貴族の男はバダー公爵を見つけると大声で叫ぶ。
「スメル侯爵が仮面の男に連れ去られたとの報告が!」
「・・・。」
「バダー公爵!」
「スクエド王、そしてアンバス卿も仮面の方が連れ去った。」
「な!?なんですと!?黙って連れ去られるのを見ていたのですか!?」
「いや、執事曰くその場で消えたそうだ。」
「え?」
「その様な魔法は聞いた事が無い。」
「・・・はい。」
「ガーナード。」
「はい。」
「直ぐにマクドス侯爵を呼んで来い。」
「マクドス卿が何かされたので!?」
「違う、何かが、何かが起こる・・・。」
「何か?何が起こると言うので!?」
「分からん、しかし只事では無いのは確かだ。」
バダー公爵はそう言うとガーナードと呼ばれた男へ指示をする、そして王と宰相が消えた職務室へ移動する。
「ココで消えたのだな。」
「はい。」
兵士は扉を開ける、部屋には執事が狼狽えたまま立ちすくんでいた。
「キャルメル。」
「バダー公爵閣下!」
「スクエドが消えた時の事を詳しく教えてくれ。」
「はっ、仮面の男が現れ・・・アンバス様を見るなり「お前が宰相か。」と言われました。」
「ふむ。」
「アンバス様は驚きそのまま動かなくなり・・・陛下に目をやり・・・お前にも話があると。」
「話?」
「はい、そして、私が・・・何を・・・と、問いかけました。」
「それで?」
「この者に審判を下すと・・・。」
「それは宰相にか?」
「はい。」
「スクエドは?」
「陛下には何も。」
「そうか。」
何かを感じホッとした顔で頷くバダー公爵。
「やはり俺が無理やりにでも付いているべきだったか。」
悔し気な顔になりバダー公爵は呟く。
「バダー公爵閣下。」
「兄の忘れ形見だ・・・国の決まりとは言え12の子供、俺が付いていれば・・・。」
そう言うとバダー公爵はキリっとした顔で前を向く。
「スクエド王が戻るまで俺が指示をする!」
「しかし!王が消えた事を一番に疑われるのはバダー公爵閣下!貴方様で御座います!」
執事はバダー公爵を見つめ叫ぶように言うと、バダー公爵は答える。
「あぁ、兄が没し、息子のスクエドが居なくなれば王位は俺に来るからな。」
フッと笑みを浮かべるバダー公爵。
「だが、俺は王の器ではない、だがスクエドには早すぎた。」
「・・・。」
「だが、まだ・・・。」
バダー公爵はそう呟き王の椅子を見つめる。
「何故今なのだ・・・神よ。」
ポツリと呟く声は執事にも聞こえた、そして目を見開きバダー公爵を見つめた。
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「はっはっは!」
ゲラゲラと笑うエイダン。
「戦でもこんな事は無かった・・・。」
プルプルと首を振りながらたてがみを揺らすネフェルス王。
「それはそうじゃろ、儂も冒険者時代は無茶したがドラゴンが何頭も目の前に降りて来れば足が震えるわ。」
「そして先程、パパドラ殿とママドラ殿の圧を感じ腰が抜けるかと思った。」
「じゃろうなぁ!」
ゲラゲラと笑うエイダン、それにつられネフェルス王も笑みを浮かべる。
「エイダン陛下?」
「なんじゃメグ。」
「こっちは話が終わったわよ。」
「うむ、交易に関しては?」
「後日商業ギルドと話をするわ、プロステル国から往復4日掛かるけれど大型飛行艇をロンガー国まで経由させれば良いだけだもの。」
「そうか、イーレンの方はどうじゃ?」
エイダンが言うと、リリーシ王妃が答える。
「改めてよろしくお願い致しますわ。」
「こちらこそじゃな、この国は獣人も精霊族も関係なく仲良く暮らしておる、安心してくれ、それからセトールが行くであろうジブラロール公国は獣人がさらに増える、ジブラロールの貴族として獣人が増えるのは願っても無い事じゃからな。」
ニヤっと笑うエイダン。
「それで、デットナ国へ向かうのはいつなんじゃ?」
ふとエイダンが問いかける。
「アイさんが送るみたいだけれど・・・聞いてないわね。」
「ネフェルス王、聞いておるか?」
「いや、聞いてない。」
ネフェルス王はそう答えると、蚊帳の外の様に大人しく聞いていた少年王スクエドを見る。
「!?」
ブンブンと首を振るスクエド。
「スクエド王を何日も不在にさせるのは問題じゃなぁ。」
