JKはお怒りですっ!

「いく!」

 千春はネフェルス国王、そして少年王スクエドに食い気味に答える。


「宜しいのですか?」

 少々怯えながらスクエド王が千春へ問いかける。


「それ絶対お父さん殺されてるじゃん!」

 事情を聞いて怒り気味に千春は答えると、頼子達も頷く。


「マジ許せんわー。」

「酷いわ、ウチらに何か出来る事あったら手伝いたいね。」

「マジでソレ。」

「でも悪い人はモートさんが連れて行ったんだよね?」

「まだ裏で動いてた人達いるじゃん。」

 JK達もお怒りのようだ。


「どうやって行く?アイトネ様に連れて行ってもらう?」

『いいわよ~♪』

「アイトネ、一回ジブラロール帰って準備するわ。」

 千春がアイトネを見ながら言うと、アイトネはニコッと微笑む。


『そこまでやるの?』

「やる、徹底的にビビらせる、スクエド君に逆らったら私達が許さんっ!って事を見せつける!」

 千春はニヤリと笑うと頼子が千春に問いかける。


「何処までやるん?」

「ジブラロール国で動くとヤバそうだから竜騎士乗せてないドラゴン全員連れてく。」

「おぉー!イイね!」

「そらビビるわ。」

「ウチら聖女とスクエド君が仲良しって所も見せつけるわけだ。」

「ぴんぽーん!」

 千春は悪い顔で美桜を見る。


「それじゃ計画はご飯食べてからにしよう!」

 パンッと手を叩く千春はネフェルス国王を見る。


「ご飯?」

「はい!私達が作った料理です♪あとケーキも有りますよ♪」

 空気を変える様に楽し気に話しかける千春。


「ケーキ?」

「甘いデザートです、セトール君もリリーシ様も美味しそうに食べてましたよ♪」

「2人に会ったのか。」

「はい♪セトール君はレンちゃんと婚約しそうですし。」

「・・・は?今何と言った?」

 ネフェルス国王は思わず聞き返すと、千春は横でキャッキャしているユラ達を呼びイーレンの頭にポンと手を置く。


「この子、イーレンちゃんとセトール王子が婚約です。」

「・・・は?」

 意味が分からずもう一度聞き返すネフェルス国王。


「食事の時に詳しく話ししましょー!ヒツジさん!王妃様と王子様も食卓に呼んでもらえますか?」

「千春、ヒツジじゃなく執事な。」

「執事って言ったよ?」

「いや、ヒツジって言った。」

「こまけぇこたぁいいのよ♪さ!移動しましょー!」

 千春は何故かテンションを上げながら厨房を移動した。



------------------



「そろそろ来るかしら?」

 マルグリットはお茶を飲みながらノンビリと自室で寛いでいた。


「キキッ!」

「来たのかしら?」

 蝙蝠がパタパタと降りて来ると一鳴きしアルデアが現れる。


「来たわよ~♪」

 アルデアの言葉に合わせる様にノックが鳴り、マルグリットの付き人アルベルが扉を開く、扉の前にはマルグリットよりも少し若い美しい女性が立っていた。


「お呼びいただき恐悦至極で御座います。」

 洗練された礼を見せる女性はマルグリットと目が合うと微笑む。


「急にごめんなさいね、スコーラ。」

「マルグリット王妃のお呼びで御座いますので問題ありませんわ。」

 そう答えるスコーラは部屋に入るとマルグリットの傍に来ると、マルグリットに促されソファーに座る。


「どういったご用件で御座いますか?」

 スコーラは王妃殿下から呼ばれたとは思えないほど平然と問いかける。


「もう普段通りの話し方で良いわよ?」

「良いの?」

「えぇ。」

 微笑むマルグリットはもう一度お茶を口に含む。


「それで?どういった御用なの?」

 再度気さくに問いかけるスコーラにマルグリットは悪戯を明かす様に話始める。


「スコーラの娘、レンちゃん居るじゃない?」

「イーレンが何かしましたか?」

「んーん、今旅行してるでしょ?」

「はい、楽しんでるのかしら。」

「物凄く楽しんでるわ、それに凄く勉強になってるみたい。」

 他の大陸、そして文化の違う国を旅行する、しかも身の安全は保障された安全な旅、その中でユラやイーレンは色々な物を見、そして学んでいた。


「よかった。」

 スコーラは母の顔になり嬉しそうに呟く。


「それでね?」

 マルグリットは続けて話始める。


「あの大陸の奥にある獣人の国があるの、ロンガー国と言うのだけれど、そこの第三王子に気に入られちゃったみたいなのよ。」