「あら、それはどうかしら。」
マルグリットはクスッと笑いながらエイダンを見る。
「王が消えたのだぞ?」
「えぇ、それこそ今がチャンスと悪事を働く者が動き始め、それを抑える真面な者が集まるんじゃないかしら、もう動いているとは思うけれどね。」
「ふむ。」
「それに。」
マルグリットはもう一度クスッと笑みを浮かべ話を続ける。
「どう足掻いてもデットナ国はもう逆らえないわよ。」
「じゃろうなぁ~。」
エイダンの言葉にネフェルス王、リリーシ王妃が頷き少年王スクエドも申し訳なさそうに頷く。
「チハル達を怒らせたのが間違いね。」
「チハル達は優しいからのぅ。」
エイダン、マルグリットはスクエドを見る。
「あの・・・何故そこまでして頂けるのか・・・分からなくて・・・。」
「気にしないでとは言わないわ、そうね、聖女だから・・・とでも思っていたら良いわ。」
マルグリットは優しくスクエドに言うと、アルデアが現れる。
「メグ♪」
「おかえりなさい。」
「チハル達が行くそうよ。」
「もう準備出来たの?」
「買い出しに行って、パパさん達に荷物渡したから用事終わりだそうよ。」
「そう、ユラ達は連れて行くの?」
「流石に連れて行かないみたいよ、チハル達いつものメンバーとドラゴン、あとは護衛にハルト君達ね。」
「あら、エンハルトも行くのね。」
クスッと笑うマルグリットはスクエドを見る。
「それじゃスクエド王、行きましょうか。」
「は、はい!」
マルグリットに言われ部屋を出る面々、そして王宮を歩き、チハルの部屋に戻ると庭には沢山のドラゴンが並んでいた。
「おかえりなさーい♪」
「チハル、多すぎじゃない?」
庭にドラゴンが30頭ほど並び、エンハルト、エーデル、ホーキン、そしてアリンハンドも準備をしていた。
「いやぁ~、ヒマな子呼んでって言ったらほとんど来ちゃいました♪」
「あの!聖女チハル様!」
「ん?なんです?スクエド君。」
「あ、ありがとうございますっ!」
「んー、まだ今からだよ?」
軽く答える千春、横に立つネフェルスはドラゴン達を見て千春に話しかける。
「チハル王女。」
「はい?」
「このドラゴン達が国の空を飛んで来るのを想像してみてくれ。」
「・・・んー壮大ですねぇ♪」
「いや・・・絶望しかないぞ?」
「あはは!デスヨネー!」
「ソレが狙いだもんね♪」
千春が笑いながら言うと頼子も笑いながら答えると、千春はネフェルスを見ながら問いかける。
「あ!王様ロンガー国戻るの急ぎます?」
「いや?大丈夫だが。」
「お父様!これ、全部終わったら迎えに来るんでライオンの王様と一緒にどうぞ♪」
千春はアイテムボックスから日本のお酒を取り出す。
「新しい酒か?」
「はい、酒屋さんがいつもありがとうって珍しいお酒仕入れてくれてたんですよ♪」
はい!と渡す千春、エイダンは酒を受け取る。
「ユラ、レンちゃん、イーナ、お留守番しててねー。」
「「「はーい!」」」
「チハル、無茶したらダメよ?」
マルグリットは千春に言い聞かせるように言うと千春はニコッと微笑む。
「はーい♪」
「うっわ、信頼感無い返事来た。」
「は?私は無茶しないよ?・・・ドラゴンは知らないけど。」
「うん、そうだったね。」
頼子はアハハと笑い頷く。
「それじゃデットナ国の近くまで行きますかー!アイトネー!」
『はぁ~い♪』
「今回の供物はー!」
千春はアイテムボックスからホールケーキを取り出す。
「シュトルーゼの季節限定!スイーツアソートデコレーション苺ケーキでぇす!」
『わぁ~ぉ♪それじゃ準備出来た~♪』
「おっけー!」
千春が返事を返すと楽し気に手を振るアイトネ、そして皆はデットナ国近くまで転移した。
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今年一年有難うございました、お陰様で閑話も含めると783話、文字数は240万を超えてしまいました
そして毎日更新も出来ております
それもこれもいつも読んで頂く読者様のお陰です
まだ続く物語、来年もよろしくお願い致します。
2024年12月31日
ちっき
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