 クスクスと笑いながらマルグリットが言うと、スコーラは少し目をパチパチとしながらマルグリットを見る。


「王妃ちゃんも気に入ってたわよ?」

 蝙蝠を通じ自分も見ていたアルデアも楽しそうに言う。


「そ・・・それで?」

「婚約進めたいみたいなのよ。」

「遠すぎないかしら?」

「レンにはポポが付いてるでしょ?」

「そうだったわ、いつも一緒に居るから気にならなくなっちゃって。」

「ジブラロールとしては他国との婚姻は有難いわ。」

「そうでしょうねぇ。」

「私としては勧めておきたいのよ。」

「どんな子なのかしら。」

 スコーラはまだ見ぬ娘の相手を想像しながら呟く。


「アルデア、アレつかって見れる?」

「見れるわよ。」

 アルデアは遠見の石を使い、蝙蝠の見ている姿を映し出す。


「ちょうど今食卓に向かっている所ね。」

「・・・獅子?」

「アルデア、国王の姿も見える?」

「見えるわよー。」

 アルデアは映像を切り替えると、千春達の先を歩くネフェルス国王を映し出す。


「・・・凄いわね。」

「えぇ、私もこんな立派な獣人は見た事無いわ。」

 スコーラの言葉に頷き答えるマルグリット。


「この子も、この国王の様になるのかしら?」

「多分ね。」

「でもあの子、ジブラロール公国に行く事に・・・。」

「それは大丈夫みたい、第三王子で他国に婿入りも考えてるみたいだから。」

「そうなのね・・・。」

 色々と思う事があるのか、スコーラが黙り考え始める。


「獣人の血が入るのは嫌?」

「それは問題無いわ、今ジブラロールでそう言う事を考える者は古い考えですもの。」

 精霊族との婚姻も当たり前になって来たジブラロールでは、獣人との婚姻も増えていた。


「ただ・・・。」

「ビーシュ?」

「えぇ、あの人が倒れないかしら。」

 娘大好きな父、ビーシュ・ゴールマン伯爵を思い浮かべるスコーラ。


「この国王を見たら倒れるかもしれないわね。」

「そうじゃないの、イーレンはまだ7つよ、あの子の前では言わないけれど・・・嫁にはやらんと言うくらいだから。」

「あらあら、貴族令嬢の父親とは思えない発言ねぇ。」

「もう少し大きくなればまた変わるのでしょうけれど。」

 映像に映るネフェルス国王、そしてその後ろに見える娘を見てスコーラは微笑む。


「ジブラロールとしてはイーレンの婚姻に賛成よ、ユラと一緒に公国へ向かう事も決定してるわ、もちろんイーレンには爵位を授けます。」

 当たり前の様に話すマルグリット、スコーラはコクリと頷く。


「分りました、あの人には話をしておきます。」

「頼んだわ、でも、まだエイダンも知らない情報なの、追って連絡するから。」

「はい。」

 スコーラは頷く、すると扉がノックされる。


「メグ、来たわよー。」

「ルク、ごめんなさいね呼び出しちゃって。」

「良いのよ、どうしたの?」

「竜騎士以外のドラゴンを集めて準備してて頂戴、明日には出発すると思うの。」

「何処に?」

「海の向こうの大陸よ。」

「何するの?」

「チハルが他国に脅しをかけに行くわ。」

「何それ楽しそうね、私も行って良いの?」

「ジブラロールの鎧を着ないなら良いわよ。」

「やった♪ルプ様に会える♪」

「そっち?」

「だって!もう4日以上会って無いのよ!?」

 ルクレツィアはプンプンと音が聞こえるかのように頬を膨らませる。


「お願い出来る?」

「ママドラさんは?」

「話してもらえる?」

「良いわよー、二つ返事で行くでしょうし♪」

「そこは任せるわ。」

「脅しかけるならパパドラさんも呼んじゃお♪」

 ルンルンで言うとルクレツィアは手を振り部屋を出て行った。


「アルデア、チハルに準備しておくって言っておいてくれる?」

「おっけー、それじゃ私はあっちでご飯食べて来るわね♪」

「料理?血?」

「両方♪」

 アルデアも手を振り消えると、小さな蝙蝠だけが残る。


「スコーラ今日は暇?」

「えぇ、マルグリット王妃殿下に会いに行くと言って来たもの、誰も何も言わないわ。」

「それじゃゆっくり食事でもしましょうか♪」

 マルグリットはそう言うと、気兼ねなく話せる数少ない友スコーラと楽しく時間を過ごした。







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